私の顔。
これは、とってもとってもこわーいおはなし。
あなたも、れいなちゃんみたいになっちゃうかもよぉ・・・?
のろわれちゃっても、しらないよ?
さぁ、こころのじゅんびができたなら。
わたしといっしょにいこうよ・・・・・・。
――――――ピピピピピピッ ピピピピピピッ
「ん・・・・・・・・・ぅ」
朝。
朝。
朝。
いつもの、朝。
私、高梨鈴奈はただいま小学5年生。
まぁ・・・どこにでもいる、普通の小学生女子ってとこだね。
「鈴奈ー起きなさーい」
「はぁーい」
私はベッドから出ると、ふと机のうえの鏡を見た。
栗色の髪に、つぶらな瞳。ピンクの小さい唇に、少し火照った頬。
「・・・・・・」
あれ・・・・・・?
何かがおかしい。
私、こんな顔だったっけ・・・・・・??
なんか―――目の位置がずれてきてるっていうのかな。
顔のパーツの位置がなんだかおかしい。
・・・気のせいだよね・・・?
「おはよー!!舞花ちゃん!」
「あっ、鈴奈ちゃん、おは・・・・・・あれ?」
舞花ちゃんは一瞬顔を歪めた。
「ん?どうしたの?」
「えっ・・・あ、あぁ、なんでもないよ・・・・・・」
なんだか、顔色が悪い。
本当に、どうしたのだろうか・・・・・・。
「・・・・・・ねぇ、鈴奈ちゃん」
舞花ちゃんが言った。
「顔・・・いじった・・・??
なんか、最近―――毎日毎日、鈴奈ちゃんの顔が変わるの。
・・・・・・いじってるん・・・だよね・・・・・・?」
え・・・・・・
「今日はね、目の位置がなんだか変。
昨日はもっと外側にあったのに・・・・・
それに、口の位置もちょっと変わってる」
・・・何!!?
何なの・・・!!?
顔が変わる!!!?
そんなこと、ありえないじゃないっ!!
「っ・・・やめてよ・・・私、整形なんてしてないよっ!!?
き、昨日と同じ顔だもんっ!!!」
私はそう言って、トイレに走り出した。
なんで・・・なんでなの?
なんでみんな怖いこと言うの!!!?
顔のパーツの位置がおかしいなんて・・・そんなの。
まるで、私が呪われてるみたいじゃないっ!!!
「鈴奈ちゃん!!どこ行くのっ!!?鈴奈ちゃん!!?」
後ろで、クラスメイトの茜ちゃんの声がする。
私は振り向いて、言った。
「ねぇ、私、おかしくないよねっ!!!?
いつもといっしょだよね??
ねぇ、茜ちゃんっ!!!」
ひっ、と茜ちゃんののどから声がする。
「あ・・・、あんた誰よっ・・・!!
き、気持悪いからあっちいってよっ!!!」
言って。
茜ちゃんは、真っ青にしながら走っていった。
・・・・・・何がおきてるの。
私、私――――――
「・・・な、に・・・これ・・・」
私は、鏡の前で凍りついた。
顔のパーツが・・・・・・
目が、鼻が、口が、眉が・・・・・・
「っ・・・なん、で・・・・・・」
吐きそうになった。
こんなの、人間の顔じゃない。
まるで、怪談に出てくる妖怪だ。
いや、妖怪でもこんな酷い顔のものはでてこない。
私の顔は。
狂っていた。
目の位置が、鼻の位置が、口の位置が、眉の位置が――――――
もう私、高梨鈴奈の形を、残していなかった。