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第三話「望まぬ帰国」
「そう、車も」
肩を落としため息交じりに続けた
「アメリカじゃ通用しない、フィッシュなのは十分に分かった。
こんな結末望んでなかったがね。この生活も終わりだ、明日の便で日本に帰るよ」
ジョーはニヤつきながらパイを食べていたが最後の言葉を聞いた途端顔に一瞬で氷が張った。
表情は釣れたての冷凍したマグロのようになっている。
「そうか・・・」
ナイフとフォークを皿に置き考え込むようにうつむき、たっぷり蓄えたあごひげを触り始めた。
静寂に包みこまれた店内にテーブル上のろうそくの火だけがゆらゆらと揺れている。




