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ブス取締捜査官HANAKO  作者: 古来颯潘
13/16

火種

 MIYUが日雇い労働者用のプレハブ宿泊施設、通称タコ部屋に入ってから4日が過ぎた。TOMOKOは相変わらずチンチロリンで負け続け、少ない給料のほぼ全てを巻き上げられていた。つまりタコ部屋暮らしを続けている。MIYUは大体トントンで済んでいた。

 初日以降、赤い荷札がAYAに手渡された様子は無かった。今日こそ何か成果を得ねば、MIYUの体力は限界である。頼むから赤い荷札を誰か持ってきてAYAに渡してくれ、と祈るばかりであった。


 早番遅番交代の時刻、詰所にAYAがやってきた。MIYUは、赤い荷札を預かっているものはいないか周囲を見渡す。それらしき封筒を持っている者がいた。全員、持ち場の説明を受ける。宿泊組に持ち場の変更はない。係の者に先導されてそれぞれの持ち場へ向かう。後ろを振り返ると、TOMOKOがAYAから封筒を受け取っている。ようやく好機到来である。


 休憩時刻、MIYUはTOMOKOの持ち場へ飲み物を持って移動する。


「TOMOKO、あなた飲み物買うお金もないでしょ。はいこれ。」


 TOMOKOは卑屈なまでに有り難がりながら受け取る。


「こっち、仕事どうなの。忙しい?」


「まあね。力仕事しながら帳面見なくちゃいけないから。頭がぼーっとするよ。薬品の匂いも嗅いでるからね。体に悪い薬品だろうねこれ。」


「こっちも似たようなもんだよ。原料を工場内のあちこちに運んでるんだ。TOMOKOが今日運んだのってどんくらいあるの。」


「結構あるよ。ほら、あの辺、とあっちもそうだね。荷物の番号を見て、番号順になる様に台車で運んで整理するんだ。だからあっちこっちにある。」


「へえ。あの赤い荷札のやつって何?他のと違うみたいだけど。」


「あれは、AYAから頼まれた仕事だよ。特別なやつらしいよ。ほら、そこにあるやつ、それ私がさっき貼ったやつさ。」


「赤いのってTOMOKOだけが貼ってるの?」


「他の人もやってるよ。結構いっぱいあるよ。」


 そっちは正規の運輸センターへの荷札だろう。


 MIYUは次の休憩時、今度はTOMOKOに会わないように注意しながら、先程目星を付けておいた偽造荷札の貼られた包みの内、小型の物を盗んだ。


 12時間の労働を終え、2人は詰所へ戻る。


「私は今日で一旦ここを出るよ。TOMOKOはどうするの。」


「チンチロリンの負けで今日の稼ぎもすっからかんだよ。もうちょっと続けるしかないね。」


 TOMOKOはここから出して、念の為管理センターで保護せねばならないだろう。赤い荷札の貼られた積荷が無くなっているのだ。TOMOKOが向日葵組から疑われる恐れが強い。


「こんな仕事、ずっと続けるもんじゃないよ。死んじゃうよ。正社員の連中見なよ。工場の中じゃガスマスクつけてるじゃないか。あんなのつけてたんじゃ力仕事できないから、日雇いに何の防護も無しでやらせてんだよ。ほら、これ、半分やるから。今日で終わりにしな。」


 MIYUが今日までの稼ぎの半分を渡すと、TOMOKOは目を丸くした。


「何であんたこんな。」


「最初にチンチロリンに誘ったの私だしね。ほら、AYAが来たよ。稼ぎ受け取って帰ろう。」


 その後、TOMOKOには本人に気づかれぬよう、管理センターの別の者が保護の目的で尾行についた。


 管理センターで包みの中身を調べると、黒色火薬だった。少量であるので、恐らくサンプルだろう。持ち帰ったもの以外の荷物も恐らくは爆発物の類で、その盗難が目的と考えて良さそうである。


 偽造された赤い荷札の出荷予定日は2週間後だ。出荷のタイミングドンピシャであの工場へ突入すれば良いだろう。その時刻に荷物を受け取りに来た連中を片端から逮捕するのだ。識別番号で赤い荷札を貼るべき荷を判別していたのだから、工場も何らかの形で関わっている可能性が強い。少なくとも情報はリークしている。


 管理センターには武装部門がある。管理センターではそれを軍と呼んでいた。軍と呼ぶには随分簡易的なものであったしそもそも外敵は想定していないのだから機動隊などと呼ぶのが本来適切だが、何となくそう決まったのであろう。

 MIYUは黒色火薬と偽造された赤い荷札を証拠品とし、捜査状況を端末を通じ上層部に報告。軍の出動を依頼した。

 

 日時は2週間後の14時丁度。


 工場の名前はNT化学。

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