能力者
能力を持たない人間は彼らの力を畏怖の念をこめてこう呼んだ
"ブラックスキル"と
「覚悟はできてんだろうな?」
とある空き地の真ん中で顔中傷だらけの厳つい大男が犬歯を剥き出しにして正面の見た目美少女の赤髪少年を睨みつける。
「…ふ…ぁ……、お前相手に覚悟がいんのか?」
少年は動じた様子もなく欠伸混じりに返した
もちろんその少年の態度に大男は絵に描いたような青筋をたてた
「じょうとぉ〜…」
そして野球のピッチャーのように拳を振りかぶり少年を睨みつける
……そして
「っだぁ!!」
【ォン!】
投げるようなフォームと同時に握り拳型の土の塊が少年目掛けて高速で飛ぶ。
「…っと…」
しかし少年は特に興味も示さずにその塊を少し首を動かすだけの動きでなんなく避けた。
「まだぁまだぁまだぁ!!!」
【ォン!、ォン!、フォン!、ォン!】
大男もそれに怯んだ様子は見せずに今度は連続で塊を飛ばす
「…たる……」
さすがに避ける隙間がない(避けるのが面倒くさい)のか少年はその塊に手を向けて目を細くひそめる。
「…っい…」
【ヴァッ!!】
少年が力を入れた瞬間に少年の手が赤い炎を纏う
「っての…」
そして手を前に突き出すのとほぼ同時に炎は塊に向かって放出される
【ドッ!!】
そして塊と炎がぶつかった瞬間爆発した
「っ!?」
大男は爆発に一瞬面食らったがすぐに爆発で巻き起こった砂埃に目を凝らす
しかし…
「っな!?」
砂埃が晴れたそこに少年の姿はなかった
「…後ろだ木偶の坊……」
「っい!?」
声が聞こえた瞬間に大男はその場から飛び退いた
【ドン!!】
その瞬間に大男のいた場所に金槌の形をした炎が落ちて地面に小型のクレーターを作りあげた
「あぶね!、てめぇ殺す気か!!」
「…っるさぃ…、もっと手加減してほしいの?」
「がぁ!、全力で来やがれぇ!!」
「どっちだっよ……っぅ」
大男の言葉に面倒臭そうに頭をかきながら少年は手を向ける
「の…」
「うぉぁ!!」
【シュ、シャ、ヒュィン!】
気のない言葉と裏腹に大男のいた場所に小さなベクトル型の炎が飛んでいく
「ぅげぇぇ!」
それを見るや大男は受け身を取りながら横に転がる
【ドン!、バン!、ドドン!!】
地面に触れた炎は一瞬だけ強く光を放って爆破した
「…よけんなよ…、【ベクトルフレィ】は威力があんま無いから運が良けりゃ入院して集中治療室に入るくらいですむ…」
少年は表情も変えず手を大男に向ける
「それじゅうしょおぉぉ!!」
そして大男は再び飛んできた炎を全力で避けだした
【10分後,,,】
「はぁ…ひぃ……」大男は疲労が溜まっているのか息を乱して動きが鈍る
しかし少年から距離をとりパイプ等が置かれた物陰に身を隠す事を成功させた
「ここまでくればなんとか…」
そして一息ついた時
「勝麻ぁ〜♪」
「うぇ゛ぇ゛!!」
いきなりかけられた幼い声に大男改めて勝麻は声にならない声を上げる
その後ろには幼い少女が立っていた
「か、茅野ぁ〜…」
勝麻は少女改め茅野の姿を見て顔を真っ青に染める
「逃げ回んのはよくないぞぉ〜V、てか面白くないから、た・た・か・え♪」
そう茅野が言った瞬間
茅野の後ろから突風が吹き出して勝麻の体を物陰から吹き飛ばし地面に叩きつけた
「っで!!、いって〜…」
そして物陰から出た勝麻の後ろには…
「さて、逃げるのはおしまいか…?」
ニッコリと笑った手を勝麻に向ける少年の姿があった…
「…え、え〜っと、つかの事お聞きしますが…、運良くて集中治療室なら最悪運が悪かったら?」
勝麻は真っ青だった顔をさらに青くして半泣きで少年に訪ねる
「死ぬんじゃね?」
少年はあっさりと答えを返した…
「いぃいやぁぁ!!」【ドドン!!】
勝麻の断末魔とともに降り注いだベクトル型の炎が爆発し、砂埃が巻き上がった
「これでここらでの男との喧嘩は198戦(うち勝麻との戦闘83回)198勝0敗0分けだねぇ〜♪、緋波強よ〜い♪、無敗じゃん♪」
「…相手が弱いだけだ……」
茅野の言葉に少年こと緋波は面倒臭そうに呟き背を向けて歩き出した
が…
「うがぁ!!」
「!!?」
砂埃の中から突然勝麻が殴りかかってきた
【ドン!】
「…っ!」
間一髪で防ぐが緋波の軽い体は勝麻の拳の威力に吹き飛び、木でできた柵に突っ込んだ
「…はぁ、はぁ…どうだってんだ当たりゃこんなもんよ…」
「不意打ちだけどね♪」
「るせぇ!!、手段選んでられるか【ガラ…】……って…、…おいおいそんな華奢な体の癖に立ち上がるか普通…」
壊れて自分を埋めていた柵をどかし緋波はゆっくり立ち上がる
「さすが無駄な馬鹿力とタフネスだな…」
「へ、誉め言葉で受けとっとくぜ…」
【ゴォ!!】
勝麻が言い終わるより早く緋波の手から突如今までよりも赤く大きな炎が燃え上がる
「消し炭にしてやるよ…」
「へ…、一発殴っちまえばこっちのもんなんだよ…」
勝麻も冷や汗をかきながら構えた
…が…
「コラァ!!、あんたらまた人の家の前何やってんの!!」ショートカットの少女が空き地の入り口で怒鳴った
「……っげ…」
【ダッ…】
臨戦態勢だった二人その少女をみて…緋波は顔を歪め勝麻は脱兎のごとく逃げ出した
「はぁ…」
少女は緋波を少しにらんだあと勝麻に目を向ける
そして…
【ガシッ】
「こら…だれが逃げていいなんていった?、勝麻…」
「っひ!?」
遠く離れていたハズの少女が逃げ出した勝麻の肩をつかんでいた
「あんた達が喧嘩しようが入院しようがどうでもいいけど私ん家の隣のここでドンパチやるのやめてくれる!?、うるさいから寝れもしない!、それだけならまだしも人の家の柵突き破るってのはどうなのよ!!」
少女は勝麻の肩を握り潰さん勢いで怒鳴る
「だ、だってよ夜美…、緋波が…」
夜美と呼ばれた少女はさらに勝麻の肩を握りしめる
「言い訳は聞かないわよ!、しかも私に会った瞬間に逃げ出したでしょ!?、男らしくない!、緋波なんて逃げずにじっとして…」
っと夜美が説教している時に
「夜美♪、夜美♪」
「?、なによ茅野」
夜美の肩を茅野叩いて呟いた
「緋波もう逃げたよ?」
「………」
………
「囮作戦成功…」
空き地から少し離れた道路を緋波は歩いていた
「ま…、最初から逃げてもあいつ相手じゃ逃げ切れんだろうし…勝麻には悪いが犠牲になってもらわなきゃな…」
まぁ、悪いなんて思ってねぇけどなどと呟いて緋波は思いっきり背伸びをする
「まぁ、あいつの単純さ利用したら簡単に逃げられるんだけどね…」
「そうよねぇ〜、私単純だし〜♪」
「そうそ……!!!」
【ガコオン!】
夜美の拳が先ほどまで緋波が歩いていた場所にある石の塀をえぐった
「あ…、あっぶね…」
間一髪後ろに飛び退いた緋波は殴りかかって来た夜美をみてため息を吐く
「相変わらず【光渡り】ってのは厄介な能力だな…」そういいながら緋波自分の服をあさくる
「お…、あったあった…」
そして小さなビーズのような光る玉を見つけて指で潰した
潰された玉は小さく砕けて光の粒が生まれ空気中で消えた
「もう光玉はしかけてないんだろ…?」
「あと189076302個しかけてる」
夜美は笑いながら答える
「嘘つけ…、さすがにそれは気づく…」
「じゃあ相手に手の内は教えない、答えはこれでいい?」
顔は笑っている…
笑って居るのだが泣く子が泡吹いて倒れるような威圧感を夜美は纏っていた
「初めからそう言え…」
そう呟いて緋波はゆっくりと構えた
能力(技、武器、用語)紹介
火炎矢印
(ベクトルフレィ)
矢印型の炎
自由に操作する事が可能
威力は当たって運がよければ集中治療室に入る程度ですむらしい
(勝麻との戦闘では威力をセーブした)
光渡り
(パッセージレイ)
光るビーズ程度の大きさの(大きさはまちまち)玉を相手に付着させる事で付着させた相手の半径十メートル範囲内の情報(高性能レーダーと同じレベル)を知る事ができ
その範囲内になら瞬間的に移動する事ができる
光玉
(こうぎょく)
パッセージレイの発動に必要な球体
硬度はさほどなく潰すと消える