《補給隊》と《レベル》 10月26日/142
……どうしてこうなった。
【認定所区域フィールド内にて】
◆◇◆◇
――ちなみにと言ってはなんだが、MSPにもどこぞやのRPG的な《レベル》が存在する。
とは言っても、敵を倒していったら勝手に上がる様な代物では無く、「そのレベルに対応する魔物を半分以上の体力を残して倒す」事で認定される、と言った仕組みだが。
《開発隊》が発明したレベル認定専用機械は西棟の更に西、研修棟に付随している演習場の中にあって、いつもそのスペースは混雑していると言う人気(?)スポット状態になっている。
……ここまで言えば分かるとは思うが。
「――どォしてこうなるンだよ……。」
とどこかの第1位様が言いそうな台詞を投げやり気味に呟きつつ、今目の前で猛突進してくる猪(正式名称はあるのだろうが知らない)のコースから僅かに体を左へ逸らす。直後、通り過ぎた猪に左手の剣を振り下ろした。ザク、と言う音と供に、着けているメガネに猪の体力が2割近く削れた旨のウィンドウが瞬いて視界が一瞬塞がれてしまった。そのウィンドウを消していると。
「風君、余所見してちゃ駄目!」
「……はーい」
後方から匣先輩のお小言が飛んできた。別に余所見していた訳では無いのだが取り合えず返事しておいて、振り返り再度突進――実はこれ、口の近くにある牙に引っ掛かるとダメージをかなり受ける――のモーションになりつつある猪のもとへダッシュ、勢いのままに背後に回り込んで4連撃を叩き込む。1撃で3割ならこれで倒せる筈、
「……プギイイイイイイ!」
「……あ」
……どうやら、振りが甘く、足りなかったらしい。ほんの少しだけ残ってしまい、猪が突進を開始してしまった。その先には――匣先輩。でも、心配なんてしない。
「全くもう、風君は詰めが甘いんだから……」
ブツブツ文句を言った匣先輩は、予め展開していた魔法を発動した。
「はい、【イグニース】っと」
直後炎が発生し、猪を包み込む。数秒後、視界に表示されていた猪の残り体力――要するに、HPバーが消滅し、猪の形を模していた黒い粘着質の物質が消えた。
「ほら風君! 邀撃君を助けに行きましょ!」
「……へーい」
剣を一旦鞘に納め、首を振り溜め息1つ。邀撃先輩のもとへ駆け寄りつつ、再度脳内で毒づく。
――何でこんな事せにゃならんのだ……。
◆◇◆◇
此処に来るきっかけは、【バグカオス】を《開発隊》でかけられた次の日。丁度休みだったので《開発隊》の面々の所為でやっぱりフィードバックが出て1日病棟に泊まる羽目になった心読に会いに行って、大丈夫のお墨付きを貰った心読と南棟まで来た時だった。
「……んで、もうなんとも無い訳か?」
「うん。もう大丈夫だよ」
「なら良かったけど……うーん、《開発隊》のメンバーに、実験するなら自分だけにしろって言っとくべきか」
「いや、風も断りなよ……ってそれより、風は今日どうするの?」
ん~? と首を傾げつつ近くにあった時計を見やる。
「……うーん、もう7時近いだろ……食堂が開いてるだろうから、朝食食べに行くかなあ。MSPに戻って来る前に携帯食食べてそれっきりだし……心読、今日仕事は?」
「無いけど……」
「? 無いけど?」
「……明日の、《パトロール隊》の第3班の割り当て場所と時間を決めに行かなくちゃいけないんだ……先輩達に押し付けられて。今日の7時くらいからやるって言ってたと思うから……」
「……それはご愁傷様。ま、下っぱってそんなもんだけどな。ちなみに、どうやって決めるんだ?」
そう聞いて、心読はなぜか一瞬躊躇ってから口を開いた。
「ダイスロール」
「……え?」
「だから、ダイスロールだよ。時間がかかる上にどこの班も日を跨ぐ時間になりたくないから変に白熱するんだ……あの熱気が嫌なんだよ……」
妙に哀愁の漂う感じでそう言う心読にかける言葉が見つからず、空白が出来る。と言うか、心読もまだ《パトロール隊》に配属されて1週間弱しかたっていない筈だが……こんな言い方をするのは、ダイスロールが苦手なのか?
とにかくこの静寂は駄目だと思い、口を開いて――、
「……ま、まあ頑張れとしか言いようが無いな……せめて勝てると良いな」
「……うん、ありがと……それと、風、あれ……」
「ん? っぐっ!?」
心読の言葉に振り返った瞬間、首に衝撃がきて息が詰まった。そのまま後ろに引きずられ、必要以上に首が絞まる。要するに、不意打ちでラリアットを食らった形になる。
「ちょ、誰、です!?」
「もー風君こんな所にいたのねさあ行くわよ演習場に!」
首を捻り気道を確保してから相手の顔を見ると、昨日《鍛冶隊》で別れて以来の匣先輩が。しかも何故演習場?
疑問に一瞬抵抗を忘れた耳に、心読のしみじみとした声が届く。
「……風、君絶対巻き込まれ体質だろう……昨日のも結局断って無かったし、苦労気質じゃないか。大変そうだね……」
「い、いやまぁ自分でもそう思うけど……それより心読、助けてくれ!」
「……ゴメン、無理」
そんな殺生な~! ……と言う言葉を発したとかとはともかく、そのまま引きずられていく羽目になるのだった。
……そんなこんなで、匣先輩に連れていかれた先には邀撃先輩が順番待ちをしており、着いた5秒後にはレベル認定専用機械がある認定所区域のフィールドの中に入らされて、無理矢理共闘させられてる、と言った所で今に至る。
「風君! 2匹行ったよ!」
「え? ってうお、危ないなあ」
物思いから覚めた直後に蜂型の魔物が尻の針を突き出してきて危うく服が千切れる所だった。丁度剣の攻撃可能範囲に入ってきたので柔らかそーな腹の部分に剣を突いて絶命させる。
「……これ、何処まで殺れば終わりなんだっけ……?」
森をイメージしたフィールドの中央の少し高くなっている丘の上に置かれた《レベル認定専用機械2号機》、通称は、いまだに黒い粘着質の物(ブラックゲルと呼んでいる)を吐き出し続けている。まだまだ先長そう、と溜め息を吐いて、今回の認定条件を頭の中に思い浮かべる。
1・今回は団体戦なので、参加する人数×15匹を倒せば終了。
2・体力が全員とも半減した場合強制終了。
3・魔物の体力と自分や味方の体力残高はかけている眼鏡に表示、体力は体に着けたブレスレットが測定する。
4・《レベツー》本体を攻撃するのは禁止。
5・フィールドの外へ出るのも禁止。
6・攻撃手段は何でも可。しかし、使用後にペナルティが付くものや、味方の体力を奪うもの、フィールドそのものを壊したり変形させる攻撃は不可。ただし、フィールドに生えている植物や土を使用するのは良い。
7・時間制限あり。今回は30分。
「――だった筈……」
と言う事は、3人参加なので3×15=45匹、眼鏡に表示されている倒した魔物数は20匹なのでまだ半分程度だ。
「……」
――メンドクサ。
◆◇◆◇
メンドクサくても、一番下っぱとは先輩がやれと言われればやらなくちゃいけない物でして。
仕方無く、先輩方と協力しながらその後1人8匹程度を倒し課題の45匹に達すると、認定試験は終了した。結果は合格。全員の体力は半分以上(匣先輩はそもそも敵に近づかず遠距離魔法ばかり使っていたので体力は全く減っていない)残っているし、連携に問題も無し。
そんなこんなでフィールドを出ると、フィールド入り口前で立っていた受け付け係の人に、直径3㎝位の玉を渡される。これが無いと認定された事にならない。
「はい、合格です。レベル250認定ですね、おめでとう御座います、匣さん、邀撃さん、風さん」
そう言い輝く様な笑顔を向けてくるこの人は、栗・術策さん。《隊》には所属しておらず、鷹・白虎様(《4聖獣》の1人で白・青龍様と肩を並べるMSPの幹部)の下で機械関係の操作にたけている人である。仕事上、自分の知り合いの中では尤も人の顔と名前を覚えているであろう人で、勿論知り合い。名前につけてしまうほど、極度の栗好きだ。
「有り難う。やっとね~、251レベル認定。全く、風君が任務終了後に逃げなければもっと早く取れてたかもしれないけどね~ぇ?」
匣先輩の皮肉に、眼鏡と引き換えで渡され見ていた《証玉》(正式には《レベル認定証明玉》)から目を逸らして少々呆れ気味に返答する。
「……少なくとも、取る必要あるんですかこれ? 個人の《証玉》さえ取れれば別に団体用の《証玉》はいらないかな主義なんですけど」
「何言ってるの! 私達はチーム……いや、仲間なんだから、連携プレーを極めるのは当たり前で、その証拠に《証玉》は必要でしょ!」
「は、はぁ」
……どォやら匣先輩は熱血漢のよォだ、と言う要らない情報を脳内メモに書き込みつつ、《証玉》をポケットに放り込んで、
「にしても頑なだったよね……《証玉》取りに行きたくないって言って任務終わるとすぐ帰ってたけど……何か理由があるの?」
と言う邀撃先輩の質問に少々めんどくさいながらも答える。
「……だってあれ、レベルが高くなるほど大きい物になるじゃないですか……場所とるんですよ」
「あれ? 風君って何回もここに来た事有るの?」
「……有りますけど」
? 何を言っているんだ? と思って匣先輩を見る。先刻の、『個人の《証玉》さえ取れれば~』の件で分かると思うのだけど。
「だって私、風君があんまりここに来た事なくて、やり方が分かんないのと戦うのがめんどくさいから足が遠退いてるんだと思ってたから」
「「……あー」」
成る程、そう思われてた訳ね。
……まぁ、戦うのは好きじゃないが、嫌いでもないし、必要な事だとは思っている。
「……それより、場所をとるって……そんなに数とってないでしょ? 風君はまだ新入官になりたてだから、精々5、6個って所じゃ――まさか、大きいのばかり残してるからそうなるの? それとも風君が使えるスペースが少ないとか……?」
「……いえ、違いますけど……普通に皆と同じくらいのスペースは貰ってますし」
「じゃあ、何で?」
邀撃先輩に聞かれ、心底めんどくさい事になったなぁと思いつつ、次に紡いだ言葉は、
「……見に来ますか?」
だった。
◆◇◆◇
「おー終わったんだ風……ってあれ、匣先輩に邀撃先輩!?」
「あー……朧君、ちょっとお邪魔するわね」
部屋で何かやっていた(多分悪い事の準備か何か)朧先輩の後ろを通り、与えられている机の前へ来る。
匣先輩が朧先輩の名前を何で知ってるかはさておき、ポケットの中から1人1つ使える金庫(貴重品とかを入れておく為)の鍵が入っている机の戸棚の鍵を取り出して解錠すると、
「また厳重にしてるね~……」
と言う邀撃先輩の言葉を聞きつつ、移動して金庫を開けた。
――途端、
ガラガラガシャン!
《証玉》が開けた途端に溢れだし、地面を四方八方に転がっていってしまう。
「あ、あーあ……やっちゃった」
「何この量!? って危ない危ない!」
「う、うわうわうわわ!」
微妙な声をあげる先輩方を尻目に、とりあえず片っ端から拾っては落ちない様に本で囲った机の上に置いていく。
全部拾い終わってから、《証玉》の数を数えると――
「……まぁ少なくとも100個はありますね」
「「「……すご」」」
先輩方が絶句する中で、要る物と要らない物に《証玉》を分けていく。こんなにあっても邪魔になるだけだし。
「凄い数ね……新入官になってからの1週間じゃ無理でしょ、いつから集め始めたのよ?」
「集め始めたってのは違うんですけど……えーと、Sクラスになって1週間ぐらいしてから、殆ど毎日……」
「毎日!? でもあれ等官になってからじゃないと使用許可おりないんじゃ……」
「いや、首席になると特権で使える様になるんですよ」
「に……にしても、量がおかしい様な……」
「気のせいですよ……う~ん、100レベルずつ1個で良いか」
色ごとに1個ずつ金庫の中に放り込み、残った《証玉》をゴミ袋に入れようと群青色の《証玉》を手に取った所で、
「ち……ちょっと、待って!」
匣先輩にその手を止められた。見れば、邀撃先輩も朧先輩もその顔に驚きを貼り付けている。
「……何です?」
「何です? じゃないわよ、この《証玉》風君が持ってるのはおかしいでしょ!?」
……えーと、?マーク大量発生なんですけど。
「……おかしい? 何がです?」
「この群青色の《証玉》よ! これ、レベル700後半のでしょう!? 風君じゃあ取れないレベルじゃない! いや、MSPでも麒麟様以外に取れる人が居たらおかしいわよ!!」
――……ちなみに、《証玉》のレベルは色と大きさで表される。
レベル1~100は赤色で、レベル1~50以下なら直径1㎝弱の玉、51~100なら直径2㎝弱の玉。
101~200は橙色で、101~150なら直径3㎝弱の玉、151~200なら直径4㎝弱の玉。
201~300は黄色で、201~250なら直径5㎝弱の玉、251~300なら直径6㎝弱の玉。
301~400は黄緑色で、301~350なら直径7㎝弱の玉、351~400なら直径8㎝弱の玉。
401~500は緑色で、401~450なら直径9㎝弱の玉、451~500なら直径10㎝弱の玉。
501~600は水色で、501~550なら直径11㎝弱の玉、551~600なら直径12㎝弱の玉。
601~700は青色で、601~650なら直径13㎝弱の玉、651~700なら直径14㎝弱の玉。
701~800は群青色で、701~750なら直径15㎝弱の玉、751~800なら直径16㎝弱の玉。
801~900は紫色で、801~850なら直径17㎝弱の玉、851~900なら直径18㎝弱の玉。
901~1000は赤紫色で、901~950なら直径19㎝弱の玉、951~1000なら直径20㎝弱の玉。
……と言った感じに。
そして、MSPの等級はこのレベルに対応している。と言っても大体だが――、
第7等官はレベル1~100。
第6等官はレベル101~200。
第5等官はレベル201~300。
第準3等官(4=死なので第4等官は省かれている)はレベル301~400。
第3等官はレベル401~500。
第2等官はレベル501~600。
そしてMSPトップである第1等官はレベル601~700。
自分は最低ランクの第7等官なので、妥当レベルはレベル1~100。対して、匣先輩が結局的に奪っていった《証玉》は群青色で、直径16㎝。つまり751以上のレベルを持つ人物に与えられる《証玉》である。
明らかおかしい、と匣先輩達が言うのも間違っていない。
間違ってはいない。が――
「……『取れたらおかしい』んですか?」
「……え?」
思わずそう返答してしまって、匣先輩達の顔を見て後悔する。何言っちゃってんだよ自分! と自分を叱りたくなったが、もう動き出した口は止まらない。
「階級がレベルと一緒なんて事、例外だってあると思いますよ……自分がこの《証玉》を取れたのは半分偶然であり、半分は運が良かったってだけの産物です。証拠に、その《証玉》、マーブルどころか殆ど白色じゃないですか」
「え? ……あ、本当ね」
指摘すると、匣先輩は手の中の《証玉》をもう一度覗き込んだ。その《証玉》は、確かに所々群青色が混じってはいるものの、殆ど白色で埋め尽くされている。
《証玉》は色とサイズで持ち主のレベルを証明する物だが、その証明する最中の戦闘時に、挑戦者がどれくらい体力を残してその魔物を倒したかも、分かる様になっている。
例えば今日先輩達と戦闘して手に入れた《証玉》は、完全に単一の黄色一色だった。それはつまり、倒さなければならない魔物を、体力を75%以上残して倒しきった事になる。
対して今匣先輩が持っている《証玉》は、群青色なんて1割も入っていないんじゃないかと言えるほど、白色の割合が多い。体力が25%を切った状態で、相討ち覚悟! ぐらいの状態で敵を倒すと、《証玉》の色はこんな感じで白色が混じる。
75%を下回ると倒した時の《証玉》の色に白色が混ざり始め、25%を切ると殆ど真っ白状態、と言った感じで、その力量差を教えてくれるのだ。
つまりこの《証玉》を取った時は、体力なんてもう2割を切っていた状態だった、と言う事。
「と言うか自分の場合、その《証玉》手に入れたのは完全に不本意でしたし……研修棟Sクラス卒業試験の時に何でか発生した《ドッペルマン》レベルⅦを、何の因果か倒せてしまったんで、それの副産物として貰った物ですし」
「卒業試験? ――て、そう言えば風君って首席なんだったわね……」
「で、でもレベルⅦと戦うなんて……かなり無茶したんじゃ」
「当たり前じゃないですか、今レベルⅦと戦ってもすぐ負けますよ」
何とか話をずらせたかな、と内心溜め息。どうやってなんて……第一切り札3~4個切ってやっと倒せた相手だ、切り札を隠したい自分にとっては聞かれたら困るし。
それに、前にも述べた通り、自分は『100レベル1つづつ』、金庫の中に入れたのだ。
つまり――
がそこで、ただでは引き下がってくれない事に定評のある匣先輩が発した言葉が耳を打った瞬間、本当に唖然としてしまった。
「……じゃあ、試してみましょうよ」
「……は?」
「風君が戦ってみて、本当に手も足も出ないかどうか」
「……はい!? え、ちょ、やりませんよ!? そんなめんどくさい事――」
「本当に手も足も出ないって事は、HPを全く減らせないって事でしょ? それはいくらなんでも無いんじゃない?」
……おい? ちょっと待て匣先輩、何言ってんだ貴女?
「……それはそうかもしれないですけど……」
「と言うか風君の本気一度も見た事無いし、任務中も威力セーブしてるみたいだし、どれぐらいか把握しておきたいし」
「……威力セーブしてるって、」
「してるでしょ? 風君、敵によって剣の速度変えてるし……疲れない様にする為なんだろうけど、本気でやれば殆どの魔物一撃死できるでしょ」
「……それは……」
――何でバレたし。確かにそうだけど、匣先輩と一緒に魔物狩ったのは1~2回しか無かった筈で、他のSRでの仕事はいつも拠点の守護の方に回っていた筈なのに……。匣先輩、いつ気がついたんだ……?
言葉に詰まった事にニヤッと笑うと、手元の《証玉》を此方に見せびらかす様に呟く。
「それとも? この《証玉》を解析して、君が見てほしくない切り札を見ても良いのよ?」
「うっ」
「確か《開発隊》に物の記憶を見れるって奴が居たし……時間はかかるだろうけど、今からやって貰えば遅くても明後日には分かるで――」
「さ、流石に駄目でしょうっ!?」
「じゃ、やってくれるのね」
「……」
「ふう、邀撃君、この《証玉》《開発隊》に――」
「わ、分かりましたよやりますから持ってかないで下さい!!」
思わずそう叫ぶと、匣先輩は指を1本立てて此方の顔の前に差し出した。
「決まりね」
「……ぅぅ」
「ふ、風が押されてる所初めて見た……」
「あー、気持ち良いわ~……アハハハハ」
「……笑い事じゃないですよもう……」
頭を抱えていると、邀撃先輩が肩に手を置いてしみじみと――それでいて面白がっていると分かる口調で言った。
「ま、Fuはいっつも匣に言ってる方だし、匣の逆襲って所かな? 多分今から覆すのは無理だろうし、身から出た錆って事で諦めて腹括った方が良いよ」
「……」
前途多難、と空を仰いで溜め息を吐いたのだった。
……祝、8000文字越え。いや違う。
……マジでどうしてこうなった。本当なら最後の匣の追及シーンは無かった筈なのに……どうしてこうなった。
でもまぁ、書いてしまったものは仕方ないもので……。
次回の戦闘シーン、頑張って描写します……ハイ。……いや、もしかしたらちょっとカットしてしまうかも……Thirdみたく。
もしそうなったらスイマセン。