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10000人の勇者達  作者: 山腹雪人
チュートリアル編
3/4

2話 やっと名前のでる主人公

『では、今度は魔王を倒した時に会おう。』


そう言い残し、神は姿を消した。


神が言うにはこれから今日の満月が新月になり再び満月になる日まで戦い方などを学ぶ環境をくれるそうだ。

30日後って言えばいいのになぁ、という疑問は約18日後、チュートリアル終了により異世界の短いようで長い生活の中で解けることになる


「で、ノブはこれからどうすんだ?」

神がいなくなり喧騒を取り戻した広間で勇次が聞いてくる


「勇次はどうするの?」

と質問に質問で返すと


「魔法にはちょっと興味があるけどよ、勉強する必要があるみたいだろ。ならいいや。俺は体を動かしてる方が性に会うしな。」


なんとも勇次らしい理由で、魔法をあきらめる返事が返ってきた。


じゃあどうしようか、体を動かせる場所か…、

そうだ、実戦型訓練場という場所にいってみない?という事を、

与えられた力を早く使ってみたい!ゲームみたいに戦ってみたい!という、そんな子供じみた思いからでた発言をした所で、


「おいおい、坊主達、そんな無茶しちゃ駄目だぞ。」


そんな声がして驚き振り返った僕の目の前には、


いかにもさっきまで建設現場にいて、そのまま来ました的な所々汚れた、ヨレヨレな作業着を着て、

首にかかるようにタオルをぶらさげた40後半位だろうか?

そんな年齢のおじさんが安全第一のヘルメットを被り立っていた。


「あの、ヘルメット脱がないんですか?」

かけられた言葉にあまり考えることなく、おじさんの容姿を見てふと口からでた言葉はこんな言葉だった。


「おっと、つけっぱなしだったか、こんな部屋の中じゃ必要ないな、いやぁ悪い悪い。」

と、言いながら外にでて働いている証とでもいうべき日に焼けた顔で照れ笑いを浮かべながらヘルメットを脱ぎだした。


ヘルメットを付けっ放しなのに気づいていなかった事からも、おじさんもきっとこの良くわからない展開で混乱していたのだろう。

悪い人じゃないのかもしれないと、急に声をかけられてから警戒していたのを弱冠解き、話しかけようとした時に、



「おっさん、工事の作業員か?近所で工事してなかったけどよ、どこ工事してたんだ?」

ちょっと失礼な呼び方で勇次がどうでもいい事を尋ねる。

おっさんじゃなく、おじさんとかお兄さんと呼ぶべきだという感じで咎めようとした所で


「ん?俺の現場か?、スカイツリーだ。」


さして呼ばれ方を気にしてない風におじさんは答え…え?…え?


「マジか?」

「マジ?」


思わず礼儀を忘れて、驚いて問い返してしてしまった。









竹刀の入った袋を担ぐ学生服を着て、考え込む俺を心配そうな目をして見ている親友に対し、気にするなという風に手を振り

「モリ、これからどうする?」

と我が親友に尋ねてみる。


「あぁ…話だと武器庫があるんだったか?そこ言って見てみようかと思うんだがどうだ?」

さすが由緒正しい剣術場の跡取り息子、まずは武器|(おもに刀だろう)に興味があるか。

それに、戦うにしろ戦わないにしろ、これからは何らかの装備を揃えた方がいいだろう。

神が過不足なく武器を集めているかもしれないが、これだけ人数がいれば、いいものは早めになくなるかも知れないしな。


「そうだな、これから武器は必要だし、いいものを早めに揃えるためにも先に装備を整えるのもいいかも知れんな」


近くにいる中学生のような少年達は、子供らしい好奇心を発揮し、さっそくダンジョンに向かおうとしていたが、

まず装備を集めようとするだけ俺達は少し大人になったのかもしれないなと、五十歩百歩な考えを抱き、

通りすがる時には何か別の話題に移ったのか、工事現場の作業員風の男性と何か楽しげに会話し盛り上がってる少年たちの横を通り、

あの男性が保護者代わりになってくれるだろうから無茶はしまいなどと大人びた考えを抱き、広間にいつの間にかできた出口を通り武器庫を目指した。








部屋をでて、廊下の素晴らしさに目を奪われながら適当に廊下を進んでいると


「ところで武器庫がどこにあるかお前知ってるのか?」

という、モリの発言に焦りつつも、遠くに地図らしきものがあるのを目ざとく発見し、


「あそこに地図があるから、あそこで調べればすぐにわかる。」

と努めて平静を装い、先ほどからドクドクなる心臓の音が外に漏れないよう力ずくで押さえながら、さも知っていた風に返答を返しておいた。








「あぁいうでかい物建ててるってことは、おっさん実は偉い人なのか?」

勇次が考えようによっては失礼な事を聞きだしたのでおじさんすいませんと言いながら勇次にも謝まらせる。


「あぁそんなに気にしなくてもいいよ、君のお友達みたいに君もおっさんと呼んでもいいよ。」

と笑って言いながら。

「まぁ私は普段は、まぁ…個人でやってて必要な時に雇われる様な感じで働いているのだがな、たまたま知り合いのコネで働けたんだ。

 まぁ偉くもなんともないしがないおじさんだと思っていいよ。それにスカイツリーの現場で働いている事は何より話のタネになるしな。」

とニコやかに答えてくれた。


「事実君たちとも打ち解けれた」と最後に言われた。



確かに話しかけられた時はちょっと警戒していたけど、今はちょっと尊敬している気がする。



「ところで、実戦型訓練場だったかね?そこに行くと言っていたがやめときなさい。そういうのはもっと大人の人達が安全を確認してから、子供は大人の立会を受けながらやるんだ。」

というもっともな意見をだすおじさんに僕は


「でも神様に力を与えられたんだよ大丈夫だよ!」

と子供扱いされてキレる子供らしい反抗を返すと、


「何も行っちゃいけないとは言っていない。与えられた力で戦えるかはわからないし、他にも準備が必要かもしれないだろ。だから今日はまず部屋割りとカードだったか?

 それを貰って訓練場に行く準備をするんだ。

 どんな事でも準備を疎かにすると碌な事にならない。工事現場だってそうだ。準備を疎かにすると大変な事故に繋がるんだ。」

と大人の対応で論理的に返された。


しかし、おじさんの論理を崩す事実が思わぬところから返される。


「今日は部屋割り貰うっておっさんはいうけどよ、今日中にもらえるのかあれ?」

という勇次の声に振り返ると、


「ナニコレ?」

思わずそう呟いた僕は間違っていないと思う。




「こらまたすごいなぁ…。」

おじさんも驚きの声を上げる。


「何か災害があっても、日本人は行列を作って配給を待つだか聞いたが、こんなことになっても行列を作るとはなぁ。」

おじさんが見た光景に驚きながら言葉をつなげる。


そう、まさにおじさんの言う通り、行列ができているのだ。

部屋割りや能力を調べる部屋の中央の水晶に。

異世界召喚という、災害とは違う突発的な事態に、いや、これもある意味災害か。

そんな事態でも、秩序正しく行列を作り順番待ちしている今の光景を見ると、

災害の時に行列を作る光景を見た外国人が不気味だとか日本人はすごいと発言していたらしいが、その気持ちが今なら少し理解できる。


僕らのように遠巻きで見ている人間や、先にどこかに行こうと考えているのか外に出ていく人、

また行列の周りをうろついている人も見えるから、1万人が行列を作っているわけではないだろう。

しかし何千人とも思える人間が水晶に行列を作っているのだ。

まるで蛇のように長い行列が何回も折り返しながら蛇行している様は…というか最後尾はどこだろう?

行列の周りをうろついている結構な数の人達は最後尾を探しているのかも知れない。


長さも強烈な印象を与えるが、僕らが気づいてから今まで、この行列いまだに動いていないのだ。

どれだけ水晶を使う時間は長いのだろうか?


「おっさんには悪いけどよ、こんなんに並ぶ気しねぇぞ。」

勇次の一言に僕もおじさんも頷いていた。



「しかし、これは参ったな。これでは今日中に部屋割りなんかを決めれるか疑問だぞ。」

おじさんが困ったように呟く。


「先に準備や武器探しとかしませんか?そうしてたら少しはすくかもしれないし、もしかしたら他の場所に同じような水晶があるかも知れないし。」

とおじさんに提案してみる。


「そっちの方がいいな、これは。なら先に訓練場へ行く準備をしよう。」

そうおじさんはニカッと笑って僕の提案に応じてくれた。



そうして僕らが部屋をでる頃、やっとほんの少しだけ進んでいる行列のできている先ほどまでいた部屋を抜け、廊下に出た僕等に飛び込んできたのは、


「なんだこりゃ?床も壁も継ぎ目すらないな?」


というおじさんの驚きの声だった。

工事現場でいろんな建物を建てているおじさんだけあって、この建物の不思議な所に目ざとく気づいたようだ。

「セメントじゃありえないな。大理石でもありえない…」

磨き抜かれた鏡のような傷も曇りも汚れもさらには継ぎ目すらない床は、まるで雲一つない快晴の時の空の様な抜けるような青さをしている。

冷たい印象を受けることの多い青でありながら、温かみを感じさせる青は見ているだけで心が弾む感じがする。


ふと天井を見上げれば同じように継ぎ目すらない天井に、まるで晴天の時の雲のような優しい色合いをした白い天井が広がっている。

下手な白色だと、見ていると少し眩しい感じがするが、この白は雲のようなやわらかさを持った白だ。



壁を見れば上は天井と同じ白、下は床と同じ青が半分より少し下でわかれている。

それによく見れば、壁や天井の白も床と壁の青も、まるで空のようにところどころ色を変えている。

そう、そのお陰で受ける印象を例えるならこれは


「まるで空を歩いているようだ」

と思わずその例えを呟いた僕に同意の声が返ってきた。


廊下を歩いていると、まるで青空を歩きながら雲のトンネルの中を進んでいる気分になる。


子供の頃の空を飛びたいという夢を叶えたかの様な気分に浸りながら進んでいると


しゃがんで床を調べたり壁を見たり、天井を眺めながら材質や継ぎ目がないかを調べていたおじさんが廊下の材質を驚きながら語りだした。

聞くと、コンクリとかそういった類でではないのは確実。

例えるなら上半分と下半分がこんな色をした岩を、まるごと削って磨き上げて作ったような床と天井だ。

というおじさんの推察の言葉にさらに驚きを深める。


「てか明かりも窓もないのにこの廊下やけに明るいな。」


という勇次の言葉に思い出してみれば、出ていく時に見た感じ、そういえば広間にも明かりがなかったなと今更ながらに気づく。

いったいどういう仕組みなのだろうか?先ほどの窓一つない部屋もこの廊下も光源一つないのに不思議と明るいのだ。


「しかし、これはすごいな。神様だなんて信じられなかったが、この建物を見ると本当にいるのかもしれないと信じてしまうな。」

神様に会ったのに、そんな風におじさんがふと漏らしていた。











地図を見て武器庫の位置を把握し目的地を目指す俺達の目に飛び込んできたのは、


「うおおおおおおおおお、すげええええええええ。」


思わず驚きの叫びをあげる親友。

かくいう俺もこれが絶句というやつかと頭のどこかで思いながら、確かに目の前の光景に絶句していた。


ここは、いやこれは、空に


「これあれだろ、ラ○○タだろ!ラ○ュタ!!本当にあったのか!」


友人が興奮してちょっとまずい一言を連発しているが、今僕らの見ている光景は厳密にいえばラピュタとは違う。


壮麗で雄大な宮殿が空に浮かんでいるのが見えるのだ。


そこまで続いている道は、今まで廊下では天井だったものが床になっている渡り廊下が続いている。

まるで雲の渡り廊下だな。

そう例えるのが一番正しいだろう。



今まで通ってきた廊下も白と青だけなのに色彩が多彩に変化するので、空を歩いている気分にさせたが、

俺達が宮殿が空に浮いているとわかったのは、宮殿の周りの雲があきらかに動いているからだ。


廊下にでても風を感じず、不思議に思い外に手を伸ばそうとすると


コツッ


という軽い音がして手が壁にぶつかった。


これは?…壁が…ある?


ガラスと思わず壁と表現したのは、触った感じがガラスではなく、今までの廊下や床と同じ感触なのだ。

例えるならこの壁は無色透明な岩や大理石だろうか?


ほとんど何もわからず、神の御業と例えるしかない驚きの光景を眺めながら、


宮殿につながる道を歩きながら、いまだにたまに驚きの声を上げる友人と歩っている時、ふと気になって後ろを振り返ると、


さすがに目の前にある巨大な宮殿にはおとるが、それでも随分な大きさの宮殿が見えた。

「あれは、離宮という奴になるのか?」


それを聞き振り返ったわが友は、

「かもしれないが離宮ってサイズじゃないだろう。」


俺達が今までいた場所は、我が親友殿がそう思わず返してくる巨大な宮殿だった。






青空の廊下を抜け、雲の渡り廊下という驚きの光景に、興奮冷めやらぬ僕達は、

渡り廊下の先にあった地図で武器庫の位置を確認し、武器庫に向かっている最中ふと気付いた。


「あれ?そういえばおじさんに自己紹介とかしてなかったですよね?」

そう、まったく名乗っていなかったはずだ。

勇次の名前は度々言っていたが、色々驚く事が多くて呼び名を気にかけるタイミングを逃していた気がする。


「あぁそういやそうだったな。」

とおじさんが軽く返し、

「こういうのは年長者からいこう、おじさんの名前は二宮 浩司だ。職業はしがない日雇い労働者だ。」

まぁ呼ぶ時はおじさんでいいぞと簡単な自己紹介をした。


「俺は鋳形 勇次だ。よく似ているから間違われるが、名字はゼニガタではないぜ。」

学校のクラス変えで勇次と一緒のクラスになった最初の日は、間違えられる光景を何度か見たことがある。

よく見れば全然似ていない銭と鋳だが、若い人には某漫画の影響で、年配の人には時代劇の影響でか、たまに銭形に間違えられることがある。


「僕は長谷川 宣以です。一応勇次と同じ中学校の三年生です。」

宣以と書いてノブタメと読む。この名前は知っている人にはウケがいいのだ。

池波正太郎ファンとか時代劇の好きな人とかはこの名前を聞くと途端に僕に好意的になる事が多い。

僕の父が池波正太郎の特に鬼平犯科帳のファンで、話の主役である鬼平、長谷川平蔵宣以が好きで、

『長谷川ときたらこうつけるしかないだろう!』と言ってこの名前をつけたのだ。

ちなみに父は入り婿である。

なんで平蔵の方じゃないんだ?と思う人がいるかもしれない。

そちらは僕の兄の名前である事から、僕の父が筋金入りのファンだとわかるだろう。


「長谷川ときて宣以って事は鬼平か?」

どうやらおじさんもそうらしい。


「はい、そうなんです。父が池波正太郎の鬼平犯科帳のファンで僕にこの名前を付けたんです。」


「火付盗賊改方長官長谷川平蔵賊宣以である。賊ども、神妙に縛に付けい!となんてな」

おじさんが少しハニカミながら、僕が今でもそらで言える決め台詞を言う。


最近は子供に漫画の主人公とか読めない名前を付けて問題になる事が多いが、

僕の名前は実在の人物とはいえ、小説からとったのに親戚一同誰も反対しなかったそうだ。

むしろ、親戚の、特におじさん達に受けがいいというか大賛成だったらしい。


よく親戚の集まりに顔をだすとおじさん達に上記のセリフを言ってくれと、演技指導つきで頼まれる。

今ではちょっと言うのは少し恥ずかしいが、

このセリフをいうと皆喜んでお小遣いだったりお菓子をくれたので喜んでやったものだ。

ちなみに今でもお小遣い目当てでやっている。


ウケがいいのは親戚だけではない。学校の、特に年配の教師達のウケもいいのだ。

多くの教師に目をかけられ、他の子よりひいきにされたと感じる事も多かった。

中には僕の名前を聞いて喜んで?成績をおまけしてくれた人もいる。


今の担任なんてそんな感じである。

普段から名前のおかげか、かなり目をかけて可愛がられていた。

そうは言ってもいいことばかりではない。


進路相談の3者面談の時なんて、学業成績面で進路に問題はないと1分くらいで僕の進路相談は終了。

残りの14分いや、次の人にもずれこんだので30分くらいだろうか。

僕と一緒に来ていた父と先生の池波正太郎の鬼平犯科帳談義だった。

父と先生は、最後はお互い連絡先を交換し、酒を飲みながら語りあかそうと固い握手をしていた。


自分でも問題ないとは思っていたけれど、初めての受験で少しは緊張していたのだ。

なにか適格なアドバイスをくれたりするものだと思っていた僕は、怒りにまかせて母にこの事をチクることになる。


なんでも最初は母がくる予定だったらしいが、父が

『いつも母さんに苦労かけてるからな。たまには君の苦労をねぎらう意味もかねて父親らしい事をしよう』

と、言ったらしい。その言葉に喜んで母は父を送り出した訳なのだから裏切られた母さんの怒りは…


その日怒り狂った母さんが作った夕飯は、ご飯や味噌汁からおかずまで、全て父の嫌いな物だった。

ごはんはキノコご飯|(父は昔キノコにあたってキノコがだめらしい)、味噌汁はピーマンの味噌汁|(味噌汁に緑の物体が浮かんでいるのは衝撃の光景だった)、その他父が嫌いな物が食べきれないほど…。

父が嫌いなものは、僕も半分嫌いなので、僕にも地獄だった。

他の兄妹も似たようなものなので、俺何かしたか?と思わず呟いていた兄さんに謝りたくなった。

ちなみに、母も父と似たような好みなので半分近くが母の嫌いな食べ物だったはずだ。


母に拝むように謝り倒す父が見ていられず、逃げるように部屋に戻った。

その夜、トイレに起きた時に見た、暗い居間でビールを飲んでいる父の背中はたしかに小さく見えた。


そんな最近あったちょっといやな事を思い出しながら、

なんだかんだいいながら時代劇が好きな僕や勇次そしておじさんは時代劇の話で盛り上がりながら武器庫に向かった。

ちなみに僕と勇次が親友なのも、僕の父と勇次の父親が趣味があうためでもあり、そんな2人の影響を受けた僕らもこの年齢には珍しく時代劇好きである。




途中ちょっとしたアクシデントがあったが、無事に武器庫に辿り着く事となった。

「どんな武器があるのかな」と期待に胸を膨らませた僕らの目の前に、


「あれ?何もない?」


何もない部屋が飛び込んできた。


見回しても2人位の学生服を着た人が奥にいるのが見えるくらいで武器なんて何一つみえず、

部屋を間違えたかなと外にでて部屋を確認しようとしたとき、


「確かに武器庫ならここだぞ。」

と、すでに腰に刀をさした学生服を着たお兄さんに声をかけられた。



「でも武器ないですよね?」


そう尋ねてみたところ、先に来ていたお兄さんの話によると、


ここの武器は完全オーダメイドの様なかんじで、持ち主が使いやすい用に作られた欲しい武器を出してくれる、

機械のようなものが奥にあるらしいと教えてくれた。


「で、お前らどんな武器使うんだ?」

とお兄さんが聞くと、


「子供に危ない物持たせたくないんだがなぁ…」

とおじさんが返すと


「これから何があるかわからないしな、素手よりは安全だろ。」

とお兄さんが返した。


納得いかないが納得するしかないかといった感じでおじさんが押し黙ったのを見て僕は

「やっぱり刀が使いたい!」

何度も時代劇をみているだけあって、刀への憧れは強い。


「やめたほうがいい。」

とあっさり返された。


僕が何か反論する前にお兄さんが言うことによると、

刀を素人が扱うのは難しい。素人が使ってもまともに扱えず危険との事。


「まぁやめた方がいい一番の理由はこれだな」

と言って僕に自分が持っていた刀をさしだす。


「おもっ!」

思わずそんな声がでた。


「だろ?刀ってのは時代劇とかだと簡単に振り回してるように見えるけど、

 鉄でできてるだけあってかなり重いんだ。」


持つだけならできる人間も多いだろうが、刀を振ろうとしたら結構鍛えている人でもないと無理だし、

扱いこなそうとすれば稽古を積まないと無理だとお兄さんに返される。

具体的にいえば刀を振るだけなら最低でもおじさんや勇次くらいの筋力がいると返された。

実際、僕から受け取った刀で勇次はけっこう堂の入った素振りをしている。


たしかに、園芸部という名の帰宅部所属の僕では、運動系の部活に入って普段からスポーツ少年をやっている勇次みたいな筋力はない。

しかし、武器なしはまずいだろうとお兄さんに相談してみると、


「確かに、なんかは武器を持っていた方がいいだろうしな。」

といって勧めてくれたのが槍だった。

槍と言っても柄の部分も金属の槍でなく、柄の部分は木で先端にだけ金属がついたどちらかというと、

木の棒では素人には頼りないが本物は扱えないだろうから、本来は本物を使って練習する前の一段前で使われたりする練習用の槍らしい。

奥に行ってお兄さんの助言を受けながら槍の注文をしてみると、

ほぼ注文通りの先端にだけ金属のついた見た目よりは軽い槍がでてきた。

先端は確かに鉄だが、柄の部分は木かと思ったらやたら軽くて丈夫そうな未知の材質だったが。


お兄さんの助言を受けながら皆の武器を作ることになった。

勇次は難しい事を考えずぶん回してぶった切ると言って両手剣にした。

かなり重いのに振り回しているのをみると、あいつそんなに力があったのかと驚きを隠せない。

というか色々教えてくれたお兄さんもおじさんも驚いている。


おじさんは鈍器とか棍棒とかメイスとしかいいようのない武器になった。

おじさん曰く、この年になると小難しい技術は覚えられないからな、当てられればダメージを与えれるのがいいだろ、とのことだ。


槍の扱いを多少だが教えてくれるとの事なのでその話にのったのだが、

お兄さんは槍なら多少は扱いを知っているが両手剣と鈍器はなぁと困っていた。


図書室で調べられないかな?とお兄さんに聞くと、

まぁ本の知識でも型さえわかればある程度は教えられるかなという返答が返ってきた。

という訳で次の行き先は図書室になったので向かおうとしたが、


「つれの武器がまだ決まってないんだよなぁ」

と苦笑しながら奥を指差す。


そういえば部屋に最初に来た時2人いたなと思い返しながらどうしようかと考えていると、


「まだ決まりそうにないから、図書室に行くといい。俺も図書室に興味があるからな、後で図書室に向かう。」

との返事が返ってきたので武器庫をでて、近くの地図を探してから図書室へ向かう事となった。


図書室を目指す道すがら、

「そういや自己紹介がまだだったな、俺は神原 守人だ」

自己紹介をして、ここにきて驚いた事などを話し、談笑しながら図書室に向かう事になった。




図書室につき扉をあけ、入口に張られている膜のようなものを通り抜けた僕らに飛び込んできたのは、山の様な本棚と本の山だった。

「これはすごいな、何階まであるんだ?」

とおじさんが驚くように、かなり上の方まで、10より先は見えないなぁ…とにかく大量の本があるようだった。


とりあえず入って正面にすぐ見える案内板を見たところ、

武器関係の書籍は幸い2階だった。

宮殿施設紹介関係って本があるのを見て、もしやと思い、

「最初に呼ばれた広間の水晶見たいのがほかにもあるかもしれないしここで探していい?」

と聞くと、あれに加わるよりはそっちのがいいなと皆同意してくれた。

「どういうことだ?」

神原さんの話を聞くと説明会終わってすぐに部屋を出たらしかったので、軽く5000人を超える行列ができていた事を告げると、

『是非そうしてくれ』との返答が返ってきた



宮殿施設紹介関係の棚からめぼしい本を取り出し近くの机まで行くと遠くの方に本を読んでいる先客が見えた。

本に夢中になっているのかこちらの事に一切気づいていないようだが。

まぁ無理に話かける必要もないかと思いながら持ってきた本を読んでいると、目的の物はすぐに見つかった。

めくったらすぐに書いていたのだ。

どうやら僕等が最初にいた部屋の中央にあった水晶は各所にコピーがあり、それらはリンクしており、それの本体ともいうべきものがこちらの本宮殿の中央にあると書かれていた。


色々と他の本も読んでいると、武器関係の本を探しに行った勇次達が途中で合流したのだろう神原さんの相棒と一緒にすぐそばまできていた。


「なんかわかったか?」

と勇次が聞いてきたので分かった事をいうと、

「他の人に知られる前に、その本宮殿の水晶で登録した方がいいだろうな。」

と意見の一致を見て本を棚に戻し図書室をでることとなった。




『満月が新月になり再び満月になる日』

ここの月の満ち欠けは地球より速いため、実は18日位しかない。


『宮殿の地図』

実は結構あちこちに貼ってある。

しかし部屋数の多さと広さのため迷子になる勇者は続出した。


『神様なんて信じていなかった』

主人公が不思議に思うおじさんのセリフ。

テンプレ召喚話を知らない人達にはかなり説明不足な神の説明。純粋に魔法を使える事を喜ぶ主人公達若い年代と、酸いも甘いも噛みしめた年配の人達との人生経験の差も理由である。そして説明不足は意図的な物。


『渡り廊下の無色透明な岩のような壁』

魔法的な結界とかではなく、本編で神原の親友さんが推察した通り無色透明な性質をもった軽くて丈夫な物質でできている物質で、魔法的な要素は一切ない。


『武器庫の武器製造器』

本編ではさらっと流されたが、材質の指定もでき実はミスリル性とかもできた。しかし勇者達はそれに気づく事はなくチュートリアル時代を終えた。


『ピーマンの味噌汁』

作者は食べたことはない。


『図書室』

32階建てのぎっしりと本の詰まった図書館

さすがにチュートリアル時代の短い期間に読み切れたものはいなかったが、半分は呼んだ勇者がいた。


『本を読んでいる先客』

どうがんばっても話にからめれないのでここに書く。

後に図書室の主と呼ばれる女性。

ここの本を寝食を忘れ読み耽りなんとか半分読む事ができた。チュートリアル終了とともに倒れ、その時、彼女が来ている事に初めて気付いた幼馴染に介抱される事となる。

後に主人公達の仲間になるがもっとずっと後である。


『実践型訓練場』

全部で地下15Fまであるダンジョン。

パーティでの最高記録は12F。

なおこのダンジョンを制覇したのは3人おり3人ともソロである。

一人は神原 守人。


『主人公の妹』

後に興味を持った他の勇者達が勇次に聞いたところ、

「ほら…あれだよあれ…えっと…クラスのオタク達がいってた…そうそうツン照り焼き、ツン照り焼き。」

主人公に尋ねたところ、

「いつもおれに生意気で可愛くない妹。」

他の勇者達はツンデレ妹とかそれなんてテンプレ?と意見の一致を見た。

ちなみに前編後編ともに今後話に登場する予定は一切ない。


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