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鋼の光   作者: イカ大王
第八章 火星決戦
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Episode47 死守兵団

執筆のモチベーションが低下気味の今日この頃ですが、完結までどうかお付き合いください!


ブクマ、感想、評価をいただけると元気出ます!

 

 ◇


 戦いが始まった。


 空中機動艦隊の一斉爆撃によって大きく数を撃ち減らされた火星危険生命体の大群であるが、それをものともせず、全線に渡って強行突撃を開始する。

 それを迎え撃つのは、居留地帯をぐるりと囲むように形成された防衛線──そこに展開する各防衛混成兵団の兵たちである。火危生群は堅牢な防壁によって守られた各居留区を避け、それらが籠る仮説陣地線に殺到してきた。


 居留地帯南東郭防衛線に展開するラングスドルフの『東方防衛第七混成兵団』も、交戦を開始した部隊の一つだ。


「火危生群先鋒集団、有効射程圏内へ侵入」

「よぉし。"タイガー1"より各中隊砲兵部隊へ。弾種は榴散弾。一斉発砲を開始」


 AIの報告を聞くや否や、ラングスドルフは部下の機体に指示を飛ばしていた。

 居留地と外界を分ける防壁上に設置された大口径レールガン砲塁はすでに射撃を開始している。火危生の数からして「引き付けてから撃つ」など悠長なことは言ってられない。射程に入り次第撃つと決めていた。


「弾種、榴散弾。撃ち方始め(ファイヤ)!」


 砲手の春樹の号令の直後、多脚戦車の長砲身203ミリ連装レールガンが轟然と火を噴き始める。アーレスメタル合金に覆われ、無数の弾子を内蔵した榴散弾がマッハ5の初速で次々と叩き出されていった。

 撃つたびに独特の砲声が耳朶を震わせ、衝撃がラングスドルフの腹を突き上げる。発砲に伴う圧力は車体が振動させたあと、六本の駆動脚部を通じて地面に散ってゆく。

 放たれた砲弾は火危生群の只中に飛び込むや否や炸裂し、内蔵されていたナイフのような大量の弾子が八方に飛び散り、火危生たちは弾子に切り刻まれた。


 ラングスドルフが火星に来て以来、何千何万回と経験した音、閃光、衝撃だ。今や心地良くすら感じる。

 巨大なショットガンともいえる榴散弾に撃砕される火危生たちを横目で見ながら、彼は戦域図が映し出されたホログラム・モニターに意識を向けた。


 第七兵団所属の多脚戦車は、約20メートルの間隔を開けて防衛線上に展開している。戦車と戦車の間には機関銃陣地や各自動迎撃システム、歩兵が塹壕やトーチカに隠れて待機しており、その背後には迫撃砲陣地がある。

 やがて射程距離に入り、自動迎撃システムが駆動音を奏でながら銃身を上下させ、狙いを定めると、重々しい音で発砲を開始した。

 次いで機関銃陣地も火箭を吐き出し始め、迫撃砲も前線部隊の支援を開始する。歩兵は携帯銃器を撃ち始める。


 それらの火力を叩きつけられ、火星危険生命体先鋒集団は悲惨な状況だった。

 随所にある障害物で突撃の足を止められ、そこを330ミリレールガン砲塁に撃たれて50体以上が一瞬で爆砕されたり、多脚戦車の榴散弾の直撃を受けて跡形もなく砕け散ったりする。大量の銃火によって蜂の巣にされる個体がいれば、地雷を踏んで足を吹っ飛ばされる個体もいる。

 火星危険生命体群は先頭からばたばたとなぎ倒され、黒々しい肉塊を量産していった。

 大群は徐々にその数を減らしてゆく。


 だが、そんな惨状になっているのは先鋒集団のみだ。後方から出現した新たな個体たちは、射弾が縦横に飛び交う中を仲間の死体を踏み越え、接近を試みる。


「第三中隊と迫撃砲第二小隊は右翼敵突出部を攻撃。各砲兵中隊の第四小隊は上空の火危生を排除しろ。指示以外の中隊は正面制圧に専念。粒子砲個体は発見次第破壊だ」

「第三中隊長了解」

「第二小隊了解」


 ラングスドルフは戦域図に映し出される火危生群の表示を見ながら、冷静に部下たちに指示を出してゆく。

 今のところ、火危生の攻撃は抑えられている。いまだに大量の火危生が残っているが、防衛線に取りついた火危生は一匹もいない。入念な迎撃計画と陣地構築が功を奏したようだ。


(このままいけるかな?)


 ラングスドルフがそう思った時、下から鋭い衝撃が突き上げ、30トンを越す重量の多脚戦車が跳ね上がった。

 春樹が頭部をぶつけて罵声を発し、次いでおどろおどろしい轟音が響き渡った。


「……やっぱり来たか。そう簡単にはいかないね」


 ラングスドルフは盛大に舌打ちをした。

 翼龍型火危生の後方──赤い広陵地帯に亀裂が入り、そこから無数の触手を持つ巨大な蛸のような生命体が姿を現したのだ。

 軟体触手型火星危険生命体。しかも超大型。

 アスラ出現以前はもっとも巨大な種とされており、一ヶ月ほど前に出てにフェアファックス居留地付近に出現してサーベイヤー大隊D中隊と交戦したのは記憶に新しい。


「兵団長!」

「わかってるよ」


 素早く対処命令を下す。


「先の命令は取り消し。第三中隊、および全迫撃砲小隊は軟体触手型に全火力を集中、目標の防衛線突破をなんとしてでも阻止しろ。他中隊は第三中隊と自隊の担当区画の制圧に全力を注げ!」


 この間も、多脚戦車は射撃を続けている。

 ラングスドルフ車のみならず、他のありとあらゆる火器が全力射撃を続けていた。

 あたりにはレールガンやコイルガンの射撃音が充満し、簡単な会話にすら障害をきたすほどになっていた。


 軟体触手型へ火力が集中される。

 最大火力である防壁上の330ミリ大口径レールガンが火炎榴弾を撃ち始めたのを皮切りに、第七兵団第三中隊、全迫撃砲小隊も攻撃に加わる。


 軟体触手型は巨大な炎に焼かれている。

 しかし、奴は焼かれながらも、防衛線の直前まで進出してその一部に侵食した。逃げ遅れた歩兵がのみ込まれる。

 20分間砲撃を集中して、やっと軟体触手型は倒れた。

 しかし、この時二体目、三体目の大型個体が出現し、後から迫っている。応援に駆けつけた空中機動艦隊の爆撃で二体目も撃破したものの、三体目に防衛線を突破された。


 その巨体に呑み込まれる歩兵が続出し、触手につかまれた多脚戦車が宙を舞う。


 それ以外の場所でも、随所で火危生に陣地を突破されている。軟体触手型に火力を集中したため、それ以外の場所が手薄になってしまったためだ。


 ラングスドルフが声を枯らして「撤退!」を指示する中、第七兵団は第一防衛ラインから後退した。同時に、防衛線の下半分を受け持っていた東方防衛第四混成兵団も後退する。

 自動迎撃システムは自走式ではないため、その大半を放棄するしかない。第七兵団は迎撃初日に火力の半分を喪失してしまった。


 第七兵団と第四兵団は、火危生群の追撃を壁上330ミリ砲の支援を受けつつ振り切り、事前に定められていた第二防衛ラインでマナハイム支隊と合流して戦力を回復。徹底交戦の構えをとる。


 その間にも、アスラは居留地を目指して西進を続けている。居留地を熱線砲の射程内におさめるまで、あと二日半とされていた。





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