いろ。
あの日の君は何色だっただろうか_
僕はそれを思い出そうとするが、一向に思い出せそうにはない。
いや、思い出したくないのかもしれない。
あれ以上の幸せは、きっと無いだろうから_
まだ4月だというのに、季節外れの真夏日が燦々と照りつける。光を浴びても成長はしないのに、差し込む強い日を避けられず暑さに喘ぐ高層ビルたち。その足元で光に飢える木々。「まだ4月なのに…」とあちらこちらで聞こえる人々の嘆き。僕の目にはたくさんの光景が目に入っては流れて行ったが、それら全てが僕にとってはどうでもいいものだった。正確には、僕自身すらも、どうでも良かったのだ。
僕は、東京に生まれ、東京で育ったいわゆる一般人である。小中高と公立の学校へ進学した。それまでの人生と言ったら、それこそ何も無い、平凡で面白みの無い人生だった。とは言っても、最低限の友達には恵まれていたし、家族との仲も良好で、傍から見れば良い家庭であったはずだ。
__少なくとも18歳のあの夏までは__
あの日の僕はいつも通り家を出てどこかへ向かっていたはずだ。いつもの商店街を通り、いつもの駅を使って電車に乗り、目的地へと急いでいたはずだ。ただ、その先どうしたか、いや、どうなったのか。自分では覚えていない。目を覚ますと、ぼんやりと霞む目の前にあったのは見慣れない白い天井と、僕を取り囲む薄青色をしたカーテンであった。「…………どこだろう。」真っ先に思った。何故だろうか、まるで瞼から筋肉が無くなってしまったかのような気だるさと、目は良いはずなのに何もかもがぼやけて見える世界が残った。手も足も、首さえも、思うように動かせない。感覚は有るが、全く言うことを聞かないのだ。「何日間寝てたんだろう…」そう思った僕はぼやけてあまり見えない目を左右にキョロキョロと動かしてみて驚愕した_僅かに外に見えたのは、青々と葉が繁る木々ではなく、北風に服を剥ぎ取られたかのような、寂しげで、どこか切なくも思えるほどの枝ばかりの木々だった___




