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逢引現場に偶然居合わせたらワンコ系騎士に何故か懐かれたんですが

作者:

あらすじがもう全てです。それ以上はない…。

正直恋愛にも微妙に発展してない。


素敵なお話をたくさん読ませていただいて、自分も何かかけたら楽しいだろうなーと挑戦させていただきました!






「クリスティナ…私は……」


「い、いけません……オリオル様……」


「今だけでもどうか、アッシュ、と…」


逞しく麗しい騎士が、給仕服に身を包んだ女性の細い腕を掴み、かき抱くようにその腕に閉じ込める。

いけません、と拒否の言葉を発していながらも、女性の抵抗は弱々しく、赤く染まる耳から満更でもない様子が見て取れた。

僅かな木漏れ日のみがさしこむ王宮の角庭。

迷路のようにもなっているこの場所は、静かで穏やかなため恋人たち等の憩いの場としてもよく知られている。

二人以外に人影はなく、それは今はまさに昼間で、殆どのものはそれぞれの職に従事しているからでもあった。

そう、まさに許されざる立場ながらも、惹かれ合ってしまった二人の僅かな逢瀬のひととき………



に出くわしてしまった可哀想な新人メイドこと私クロエ!!!!!!!!

人気のない廊下の向こうにあるひっそりとしたお庭!素敵!とか思って覗きにきてごめんなさい!

目の前のロマンティックな光景に興奮する気持ちもあるが、もしあの二人に見つかったらと思うとドキドキと私の小鳥のような心臓が暴れて仕方がない。

廊下を引き返そうかとも思ったのだが、彼らに気付かず通り過ぎたお洒落な謎の壁と壁の間にある隙間…あそこでもし見つかったらと思うと動くに動けない。

あの設計なに?たしかに陽の光が差し込んで、わーきれーい!ってなるのは分かるし全部壁にしたら圧迫感あるのはわかるけど、今だけは恨めしさしか感じない。

幸いな事にこの庭には背の高い生垣などもあり、小柄な私は最大限に身を低くする事で隠れることができていた。

だが、目立つ赤毛はこの緑の中では目立ちすぎる事は想像するに容易いので、不安もありほぼ這いつくばるように柱と生垣に隠れることになっている。

問題は彼らがここを去る時だ…奥へ行かない限り出口はこちらひとつだけ…うまく死角でやり過ごすことができればいいが、見つかって気まずい空気になりたくない…。


「何をしているんだ?」


「ッーーーーーー!!!!!!」


咄嗟に自分の口を塞いだ自分を褒め倒したい。

ついでに言うと私の小鳥のような心臓はいま5羽分くらい破裂した。

視線の先には二人がいるのだから、この背後からかけられた声はもちろん別の人間だ。

バッと振り返れば、騎士服に身を包んだ体格の良い男性が私をきょとんとした顔で見下ろしていた。

焦げ茶色の短い髪と、子供のようにきょとりとこちらを見る目は晴れた空のような水色だ。

形のいい眉と少しごついがすっと整った顔立ちは美形そのものであるが、こちらが屈んでいるとはいえその体格の圧力たるや…という威圧感に私はポカンと口を開けたまま固まった。

うわでか……と思う余裕もなく、男性の視線が私の見ていた先、すなわち二人の逢引現場へと向かう。

やばいしまった!この人がもし言いふらす系の人だったら私まで巻き込まれるし、というかそんなとこに突っ立ってたらいくら距離があるとはいえバレるのでは!?!?

思わずごくりと喉を鳴らし男性の挙動を見守るが、その薄い唇が開かれた事で私は咄嗟に素早い動きを見せた。


「団ちょ……」


素早く口を塞ぎ、柱の影に男性の体を押しやる。

おそらく普段であれば私などの力ではびくともしないであろう体は、驚いておもわず、という様子で素直に柱の影へ引っ込んだ。


「…?いま、声が?」


「っ、誰か来たのでは…?アッシュ様…あの…腕を…」


まさに間一髪というやつである。

いやむしろ危機的状況だが、気のせいという事で終わらせてくれればなんとかなるであろう。

男性の体が大きいので、そばにあった柱では密着しないと二人は隠れられない。

そもそも背の高い男性の口を塞ぐためにぴったりくっついて背伸びまでしているので今更であるが、服の裾でも見つかるのではないかと気が気ではないため、気持ちさらに密着する事になった。

男性はなぜ隠れるのかわからないという顔をしているが抵抗するつもりはないのか、じっと私の事を観察しているようだ。

呑気か!?と思いながら、向こうの二人の声に耳をすませる。


「………気のせいかな?」


「そうだといいのですけれど……あの、誰かいらっしゃいますか…?」


問いかけられて出たら馬鹿だと思う。

まぁ一応聞いてみただけなのだろう、まさかこちらまで探しにきたりしないだろうかと考えてまた心臓がバクバクと鳴り出す。

咄嗟に隠れたはいいが、こちらから出ようとされたら非常にまずい。

嫌な汗がじわりと滲むのを感じていると、男性が目を瞬かせてそっと私の手を掴み離すようにジェスチャーした。

声は出さない、と目で(多分)うったえられ、そっと手を離すと、ニコリと笑ったまま見つめられて、不覚にもどきりとしてしまう。

顔がいいとは恐ろしいな、等と考えていると急に体が引っ張り上げられる感覚がして、またしても悲鳴の出そうになった口を咄嗟に引き結んだ。







結果的に言うと、あの後私達は彼らに見つかることなくやり過ごすことができた。

私達が隠れていた柱は上に向かってゆるやかな扇状になっており、天井近くに石像が置かれる僅かなスペースがあったのだが、男性が私を抱えたままそこまで上がったのだ。

騎士の筋力どうなってるの?まぁあんなデカイ剣振り回したりもするんだからそりゃあ力は強いだろうけど。

それにしても音も立てずにあんな事ができるなんてすごいな…とも思う。

話がそれたが、逢引していた彼らは誰もいないことを確認して廊下へと消えていった。

なので、もう隠れる必要はないのだが…痛くない程度にぐっと腰を固定する手をそっと外そうと試みるがびくともせずに終わる。


「…………あの、」


「うむ?」


「手をですね、そのー…離していただけますと嬉しいといいますか。あと下ろして欲しいなーとか思うといいますか」


私はまだ、例の男性と共に先程隠れた場所にいた。

それなりにスペースはあるが、石像は邪魔だし男性はデカイしで、やはり密着状態で隠れていたのだが、危機が去っても男性が離してくれる様子がないのだ。

それなりに高い場所なので、自分一人では降りられないしそれも手伝ってもらわないといけない。

なのだが、それを実行してくれる気配がないので思わず声をかけてしまった。


「…俺は今休憩中なんだ」


「う、うん?はい」


だからなんだというのだ。

相変わらず感情を読み取るのが難しそうなきょとりとした顔を見上げる。

落ち着いて見てみるとやはり顔がいいな…しかしきょとんとした顔は子供のようで、どうもこちらからも危機感や緊張感と言ったものが抜けていってしまう心地がした。


「だから一緒に休憩しよう」


「いや…私はもう休憩終わるので…」


「…?何故…?」


何故ときたか。

しかも心底わからないといった顔である。

その何故は何のなぜ?休憩が終わるという事に対して?私が誘いを断るということに対して?

会話の主語が抜けているような微妙に噛み合わない感覚に若干疲れを感じながら、男性の顔をもう一度観察する。

若干眉尻が下がり、青い目はまるで捨てられる…と思っている犬のようだ。

あ、多分「なんで一緒に休憩できないの?」の方か。

何故私が休憩の共を強請られているのか理解に苦しむが、騎士の中ではもしかしてそういう風習でもあるのだろうか。あってもらっては困るのだが。


「ええとですね、私はメイドなので、おそらく騎士様とは休憩時間が違います。なのであなたと一緒に休憩する時間はもう残ってないんです」


「そうなのか…」


「はい、なので早く廊下におろしてください」


「わかった」


素直に頷く姿にほっと胸をなでおろす。

謎の問答があったわりにはあっさりと廊下まで降ろされて、やっと地に足をつけられた!と深いため息を吐く。


「えっと騎士様…先程の方たちの事ですが」


「アルヴィン・オルランドだ」


「へ?」


「俺はアルヴィン・オルランドという名前だ」


ここで自己紹介するか普通?と思いながら、まぁ騎士様って呼ぶのが気になったのだろう、と思い直す。

ぺこり、と頭を下げる。


「クロエ・ラレアンと申します。ひとまず咄嗟とはいえ口を塞いでしまって申し訳ありません」


「ん?あぁ、大丈夫だ。なんで隠れたんだ?」


「えっ??いや明らかに出ていくには気まずい雰囲気でしたよね?騎士様…オルランド様こそなんで声をかけようとしたんですか……」


そう問うと、オルランド様はまたきょとん、として、首を傾げて何かを考える素振りをした。

もしやあの相手の騎士様になにか用事だったのだろうか?


「いや、団長がいたから声をかけようと思ったんだ。そこでお前に止められた」


止めてよかった。今私は心底そう思った。

しかし、団長と言うことはあの人は騎士団の団長さんなのか…そして第一や第二と付けないところを見ると、オルランド様はあの団長さんの下についている騎士団の一員なのだろう。

だが騎士服を見る限りそれなりの地位のようだし、仕方なかったとはいえかなり失礼な事をしてしまったことに気づき少し体温が下がるのがわかった。


「どうした急に青褪めて、腹でも痛いか?」


しかしぶっちゃけ、相手のこの発言のほうが失礼なのであまり緊張感がわかない。

とはいえ、謝らないわけにもいかないとわたしは深々とお辞儀をした。


「急に初対面の男性にあのような振る舞いをしてしまい申し訳ありません。あの方々の様子を見ていたとなると後々面倒でしたので……他意は無かったとご容赦ください」


「ん、そういえば側に女性がいたか……とりあえずさっきも言ったが気にしなくていい」


「ありがとうございます。あと、先程の事もなるべく他言しないでいただけますと嬉しいです」


言わなくてもわかりそうなものだが、何となくこの人には釘を刺しておくべきだろうと口にすれば、「よく分からないがわかった」という顔で深く頷かれた。

うん。わかってないですね。守ってくれるならそれでいいですが。


「ひとまず私は仕事に戻らせていただきます。休憩のお邪魔をしてしまいすみませんでした」


「うむ、わかった。…クロエは普段どこに所属しているんだ?」


「え?ええと、基本的には宿舎に…」


「そうか!」


新人なのでいろんな場所に派遣されて、今の所一箇所にいる事はないのだけれど。

嬉しそうに笑ったオルランド様の後ろに、はち切れんばかりに振られる尻尾の幻覚が見える……。

送るというオルランド様の言葉を断り、なんとか遅刻することも無く次の研修先にたどり着いた私はそっとため息をついた。

翌日から毎日のように、大柄な騎士が休憩に誘うため色んな場所で人目も憚らず訪ねて来ることになろうとは知らず……。

そもそも別にメイドと騎士の間の恋愛が禁断だというわけでもないとか、アルヴィン・オルランドという騎士が第二騎士団副団長という座についているとか、そういう事も有名人の顔を覚えるどころではない私にはまだ知る由もないのだ……。







ワンコ系?の体格の良い騎士ってかわいいよなぁと思って書きました。

多分思ってたのと違うのができあがりましたが、これはこれでヒロインが振り回されまくりそうで良かったかなと思います。

気分が乗って本格的に恋愛っぽくなるような続編もかけると嬉しいです。


※身分差とかあんまり気にしない世界でのお話なので、冒頭の二人が許されざる恋とかでは実はあんまりなかったりします。ヒロインが勝手に解釈しただけ。

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[一言] 後日、とある石像に乗ると恋人ができるというジンクスが生まれ…かけたと思ったら、体力的に乗れないから挫折者が多かったとか。←
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