3話 転生の恩恵
はい! こんにちは! 俺です。今、11歳でーす! 今いるのは・・・・ (やべぇ、既にキャラが・・・)
見渡す限りの木、木、木、木、木、要するに森です。はい!正解!そこのあなた。商品は・・・商品なんてねーよ!コンチクショー。
まぁ、生まれたところから俺主観で少し語るとしますか。 決してお腹が空いているのを紛らわすとかそういうのではございません信じて下さいお願い致します。
はい!では解説します。 俺のこの数奇な人生(11年)をな!
まず、貴族に生まれた!?とか生まれた時に認識しましたが、実際に貴族に生まれてました。『何だ貴族転生とかありきたりな始まりだな』とか思うじゃん? 違うんだなーこれが。
確かに俺、周防大輔は確かに貴族でした(ここ重要な)
しかし、その貴族は家ごと領地が燃えて存在しなくなってしまいました。 何故かといえば戦争があったからです。 両親や執事?やメイド?なんかは殆どその日に家と一緒に燃え尽きました・・・つまり死んじゃったわけです。 ん?どうしてそんなに平気なのかって? そりゃあもう8年経ちましたしね。 まぁ、精神年齢が無駄に高いせいで、親が死んじゃったことをチャント理解したのはこの際幸運だったとだけ言っておきましょう。 この世界での父さん(以後父上)と母さん(以後母上)は本当に優しく、厳しく、そして本当に親バカでした。 領地の隅にあるこの森にセーフハウスを隠しといてくれましたからね。
「一緒に行こう」とは言いましたが、
父上は「私達夫婦がこの家に居なければ奴らはここらを探し回る。だから一緒には行けないよ。」
と言われとりつく暇もありませんでした。数人の使用人によって館の裏口から出て、森へと身を隠す。 口にすればこの程度の作戦ですが、この程度の時間の中ですら何人もお世話になった方が矢に打たれ、魔法に焼かれ亡くなりました。途中で何度も「振り返ってはいけません」と言われたけれど、振り返らなくたってわかりました。徐々に後ろから聞こえる足音が少なくなっていくんですから。そんなこんなでセーフハウスに到着し、その頃には7人いた使用人は3人に減っていました。しかし、当然の如く無傷とは行かず、その怪我が原因で2ヶ月と経たないうちに高齢だった副執事長のセバスさんや執事見習いだったアドフさんが亡くなりました。 残ったのは侍女のマーニャさんでしたが、アドフさんが亡くなったショックで失踪、何時の間にか僕は一人でした。 マーニャさんを責める気は全くありません。 森の中でその日の食事にも困るような危険を孕んだ生活と、街の中での貧乏だけどココより安全な生活、どちらかを選べと言われたら、僕でも悩みます。 多分後者を選ぶ人が多いんじゃないかと思いませんか?
そんな中でも幸運だったのはやっぱり【転生】してこの場に来ているということかな。
田舎で生まれ育ったおかげで節約料理には困らないし、貴族生活が殆ど無かったお陰で変に舌が肥えたりしませんでしたし。
ココ8年でこの森の地理は勿論の如く、食べられるものやそうでないもの、生息する動物なんかはだいたい覚えられました。 ・・・まぁ、父上たちがこの世界では貴重な紙を使って地図や本を用意しておいてくれたからなんですけどね。 本当にありがとうございます、父上、母上。
というわけなんですが、分かって頂けたでしょうか? この現状を、という訳で解説の時間はおわりー!
あぁ、お腹空いたな〜〜。
今僕がいるのは森の若干奥の方。いくつか罠をかけてあるので其処に獲物がかかるのをじっと待ってます。 とは言っても別に茂みに隠れたりしている訳ではなくて、罠を同心円状に仕掛けて、その中心で待機し、罠に獲物がかかればトドメを刺しにナイフ片手にブイブイするわけです。 罠の構造や、罠に獲物がかかったかどうかがわかる装置は、企業秘密です。
ーーーカランコロン! カランコロン!
お? 説明してたら丁度獲物がかかったみたいですね。 美味しい奴がかかるといいですね。 この辺りの動物は食べられるのとそうでないのが大体1:1くらいなので確証は持てないわけですが。
大体円の半径は30m位で短いとか思うかもしれないんですけど、入り組んでるこの森だと丁度良い位なんですよね。 因みにこの30mに至るまでには約半年の狩りの研鑽を要しました。 精神年齢の勝利ですな。(忍耐的な意味で)
そんなことを思いながらも少年の歩みは続き、やがて罠を設置した場所に差し掛かる。
・・・・っと、今日のご飯は【巨角鹿】ですね。 コイツは・・・食えます! あぁ、良かった。
少年は倒れ込んでぴくりとも動かない体に精一杯振りかぶってナイフの刃を突き立てる。
気を取り直して巨角鹿の調理に入るわけですが、コイツの美味しいたべかたは・・・・
少年は鞄の中から一冊の本を取り出す。
ありました。これがあれば基本的に調理に困ることはありません。
【野生動物の美味しい調理:森の動物編 著ヘンリー・ディフォード】
え~、この本に拠れば・・・・ありました。 【巨角鹿】のページです。
名称【巨角鹿】
可食部位【内臓、顔以外】
調理法(参考)
①【内蔵を取り出して丸焼き】、
②【肉の部分に切れ込みを入れ、そこに塩を擦り込む。その後香草わ配合したタレを作り鉄板で焼き上げる。】、
③【男は黙って串焼き】
う~ん、どれにしましょうか。 どれも悩むので消去法ですな。 まず、鉄板はない・・・から②は没ですよね。 ソレに③に至っては・・・・うん、突っ込まないようにしましょう。気にしたら負けです。
となると①ですか。 そうしましょうかね。
少年は先刻鹿にトドメを刺したナイフとは違う日本で言う【包丁】のようなナイフをどこからともなく取り出す。 動物の解体など少年にとっては慣れたものだ。 11歳の子供が血に恐怖を持たないのは8年程こんな生活をしていた一種の職業病のようなものだと言えるだろう。 馬ほどの大きさのある鹿は少年によって最適な解体をされ、ものの30分で内臓、と顔は取り除かれる。
・・・さて始めましょうか、、、っとその前に忘れるところでした。
ーーー ピューーーッ、ピューーーッ ーーー
辺りに甲高く鳴り響くのは指笛の音色。
コレは少年が転生で得た最初の技である【指笛】だ。
効果は・・・「ドドドドドド、カサカサカサカサ」
少年の前に現れるのは1匹の狼と2匹の蜘蛛、此等は俗に言う【魔物】であり、この光景を第三者が見れば恐らくコレカラ少年に起こりうる最悪とも言える事態を考え、思わず目を背けるであろう。
だがしかし、生憎ながらここにいる少年は普通でなかった。
「あ、来てくれましたね。フェル、クモリン、クモルン。 解体中や調理中、あたりの警戒お疲れ様でした。 今日は巨角鹿の肉です。きっと美味しいですよ。」
「クゥーン、クン?(ソレは真か!? 主よ。)」
「本当だよ、フェル。 クモリンにクモルンも食べるよね。」
「「シャー、シャシュ!」」
「アハハ、それは良かったよ。」
・・・は? この光景を見てそう思う人は少なくないだろういし、そう思ってしまっても仕方が無いのだろう。
なんと、3匹の魔物たちは少年の言葉に反応し、尚かつ少年は魔物達の言葉を理解していたのだ。
突発的変異:技型 獣使い
技
【指笛】・・・甲高い音を鳴らすことができ、思いを念じながら笛を吹くと、大まかな意志が伝わる。最大有効範囲50m