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もう待てない

作者: 勿忘草

「さて、問題です。」

「今日は何の日でしょうか?!」

放課後一緒に帰ろうと誘ってきた元カノからの急なクイズに内心少し戸惑いながらも、顔に出ないよう努力する。

「あ?お前の誕生日の3週間前とか?」

この回答が気に入らなかったのか、元カノは顔を風船のように膨らませながらこっちを睨んでくる。可愛い…

「ぶっぶー!しかも私の誕生日は2週間と3日後ね!」

そんなことは知ってる。

「変わんねーだろ、で?何の日?」

「実はね…」

「今日は私たちが別れて1年になるんだよ〜!!!!」

それも知ってる。

「それ、記念日みたいに言うことじゃないだろ…」

俺たちの別れ方は、人よりちょっと複雑だった

お互い忙しがったのもあるが、俺の情緒が不安定でこいつに辛く当たってしまうことが増えたから

『俺の情緒が戻るまで』とゆう期限付きで別れたのだった

まぁ、1度距離を置いて俺が落ち着いたからこんな風に2人で帰ったりできているのだが…

『告白を切り出せない』

俺が原因で別れたのに、俺がまた付き合いたいって…おかしいんじゃないか?

それに、こいつは他のやつとも仲がいいし何も俺が特別って訳じゃねぇ、それに…もう…他に好きなやついるかもだし…。

そんなの…『嫌だ』でも『言えねぇ』

「……。」

「言わないんだ」

ぼそっと呟かれたその言葉に、俺は思わず固まる。

「は…?今なんて…?」

「意気地無し!」

俺の目を覗き込み、さっきよりキツく睨んだ後

こいつは走って前に出る

ちょうど、いつもの別れ道まで来ると

あいつは…いつもと違う、泣きそうな声で

「私!1年待ったよ!もう…もう待てない!」

その叫びを聞いた時。

全身に雷に打たれたような衝撃が走る

「い、いい…のか、?」

俺の掠れた呟きに、優しい声で「いいよ…」と返事が返ってくる

視界が歪み、熱いくらいの雫が頬を伝って地面に落ちる

生まれて初めて、嬉しい時に泣いた。

泣いてる暇はない。言わなくちゃ、こいつに…気持ちを…!

「ずっと!ずっと好きだったんだ!」

「待たせてごめん!待ってくれてありがとう!俺と、俺と付き合ってくれ!」

近所迷惑にならないかと心配になるくらい腹から声を出したと思う。

顔なんか涙でグズグズで、色々用意してた言葉もすっ飛んで本気でかっこ悪い…でも、待っててくれたんだ。俺の事を…

「待ちくたびれたわ!」

そう言って抱きついてくるこいつが…って、なんか忘れてないか?

「お、おいお前!返事は?!」

「はぁ…?!ムードぶち壊し!!!!」

「おっけーに決まってるでしょ!」


それが俺と妻の馴れ初めだった。

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