GoTo幼なじみの家
校門を出て自宅方面へ向かう。
だいたいの生徒は駅方面に向かうので、こっちを歩く生徒はほとんどいない。
無言で歩くことに専念していた俺たちは、ようやくのことで口を開ける状態になった。
周りには一切誰もいない状態なら、なにをしゃべっても問題ない。
しかし、まさかこんな状況になるとは思ってなかったので、なにを話せばいいやら。
そんな状態で、まずは西亜口さんが口を開いた。
「……やはり、あなたとは雌雄を決しないといけないようね」
「って、あたしは西亜口さんと敵対するつもりはないというか!」
「それなのにわたしの組にカチコミに来て祥平を拉致するとはどういうつもりかしら?」
組は組でも二年二組だから! カチコミはそっち系の用語で殴りこみって意味だけど、なんで西亜口さんはいちいち物騒な用語を使うんだ。
西亜口さんに冷たい視線を向けられて、里桜があとずさる。
武道の達人である里桜を怯ませるとは、さすが西亜口さん、おそロシア。
……そして、里桜は泣きそうな表情で言葉を搾りだした。
「だ、だってさー……。このままじゃ祥平が西亜口さんにとられちゃうって思って……!」
な、なんだってーーーーーーーっ!?
里桜は涙目になりながらオロオロしている。
あの鬼のように強い里桜のこんな表情は初めて見た。
「――っ!?」
西亜口さんも驚いたように息を呑んだ。
里桜の独白は続く。
「だって西亜口さん綺麗だし、かわいいし! 祥平はデレデレしてるしー!」
「かかか、かわいくないしっ!」
「で、デレデレしてないから!」
俺と西亜口さんは口を揃えて抗議していた。
「やっぱり仲良いじゃん、ふたりともー! う、うぅ……どうせ、幼なじみなんて……」
あの里桜が、いじけている……。
なかなかショッキングな光景だ。
「あたしだって、学校で祥平とふたりっきりでご飯食べたことなかったのにぃ……」
「あなた、意外と面倒くさいキャラなのね……」
「面倒くさいって言うなー! うわーん!」
西亜口さんからの容赦ないツッコミによって、里桜はさらに取り乱していた。
「……ま、まぁ、落ち着いてくれ、里桜。別に俺はどこにも行かないし、そもそも家が近くじゃないか」
「そうよ。あなたは幼なじみというアドバンテージがあって、なおかつ家が近くにあるという絶対的優位にありながら、さらに祥平を独り占めにしようというの?」
俺たちふたりに言われて里桜はガックリと項垂れる。
「うぅ……ごめん、あたし先走りすぎてた……」
「あ、ああ、いや、大丈夫だ……」
「…………わたしも、別に、問題ないわよ」
ようやく落ち着いてくれたか。
しかし、里桜がこんな行動をとるとは、驚いたな……。
これは学園内で波紋は広がるかもしれない。
今まで里桜は俺に学園で俺に話してこなかったし、西亜口さんも誰とも会話しない永久凍土美少女だったんだから。明日からの学園がちょっと怖い。
「……まあ、いいわ。多少学園生活に波風が立とうとも、わたしの人生に狂いはないわ。それよりも、その…………ニャ、ニャン之丞は元気かしら?」
「へ? ニャン之丞?」
「あ、あの野良猫のことよ! げ、元気なのかしら?」
「ああ、元気、元気! 昨日おかーさんが動物病院に連れていったけど健康的には問題なしだって!」
「そ、そう……それはよかったわ。……ニャン之丞、強く生きていくのよ……」
西亜口さんが、かわいがってた猫だしな。
ここは、そうだ。里桜の家に行くのもありではないだろうか。
ふたりには敵対するのでなく仲よくなってほしい。
「里桜、せっかくだから猫を見に行っていいか? 西亜口さんも猫と会いたいだろうし」
「あっ、そうだね! 猫も会いたがってると思うし西亜口さん来てくれると嬉しい!」
「ニャン之丞と再会……? で、でも……新たな暮らしを始めたニャン之丞と会っていいものなのかしら……?」
そうは言うも、西亜口さんはどう見ても猫に会いたがっている。
ここは、もうひと押し。
「俺も猫に会いたいんだ! 猫好きだし! せっかくここまで来たんだから里桜ん家に行こう!」
俺が強く促したことで場の空気は一気に傾いた。
「オッケー! じゃ、うちへレッツゴー!」
「そ、そうね……そこまで言うなら……」
ふたりの関係が微妙になるのは俺としても困る。
というか、ふたりはちゃんと友達になれる気がするのだ。
争うよりも仲良くなってほしい。
というわけで――俺たちは里桜の家へ向かった。
「おかーさん、ただいまー! えっと、祥平と、西亜口さんが遊びにきたよー!」
里桜が奥に声をかけると、パタパタと軽快なスリッパの音を鳴らして梅香さんがやってきた。
「あらあら♪ いらっしゃい♪ 怪我はもう大丈夫?」
「ふぎゃっ!?」
西亜口さんから謎の鳴き声が上がり、顔色が変わる。
どうやら一昨日車で送ってもらったときのトラウマが甦ったらしい。
「もし足が本調子でないなら、また送ってあげるから安心してね♪」
「フシャーッ!」
西亜口さんが猫化して威嚇してる!
「あらあら♪ かわいいわねぇ♪」
梅香さん、余裕の笑みである。
まぁ、怒った西亜口さんもかわいい。
というか、なぜ猫化するんだ。かわいいからいいけど。




