表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明後日の昨日  作者: 桜
1/2

登校

「まったく!制服ってなんでスカートなの?」

雨上がり、草の萌えるような香りを胸に吸い込みながら私は、私は通学路を歩いている。

「なんでー?いいじゃん!!うちの制服かわいいと思うよ」

えんじ色にチェックの入ったスカートをひらひらさせながら、隣を歩く彼女は嬉しそうにくるりと回る。

彼女にとっては待ちに待った制服なのだから仕方ないのだが、スカートをひらひらさせるのはどうかと思う。

四葉よつば!パンツ見えてる!!」

「へへー!」

四葉はへラッと笑いながらスカートを押さえた。

ま・・・・・・仕方ない。

幼なじみである四葉にとっては生まれて初めてのスカートなんだからはしゃいで当然か。

華奢な肩に艶やかな髪。

先ほどスカートから覘いた下着は、女の私ですらドキッとするくらい似合っていたのだから。

四葉は眩しいくらいの笑顔で私に近寄ったり離れたり、雨上がりの歩道をくるくる回っている。

「しかし、なんでスカートかねぇ」

「なんで未来みくはそんな事言うの?スカートかわいいじゃん。未来も似合っているよ」

「似合っているとか似合っていないの話じゃなくて、パンツの上に布一枚じゃん。防御力なさすぎだよ」

そう。私は昔からスカートが好きじゃない。

RPGで言ったら初期装備どころか、ぬののふくを下回る防御力だ。

もし、スライムが現実世界に現れたら、上目遣いの視線に、私は戦う前から戦意喪失だろう。

「でも私はこの学校好きだな~」

「好きだな~って、学校説明会以来、通うのはお互い今日が初めてでしょ」

四葉が言ってる意味は誰よりも分かっていながら、私はわざと意地悪な発言をしてしまう。

「だってさ~」

「四葉!2歩後ろに下がんな!」

私の声を聞いた四葉は迷うことなく、後ろに2歩下がる。

その数秒後、脇を抜けていく自動車が、水しぶきをはじきながら駆け抜けていった。

「さすが~!!」

「いやいや!尊敬したかったらしてもいいよ!」

私は鼻を鳴らしながら胸を反らせた。

「でも、何度も言うけどこの力は私と、四葉だけの秘密だからね。わかってる?」

四葉も分かっているだろう。

この約束は、私が何度も四葉に言い続けていた約束なのだから。

そう。

私には未来が見える。

それは、私が望む望まないに限らず、映像として私の脳に直接飛び込んでくるのだ。

でも、それはとても不安定なもので、何月何日に何が起こるという予言めいたものではなく、見えたとしても数日先の未来までなのだが。

そう。

この力には力がない。

もしこうなると分かっていても、私には何月何日何時に○○が起きるという細部までは分からないとても不安定なものなのだ。

それに・・・・・・こんな力を持ってしまったからこそ、子供の頃はとても嫌な思いをした。

正直、こんな力なんて無くなってしまえばいいと思っていたし、今でもそう思っている。

未来が見えるって気持ちの悪いものだし、未来が見えるって事は、人の運命が決まっているようで人知の及ばぬ力が働いているようにしか思えないのだ。

両親の事は愛しているが、未来みくなんて名前だから未来が見えてしまうのだと、子供の頃は自分の名前すら好きになれなかった。

周りの人間が私を見る目は、畏怖か恐怖でしかなかった。

でも四葉だけは違う。

四葉も人と違ったせいか、私の事を色眼鏡で見る事はなかった。

ただ、いるのが当たり前のように振る舞ってくれる。

今もそうだ。

少数派同士の周波数が私たちを深く深く結びつけてくれた。

だからこそ、四葉は私の友達なのだし、私は四葉の友達なんだ。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ