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『薬物を利用した精神錯乱』という現象の解釈はどうだろうか。

『オッカムの刃』の喩え通り、事象はより単純な説明を好むという例の断定法だ。

 だが、わたしにはそれもいくつかある状況証拠の本質的な有様に目を瞑った単純過ぎる解決法にしか思えない。あるいはどうしても二項対立でしか物事を考えられない人間の思考の枠により支えられた信仰とでも言えば良いか。

 世界すべてが狂っているという解釈よりは、それを体験した人間の方が狂っているとした方が、どう考えても座りが良くて安心だ。あるいは、すべては誰かかまたは複数の誰かが自分に対して仕掛けたこと――理由はわからないが、ある種の薬物により精神錯乱を呼び起こした――とでも考えれば確かに多少は気が休まる。

 自殺した元不倫相手の姉は化粧品会社の研究員だ。現在も同じ職場に勤めていると共通の知り合いから聞いている。しかも聞いた相手によれば、かなり有能な研究主任らしい。


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