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思い出の中の忍者~ニンジャメモリー~

「入園当時、わたしの髪は銀色のままだった。当然、すぐに周りから注目を集めるようになったわ。そして、当時から超絶美少女だったわたしは、男女問わずちょっかいをかけられるようになった」


 自分で超絶美少女って言うのか……。

 でも、まぁ、記憶の中の『しーちゃん』は確かに超絶美少女ではあった。


「弱メンタルだったわたしは、すぐに登園拒否になったわ。そして、母に頼んで髪を黒く染めてもらうことにしたの」


 なるほど。だから、幼い頃の西亜口さんは髪が黒かったのか。


「でも、すぐに園には復帰できなかった。それから一か月後になって、ようやくわたしは幼稚園に復帰したわ。でも、対人恐怖症になっていたわたしは他人と接触することを極度に恐れるようになっていた」


 ほんと、今の西亜口さんからは考えられない弱メンタルだ。


「園の子はおろか先生もわたしは拒絶し、孤立していった。でも、親に心配させまいとわたしは園には通い続けた。毎日が退屈で苦痛で仕方なかったわ。そんなとき――ひたすら絵を描いているおかしな男の子に出会ったのよ」


 絵……? 

 遠く霞んでいた記憶の中から――映像が甦っていく。


「ああ、そうか……。俺、子どもの頃は絵を描くのが好きだったな……」


 下手くそだったけど……。

 でも、俺もわりと内向的なタイプだったから同じ園の子と遊んだ記憶がほとんどない。


「そう。しょーくんは絵を描いていた。それも……忍者の絵ばかりね」

「ああ……なんか、一時期、忍者にハマっていたんだよな……」


 きっかけはなんだったのかすら思い出せない。

 ともあれ昔の俺は忍者が大好きだったのだ。


「……わたしは幼いながらに両親の仕事がどんなものなのか気がついていたわ。情報機関の職員。それは……後ろ暗いものだと思っていた。でも――」


 そこで西亜口さんは言葉を切り、俺のことを真っ直ぐ見つめる。


「でも、その男の子……しょーくんは忍者の格好よさについて熱く語ったわ。毎日、毎日、飽きもせず忍者の絵を描きながら隣で見ているわたしに忍者の素晴らしさを語り続けた」


 当時の俺、どれだけ忍者が好きだったんだ……。


「それで、思ったの。わたしは忍者になろうって」


 ……なんということだ。もしかして西亜口さんがエキセントリックな方向に行ってしまったのは俺のせいだったのか?


「あなたには感謝しているわ。人生を見失いかけていたわたしに目標を与えてくれた」

「お、おう……」


 むしろ西亜口さんが変な方向に行ってしまった責任が俺にあることを知って、たいへん複雑な心境である。


「でも、わたしたちの生活は長くは続かなかった。日本での任務を終えた両親はロシアに帰ることになったのよ。そして、わたしは帰国する前日に、あなたに伝えた」


 え……? 俺、なんか言われたっけ?

 重要な言葉なのに、まるで記憶がない。


「……わ、わわわ、わたしは……そ、その……! そのときに、言ったのよ!」


 これまで冷静に話していた西亜口さんが急に顔を赤くしてテンパり始めた。


「言ったって、なにを?」


 俺としては訊き直さざるをえない。

 そんな俺に対して――。


「わ、わわわ、わたしは! 『将来必ず日本に帰ってくる。だから、そのときは結婚しましょう』と言ったのよ!」


 …………な。

 なんだってぇーーーーーーーーーーーー!?


「えぇえぇええぇえええーーーー!?」


 とんでもない内容に俺は驚愕の声を上げてしまう。


「な、なな、なに驚いてるのよ!? というか、今まで忘れていたってどういうことよ!? わ、わわわ、わたし! ずっと待っていたんだからねっ!? あなたが思い出すのを! そ、それなのに、それなのにっ!」


 西亜口さんの瞳が徐々に潤んでいく。

 涙が溜まっていく。決壊寸前だ!


「ご、ごめん! 本当にごめん! 完全に忘れてた……!」


 なんでそんな衝撃的なことを俺は忘れていたのだろうか……。

 逆に衝撃的すぎて忘れていたのだろうか……?


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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴクン! 唾を飲み込む音です。 もう目が離せません!!
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