とろけるね
企画「ひだまり童話館」のお題「とろとろな話」です。
お母さんが朝から何かを作っている。
小学校一年生の鈴子は、お母さんに聞いた。
「何を作ってるの?」
「ふふふ、内緒よ」
「教えてよ~」
「それより学校の時間でしょう」
「あっ、行ってきます!」
鈴子は急いで家を飛び出した。
今日も楽しい授業を終えると、鈴子は一旦家に帰ってランドセルを置くと、友達と遊びに行った。
そして夕方、鈴子は家に帰ってきた。すると、とてもいい匂いがする。鈴子はキッチンへまっすぐに向かった。キッチンのテーブルの上には、ハンバーグにオムレツ、えびフライ、コロッケ、唐揚げなど盛りだくさんに鈴子の好きな食べ物が並んでいた。
「お母さん!今日はすごい豪華だね!」
「そうよ。さあ、手を洗っていらっしゃい」
「うん!」
鈴子が手を洗っていると、お父さんが帰ってきた。いつもより早い。
「お父さん、今日は早いね」
「特別な日だからね」
鈴子は不思議に思ったが、食事が楽しみですぐに忘れてしまった。
「お母さん!すごくおいしいよ!ほっぺたが落ちそうだよ!とろけちゃう!」
「よかったわ」
お父さんもお母さんも嬉しそうだ。そして食事を終えると、お父さんが電気を消した。
「お父さん、どうしたの?何も見えないよ」
すると、キッチンの方から柔らかな明かりとともにお母さんがやって来た。
お母さんが持っていたもの。それはろうそくをたてたケーキだった。
「「お誕生日おめでとう!」」
そう。この日は鈴子の誕生日だった。鈴子はすっかり忘れていたのだ。
「さあ、ろうそくの火を吹き消して」
お母さんの言葉通りに鈴子はろうそくを吹き消す。
お父さんとお母さんからは拍手された。
「「産まれてきてくれてありがとう!」」