表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

あの人の好きな君

 文芸部の部室の戸を開けて、閉めた。

 水の心臓はまだ落ち着かない。足早に教室に戻ると、丁度、怜と貴弘が喋っているところだった。水に気づいた二人の話が途絶える。

「水、早いわね」

「図書委員の仕事は?」

「今日は私は当番じゃないから。水を待ってたの」

 二人の会話を見るともなしに見ていた貴弘に水の視線が向く。お、と貴弘が構える。

「ねえ。三木は好きな人いる?」

 これには怜も貴弘も固まった。好きな人も何も、水こそがその相手だからである。

「……いる」

「女? 男?」

「何だよその質問は。女に決まってるだろうが」

「……だよね。ねえ、怜。今日、うちに泊まらない?」

「ええ? 良いけど、それならお泊りグッズ、取りに私のうちに寄らせてよ」

「うん」

「なあ。俺の好きな女が何だってー?」

「あ、その件は私の中で納得した。ご苦労」

 些かも納得していない貴弘は酷い仏頂面だ。

 水は構わず怜と一緒に下校し、途中で怜の家に寄ってから帰宅した。蝉の声に混じり、鈴虫の音が聴こえた。暑い暑いと思う間に、季節はもう秋の準備をしているのだ。

 女子同士のお泊りは、特別な感がある。

 一緒にご飯を食べて、入浴する。生きる、ということを分け合うような、くすぐったい感覚。

怜は冬瓜のそぼろあんかけが好物で、食卓を見て歓声を上げていた。水の母が嬉しそうに目を細くする。娘が増えた気分なのだろう。外の空気が茜色から紺色に移り変わる。室内にいても窓の硝子越しにそれが判る。

「で? 貴弘の好きな人が何だったの?」

 夜、水の部屋に布団を二組並べ、怜が長い髪をいじりながら、からかうように尋ねる。

 電灯の色は暖色で、どこか秘密の話めいた会話に似合っている。蝉、まだ鳴いてる。でも、鈴虫も。そんなことを思いつつ、水は怜に打ち明けた。

「男性で、三木のこと好きな人がいる」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=218737859&size=200
― 新着の感想 ―
[良い点] え!?まさか、そういうことです??ビックリ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ