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ある春の日。
その男は闇に包まれた。
立ちくらみ?
それとも、不摂生だったから脳卒中か?
そして、気が付けば真っ白な空間。
倒れては居なく、立ったままだった。
その男は言う、
「知らない場所だ」
きっと、知らない天井だと言いたかったに違いない。
「随分と余裕があるのね、ユキトくん」
声の聞こえた方を見ると、一人の少女が居た。
それは可愛らしい少女だ。
「ここは次元の狭間、君は入ってしまったの」
その男は、回りを見渡すと溜め息をついた。
たしか、出勤途中だった様な…
ユキト44歳、只の会社員だ。
そして、ぼーっと何も無い白を見ていた。
「神隠しみたいなものかな、わたしが隠した訳ではないけどね」
神隠し?ならこの子は神なのか?
ユキトは神など信じてはいなかった。
「それで?」
少女が言うには、元の場所に帰せるけど時間が100年近く変わるらしい。過去も未来も俺一人で生きていける訳もない。
もう、かったるいのであの世に行ける様頼むと泣かれた。
どうしろと…
「そんな寂しいこと言うなやー」
\(>。<)/
そうだ、剣と魔法の世界とか興味ない?
勇者になれちゃうよ。
チートを貰って、俺TUEEEとかしたくない?
きっと楽しいよー。
今ならサービスするよ(新聞の勧誘か!)
アイテムボックスも付けちゃうよ。
若返り出来るよ。
ねえ、どうよ?
あ、わたしはティア。よろしくね」
いきなりグイグイきたかと思えば今更の自己紹介である。
すったもんの末、ユキトは、折れたらしくディアの言う事を受け入れた。