2 庭師なりとの秘密
それから私は、細い細い抜け道を無心に駆け抜けた。
さすがの魔物もこの道には気付いていない。政務官まいきーにも知らせていない、体を横にしてギリギリ通るような隙間道。
喧騒が遠く離れて、静寂が訪れた。
――平和だったあの日々が嘘みたいだな。
私は何かいやなことがあると、この道を使って城を抜け出していた。
フットマンとして城を駆け回っている御目付け役タクの目を盗むのは大変だったけど、一旦するっと入ってしまえばこっちのもの。道は庭の生垣に面しており、庭師のなりが陰から手招きをしては、いつも私を匿ってくれた。
薔薇園の生垣の中に、なりにこっそり作ってもらった空間がある。悲しい時、私はそこで人知れず涙を流した。庭園を羽ばたく小鳥達の歌声に耳をすませ、薔薇の美しさと華やかな香りに包まれていると、不思議と立ち直れた。
ああ、私は今から、またあの場所に行き、涙を流そう。
だから、走れ、走れ。
自分を鼓舞すると、煤で汚れた深紅のローブを壁に摺らせ、喉を焼く煙を吸いながら、細い道を走った。
ぷはっと大きく息を吸い、城の外に転がり出ると、私は染み付いた癖のように庭師のなりを探した。
彼は、私が来る予兆を察知し、いつもここで待ち構えて出迎えてくれた。五十を過ぎた彼は、自分の娘を可愛がるように私を甘やかしてくれたのだ。
だが今日、当然のようにそこに彼はいなかった。そして日の沈む暗い空の下に広がっていたのは癒しの薔薇園ではなく、轟々と火の粉を散らす炎と無味乾燥な焦土だった。
あんなにたくさん遊びにきていた小鳥達は露と消え、小鬼達がけたたましく笑い声を上げながら、ベンチや噴水やオブジェを壊して回り、火を吐いて生垣を全て燃やしていた。
「やめろ!!!」
私は騎士岡田との誓いも忘れ、声を上げた。