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二度の偶然ならそのまま忘れてしまったかもしれないが、その数時間後に三度目のそれを見る。
『安らかに眠れ』
今度は路上に描かれている。
『止まれ』の標識と同様、十字路の手前に片側だけ。
反対側の道にあったのは何の変哲もない『止まれ』の文字だ。
その日は時間的に直帰するつもりだったが、無個性ではない集団の一員に還りたくなり、会社に戻る。
年始なのに何故か溜まっている細々とした事務仕事を片づけた後、同僚二人と飲みに行くが、メッセージの話を切り出す気分にはなれない。
咽の奥に痞えが残る。