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「記憶は変質するわ。でも、もうそれはいらないの。わたし自身が記憶だから」

 そう言いつつ大股に一歩わたしに近づき、

「それに、これは始まりでもないわ。昔から起こっていたことなのよ。百年前、千年前、それよりもっとずっと前から、人々の想いが何かの弾みで集中して、それらが塊となって放射されて、それから凝集するときに、たぶん何時でも起こっていたことなのよ」

「十二年は長い。そんなに経ってから何故……」

 思わず訊くと、

「いいえ、そんなに経っていないわよ。少なくともわたしにとっては」

 とソレが答える。

「できるだけ急いで事を成したから」

 更に一歩わたしに近づき、

「せいぜい三ヶ月、うーん、多くても十三週ってとこね」

 まさか……。


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