明後日の昨日
「おい!俺を置いていくなよ!」
後ろから猛ダッシュで走ってくる姿が見える。
まるでミニ四駆のような直線ダッシュだ。
私と四葉は余所行きの笑顔をふりまく。
「あら。おはようございます。どちらさまかしら?」
「な・・・・・・!!新しいプレイかよ?」
「プレイ?お巡りさーん!女子高生が変態に絡まれていますよー!」
ミニ四駆は慌てたそぶりで私の口をふさごうとする。
その手を私は風に吹かれた羽毛のようにふわりとかわす。
「なによ。いきなり私の唇に触ろうとするなんて、どうしようもないミニ四駆ね」
「うわあ・・・・・・幼なじみにしても今のは駄目だよ。桜井君」
桜井一也。
私たちの幼なじみだ。
「だってさ!登校初日から近所に住む幼なじみに声を掛けていかないってどういう事だよ!」
「うるさいわね。ミニ四駆。今日は四葉と登校したい気分だったの」
「ミニ四駆って誰の事だよ?ってか、ミニ四駆ってもしかして登録商標じゃないかとびくびくしている俺がいるぜ」
「そうね。魔女の宅○便って黒い猫の登録商標だったらしいものね」
「へー!そうなんだ!未来は物知りだねー」
四葉が大げさに驚く。
彼女が屈託のない笑顔を見せてくれるのは私の記憶でも幼稚園以来だろうか?
その笑顔を独り占めしたいのは私のわがままだったかもしれないけれど。
「お!四葉制服似合うな!惚れちゃいそうだぜ!」
「けいはく一也だー」
四葉は真っ赤な顔をして笑顔を返す。
私はその笑顔を見て、涙腺が熱くなる気がした。
「未来も似合うな。孫にも衣装っていうんだっけ?」
「ええ。その誤用をしてくるあたり、もしかしたら、一也は私のおじいちゃんなのかもしれないわね」
私の返しを聞いて一也はきょとんとしている。
まぁ、馬子どころか、孫なら何を着せても可愛いだろう。
事実、私の祖父も祖母も私の制服姿を見て10歳は若返ったと言っていたし。
「それよりミニ四駆」
「そろそろその言い方やめてくれないか?俺には一也っていう立派な名前があ・・・・・・ろ」
「そこ。危ないわよ」
一也は慌てて飛び退くが、既に遅かった。
「良かったわね。平和の象徴から白いプレゼントよ」
「プレゼントーじゃねえよ!なんで、俺に教える時にはいつも一歩遅いんだ!」
私たちのやりとりを見て四葉が堪えきれなかったように真っ赤な顔をして吹き出した。
「あははは!面白い!やっぱりこの三人が最高だね!学校もこの3人で同じクラスになれるといいな」
「そうだね」
四葉の希望通りになるかどうか分かっていたが、私はあえて言わないようにした。