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剣と魔法の世界に召喚されました(2)

「シンシアさんってこのお城の魔法使いか何かなんですか?」



 薄ピンクのローブの後ろ姿を追い城内を歩きながら私は訊く。



「私のことはシアとお呼び下さい。あと、敬語じゃなくても良いですよ。そんな身分も年も上の者じゃないので」


「じゃあシアちゃんって呼んでも良い?」



 振り向きながら話す彼女は私と同い年かその前後ぐらいだ。身長は私より低く、少し見下げる形になる。



「はい! 優愛様」


「私も優愛で良いよ。様付けは性に合わないし、私もただの女子高生で高貴な人でもなんでもないし。年だってそんなに変わらないと思うし」


「じゃあ、優愛ちゃんで。よろしくお願いしますね」



 シアちゃんはにっこりと笑った。この子、終始愛想良く、そして笑顔が本当に素敵だ。



「それでシアちゃんはこのお城の魔法使いか何かなの?」



 というかイリアに仕えてるの? と訊きたかったが、彼を呼ぶ時は様とか敬称を付けた方が良いのか思い悩んでしまったため、あえてぼかす。



「私は魔法使いじゃなくて魔術師の端くれです。あと、この城というか国にではなくリアムさんと一緒にイリアに仕えてます」



 魔法使いと魔術師は違うのか。というかやっぱりイリアに仕えているんだ。



「イリアってイリアって呼んで良いの? なんか玉座に座っていて偉そうな感じだったけど。あとリアムさんって人、顔色すごく悪かったけど、大丈夫?」


「イリアには敬称は必要ありませんよ。きっと優愛ちゃんにもそのうち呼び捨てで呼ぶように言われるかと思います。あとリアムさんの顔色が悪いのは元々ですから、大丈夫ですよ。そういう風に見えてしまうだけなんです」



 イリアには高貴な人っぽい気品と風格があったけれど、彼自体はフランクな感じだったし、シアちゃんもイリアって言ってるし、イリアって呼ぼう。本人に対してはまだ様子見だけど。



「そうなんだ。リアムさんが私を召喚したらしいし、召喚魔法の行使で体調悪くしちゃったのかなってちょっと心配になってたんだ」


「お気遣い、ありがとうございます。確かに術の行使でちょっとお疲れ気味ではあったかもしれません。優愛ちゃんが心配してたってリアムさんにあとで伝えておきますね。……あっ、優愛ちゃんの部屋に到着しましたよ。こちらです」



 シアちゃんは慌てて立ち止まり、右手の部屋のドアを引く。



「ありがとう……ってわぁ」



 ドアを開けて部屋に入るよう促してくれたシアちゃんに礼を言って中へと入った私は思わず驚嘆の声を上げる。


 なぜなら豪勢な部屋だったから。まず豪奢な天蓋付きのベッドがある。しかも布団はふかふかそうだし、大きい。シングルサイズじゃなくてダブルサイズだ。


 そして出ればバルコニーがありそうな大きな窓。くつろいだり歓談したりできそうなソファーにテーブル。書き物机なんかも椅子とセットで部屋の片隅にある。あと読めるかどうかわからないけど書籍の詰まった本棚も。


 それらが絶妙なレイアウトで配置されており、絨毯やその他の調度品とも相まって部屋全体をとても上品なものに仕上げていた。



「こ、こんな豪華で素晴らしい部屋、私が使ってもいいの?」


「はい、どうぞおくつろぎ下さい」



 お金持ちか高貴な人とかしか使えなさそうな部屋におじけづく私にシアちゃんは頷く。



「夕食の準備が整いましたらまたお呼びしますね。何か不足しているものや要望等がございましたら、その時にでもお気軽にお伝え下さい。それでは、優愛ちゃん。また後で」


「あ、うん」



 ひとしきり感動している私にシアちゃんはそう告げ、小さく手を振ると去っていった。


 突然一人になった私。


 部屋の入口付近に突っ立ってるのもあれなので、私は部屋の中へと歩みを進める。そして大きな窓へと近づく。その窓には取っ手が付いており、引くと簡単に開けることができた。そして開けた先には私の想像通りバルコニーがあったので、窓から外に出る。


 ホテルとかそういった所に泊まる時、私はまず外の景色が気になる。見知らぬ土地の風景をこの目に収めたくなるのだ。あと、ホテルとかだと大体高層階になるから、上から結構遠くまでを見下ろせるのが良かったりする。


 だから今も真っ先に窓に近づいた。そしてバルコニーになっていたので外に出た。



「風、つよっ!?」



 勢いよく吹きつけてきた風に私は思わず声を上げながら、乱れる髪を押さえる。風で顔に貼り付く自分の髪の毛を払いつつ、私はバルコニーの先端の、胸の辺りぐらいの高さの手すりまで行く。その距離はほんの二、三メートル程。



「わぁ……」



 真っ先に目に飛び込んできたのは夜空の満天の星々。私の住んでいるところではまずこんな綺麗な夜空は拝めないのだが、ここでは一つ一つの星々がよく見えるようだ。なんだかキャンプとかで行った山奥での夜空みたいだ。


 次に私は手すりから下界を見下ろす。ほぼ真っ暗で何も見えない。わずかに明かりのようなものが点のように少し見えるけど、街のネオンのように強い光ではなかった。



「景色はまた太陽が昇ってる時に見ようかな」



 そう独りごちた後、私は踵を返し、部屋の中へと戻る。

 どうしようかな? としばし逡巡した後、私はベッドへと寝転がる。そう、あの天蓋付きのふかふかそうな大きなベッドに。


 私の重みでベッドは沈む。見た目通り本当にふかふかで寝心地がいい。


 私は天蓋の内側のきらびやかな柄を眺めながら大きく息を吐く。


 今日は色々あった。本当に。


 車に轢かれそうになった男の子を助けたこと。こうして異世界に召喚されてしまったこと。しかも勇者として。


 男の子に関しては本当に助かったのかどうかが気がかりだけども。



「無事だといいな」



 じゃないと私が身体張って助けた意味ないし。こんなRPGのような世界に飛ばされた意味ないし。


 それにしても私はこれから本当にどうすればいいのか?


 勇者と言われても私は普通の女子高生である。それに今のところ、何の能力にも目覚めた気配はない。


 昨今流行りのチート物のように、神様から何かしらのチート能力を与えられでもしたら、事態を打開できるのかもしれないが。あいにく私はすぐにあの玉座の間に召喚されてしまい、神様的な人物には会っていないし、もちろんチート能力も授かっていない。天からの声的なものも今のところ聞こえてこない。


 イリアの口振りからすると、この世界を脅かしている反逆者やら怪物やらは一筋縄ではいかないようだし。


 ……なんかお先真っ暗な気がしてきた。


 なんとも頭の痛い話である。


 実際に頭痛がしてきたので私は目を閉じる。


 疲れた。これからのことなんて全然わからないけど、少し休もう。このベッド、本当に寝心地がいいし。


 私はベッドに完全に身を任せた。









「――優愛。――優愛。――優愛」



 誰かが私を呼ぶ声がする。なんで、こんなに名前を連呼されているんだろう? 良い声だけど、そんなに呼ばなくても聞こえてるのに。うるさいな。私はまだ眠たいのに。……? 眠たい!?

 私はパッと目を開く。



「私……。寝てた……?」


「やっとお目覚めのようだな、お姫様」


「え!?」



 独り言のつもりだったのに、それに答える声があり、私は跳ねるように起き上がる。



「イ、イリア!?」



 予想だにしない人物がベッド脇から私を見ていたので、思わずその名を叫ぶ。シアちゃんじゃなく、王様が直々に私を呼びに来た!? あとイリアとかシアちゃんとかリアムさんとやらとかに仕えられていて絶対高貴な人なのに、思い切り呼び捨てにしてしまった。



「疲れていたのか? 俺が何度呼んでもなかなか起きなかったが」


「す、すみません。少しだけ横になろうとしたらそのまま寝入ってしまっていました」



 内心かなり動揺しながらも私はとりあえず謝る。



「別に謝る必要はないさ。いきなり見ず知らずの世界に来たんだ。仕方ない。……夕食は食べられそうか?」


「は、はい」



 気分を害した様子はなく、むしろ気遣ってくれるイリアに私は頷く。



「そうか。なら共に参ろう」



 そう言うと、イリアは私に向かって手を差し出す。


 これってもしやイリアの手を取るべきなのだろうか?


 私がどうするべきか戸惑っていると、イリアは差し出している手の指を曲げ、手招きした。 私はベッドから降り、恐る恐るその手を取った。


 イリアの手は大きくて温かく、まめがたくさんできているのか少し固い感触がした。














 

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