突撃! 新選組……じゃなくて、風紀委員長!
「というわけで、今日のラーメンは味噌と塩よ!」
俺は今日の昼休みも合宿所に来て、西亜口さんとランチタイムをすごしていた。
今回も西亜口さんの持ってきたラーメンはパッケージから見て美味しそうだ。
これは楽しみである。
「それでは、お湯を入れてくるわ」
西亜口さんが立ち上がり給湯室に向かおうとしたところで――。
――ダダダダダダッ!
階段を駆け上がる音!?
そして、意外な人物が広間に入ってきた。
「ちょっと待ったぁ!」
「里桜!?」
剣道の稽古着姿で、手には竹刀。
そして、左腕には――『風紀委員長』と記された水色の腕章。
「なっ!? あなた、まさか――新選組!?」
「新選組じゃなくて風紀委員! 昨日、たまたま祥平が合宿所から出てきたところを目撃してさ。で、今日も合宿所に入ってったから調査しにきたんだ!」
「くっ……! やはりサムライは忍者の永遠のライバルなのね!」
「西亜口さん、一応、校則違反はダメだからさー。あたし、風紀委員長だし」
「いいえ、校長の許可はとってあるわ! これを見なさい!」
西亜口さんはカップラーメンを机に置くと、懐から紙を取り出した。
「えっ、なにそれ? えーっと、なになに……『ナーニャちゃんの言うことはなんでも聞きます。校内を自由に使ってかまいません。命だけは助けて下さい。校長』……!? 校長先生のハンコつきだ!」
なんか適当感溢れる文書だし、なにげに校長脅されているんだが……。
「わたしのお父様は校長とは古い仲なのよ。あとはわたしのスパイ技術を駆使して校長の弱みも握っているの。ふふん、わたしは学園を陰で操る日露ハーフスパイなのよ!」
なぜか西亜口さんは誇らしげに胸を張って、里桜と対峙する。
「西亜口さんがスパイ? 祥平、本当?」
「ノーコメント」
というか俺としても西亜口さんが本当にスパイなのかわからない。
単に妄想が暴走しているだけの可能性もある。
「うーん、校長がいいって言うんじゃいいのかなー……。祥平がコソコソなにやってるのか気になっただけだし……」
話しのわかる風紀委員長だ。
「……でも、祥平と西亜口さん、こんなところでなにやってるのさ?」
「知れたことよ。わたしたちはカップラーメンを食べていたのよ」
「密室でふたりっきりで?」
「広間だから密室ではないわ!」
なんだかんだで気になるのか軽く尋問してくる里桜。
「くっ……やはりあなた新選組なのね? 先日、足を治療してもらったことは感謝するけれど、これ以上の詮索には答えられないわ!」
「だから、あたし新選組じゃないって! 新選組好きだけど!」
「やはりあなたは佐幕派なのね! 幕府の犬!」
西亜口さんはなんだかよくわからないヒートアップの仕方をしていた。
そして――。
「かくなる上は……勝負よ!」
西亜口さんは懐からドスを取り出し抜き放つ。
「ひゃっ、西亜口さん!?」
里桜は驚いて飛び下がりながら、竹刀を構えた。
「ふふふ……ここであなたを亡き者にすれば、学園支配は揺るがないわ」
西亜口さんは、いったいどこへ向かおうとしているんだ?
「ちょ、ちょっとー! 学校に刃物持ってきちゃダメだってば!」
「護身用に武器を持ち歩くのはロシアでは常識よ」
「ここ日本だから!」
そもそも、本当にロシアでは武器を持ち歩くのは常識なのかどうか……。
ともかく、今の状況を収拾せねば。刃傷沙汰になってしまう。
「西亜口さん、落ち着いてくれ。里桜は敵じゃないから」
「でも佐幕派は倒しておかないと明治維新は起こせないわ」
「里桜は剣道の有段者というかインターハイ出場者だから勝つの不可能だよ」
「くっ……わたしの我流忍法では厳しそうね……」
ドスを使う我流忍法に興味はあるが、今はそれはスルーしておこう。
「ともかく、この合宿所の広間はボッチ安息の地。カップラーメンを心ゆくまで堪能できる楽園なのよ。邪魔しないでちょうだい」
西亜口さんはドスをしまったものの、里桜への敵愾心を隠そうともしない。
「えー、でも、西亜口さんと祥平がふたりっきりって……」
「悪い?」
「幼なじみとしては気になるというか……」
里桜は俺のほうをチラチラ見てくる。
えっ、これはどういう意味だ。
「祥平さー、西亜口さんに変なことしてないよね?」
「しない! するわけない!」
そんなことできるわけないし、する気もない。
一歩間違えば死ぬことになる。西亜口さんはドスを持っているのだ。
「安心しなさい。祥平はすでに忠実なわたしの下僕と化したわ。もはやペットと言ってもいいくらいね」
「えぇえー!? 祥平、ほんとー!?」
里桜は驚愕の表情で俺を見てくる。
「……い、いや、下僕でもないしペットにもなってないぞ!」
西亜口さんに色々と支配されつつある気はするけど……。




