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『Я тебя люблю! (ヤ ティビャー リュブリュー)!』

「う、うう……でも」


 西亜口さんが冷静だったのはここまでだった。

 急に顔を赤らめ、俺に向かって早口でまくしたて始める。


「でもでもでも! わたしは、そ、そそそ、そんなにかわいくないしっ! あなたどれだけ自分の小説でわたしのことをかわいいって連呼したと思っているの!? わたしはそのたびに悶えたのよ! だからやはり絶対あなたは責任をとるべきなのよ!」


 そうは言われても西亜口さんがかわいいのは揺るぎない事実であり現実であり真理なので捻じ曲げて書くわけにはいかなかった。これはノンフィクション小説なのである。


「俺にはフィクションを書く才能はないから。だから、ありのままの西亜口さんを書くしかなかったんだ。ありのまま西亜口さんがかわいいと連呼するしかなかったんだ」


「つ、つまり! あなたはわたしのことをそんなにかわいいって思っているの!? こんなに連呼するほどに!」


「そうだよ! だって、西亜口さんかわいいし! だから何度でも言うし書く! 西亜口さんはかわいい! 絶対にかわいい! 世界一かわいい! 宇宙一かわいい!」


 半ば自棄になって俺は西亜口さんのことが『かわいい』と連呼しまくった。


「う、う、う、うぅうぅうぅうっ……!」


 西亜口さんは言葉を失って、さらに顔を赤くしていく。

 人類はこんなにも顔を赤くできるのかと思うぐらい真っ赤だ。


「…………。……わかったわ。やはりあなたはわたしを殺す気なのね。危うく悶絶死するところだったわ。『ヤられる前にヤる』がわたしの座右の銘。あなたを殺すわ」


 だから、いちいち発言が物騒だ。


「わ、わわわ、わたしは! あなたが! 祥平のことが好き! 大好きよ! いつもわたしの暴走と妄想についてきてくれるあなたのことをベストパートナーだと思っているわ! ロシア語で言えば『Я тебя люблю! (ヤ ティビャー リュブリュー)』! あなたを愛しているわ! これ以上ないぐらい!」


 西亜口さんは早口でまくしたて、最後には山の下にまで聞こえそうなほどの音量で叫んだ!

 なんという破壊力だ!


「ぐぁっ……! 好意を真っ直ぐにぶっつけられることがここまで恥ずかしいとは!」

「わかったでしょう!? 恥ずかしいのよ! でも、わたしだって恥ずかしいのよ! ものすごく! だから! 責任取りなさいよね!?」


 ほんと、俺たち、なにやってるんだろうか……。

 これではバカップルじゃないか。


 エキセントリック日露ハーフ美少女と陰キャボッチ男がこんなバカップル丸出しの会話を繰り広げてしまうとは……。


「これが青春ってやつか……」

「これが青春ってやつなのね……」


 俺たちは同じような感想を抱いて、つぶやく。

 そして、お互いの顔を見て笑う。


「はは」

「ふふ、やはりわたしたちの相性はバッチリなようね」


 まあ、なんだかんだで気が合う。一緒にいて楽しい。

 これが全てだろう。理屈ではない。


「それじゃ、西亜口さん。これから、よろしく」

「ええ。あらためて、よろしくお願いするわ」


 西亜口さんは俺に右手を差し出してくる。

 白くて細い指。西亜口さんほどの美少女になると指まで美しいから困る。


 こんな綺麗な指でドスを抜き放ったりしているのだから今さらながら信じがたいな……。

 ほんと、いつものエキセントリックさからは考えられない。

 俺は、その指を優しく握った。


 柔らかい。

 本当に。


 いつもエキセントリックだけど――西亜口さんも女の子なんだなって思った。

 そう思うと急に恥ずかしくなってきた!


 というか近い! 距離が! 西亜口さんメチャクチャかわいい! かわいすぎる!

 それに甘い香りがする! これはシャンプーの匂いか? あぁあぁあああああ!


「な、ななな、なに? 人の手を握ったまま固まらないでくれるかしら?」

「っ……ご、ごめん! 西亜口さんがあまりにもかわいかったから!」

「っ、だ、だから! かわいいって連呼するのはやめなさい! 殺す気!? 殺すわよ!?」


 さすが西亜口さん。カウンターですぐさま俺を殺そうとするとは。

 殺伐としているが、この暴言が西亜口さんの愛情表現であることを俺はよく知っている。


「……先が思いやられるわね」


 それを西亜口さんが言いますか?

 つい丁寧語でツッコんでしまう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 真っ直ぐな恋は良いですね!素敵です!! ロシア語の告白、破壊力ありました。さすしあ&おそロシア!
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