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10000人の勇者達  作者: 山腹雪人
チュートリアル編
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序章

「ようこそ勇者様。私は召喚の巫女でそしてこの国の王女で国一番の魔法使いです」

「我が国は近年魔物の脅威にさらされており勇者様のお力でないと倒せない魔王を倒さないと世界が大変な事になるのですだから魔王を倒してくれる勇者様を召喚しました。」

「お願いです勇者様!私たちの世界を御救いください!」

「わかりました世のため人のため魔王を打倒し、世界を救いましょう」

「だが断る。」

正義感が強くてイケメンで現実世界でもモテモテチート野郎とそんな男となぜか友人をやっているあまり目立たないちょっとひねくれた友人がそう返す。

異世界テンプレとはこんな感じだろう。

そんなのある訳ないだろ!

っとよく突っ込んでいたのが懐かしい。




 事の始まりは何だったろうか…。

よく覚えて…いや、テスト間近なのに現実逃避気味にネット小説を漁っていた事だろうか。

ネット小説や携帯小説というとレベルが低いと言われるが、僕には結構いいのだ。暇つぶしになるし、何より無料!|(ここ重要)というのが学生には嬉しい。

 だから最近は手頃に読めて割かし読みやすく何より無料なネット小説を読み漁っていた。


一番多く読むのが異世界召喚物


最近よく読んでいたというよりはランキングの高順位の物の大体が異世界召喚物なので必然的にそういった話を読む事が多くなる。

もちろん楽しみながら読んでいる。なんというか…ちょっと恥ずかしいけど格好良く言えば心躍るとでも言うべきか。|(まぁ中2病ともいう。)

それでテストが近いのにほとんど徹夜に近い時間になるまで読んでいてスズメの声を聞いてあわてて寝たんだ。睡眠時間は推して知るべし。

その後すぐに起きて朝食を食べ、眠さをこらえていつものように家まで迎えに来た親友の勇次と一緒に学校へ向かう。

徹夜の時のあの妙なハイテンションになっていた僕は学校に行く途中に親友の勇次に異世界召喚テンプレ小説について語ってたんだっけ。

ちょっと語るのは恥ずかしいけど、ちょっと難しい話になると右から聞いて中に入らずもう右から出ている男だからと色々語ったのを覚えている。


「異世界召喚ものはおかしい。」

「なんでたった一人の人間に世界の未来を託すのか。それに、なんでチート能力なんて持ってるわけ?」

「そして、いくら正義感にあふれててもそんな言葉聞いていきなり『はい、やります!』なんて言う訳ないじゃないか。」

「なんだかよくわかんねぇ話だが・・・なんだかよくわかんねぇな」


たいして難しい話をしていないのにこれである。あいつのバカさ加減にはあきれるよ・・・。

大体にしていつもこれなんだ、テスト前になってあわてて聞い・・・っと話しがずれてしまったな。

つまりだ、何を言いたいかと言うと

「なんでたった一人の人間に世界の未来を託すのか。」

とは確かにいったが…



「よくぞ参った!一万人の勇者達よ!」



さすがに多すぎだろ




 目を覚ました時に呟くテンプレは「知らない天井だ」だろう。

僕が目を覚ました時に言った一言は何だったろうか。

たしか周りの人の多さに驚き、寝ている自分に気づき、急に倒れて誰かに迷惑を掛けたのではないかと謝った記憶があるから「ごめんなさい」いや「すいません」だろうか。

日本人はどこへいってもすいませんとかごめんなさいを言うというのを何かで言われていたが、その通りだと思うと今実感した。


 しかし誰も謝っている僕に注目してこずそこで初めて気づいたんだ。

なんでこんな人だらけの場所に僕はいるんだ?

「ここはどこだ?」

ふと漏らした疑問の声に応える返事は周り中人だらけの割に返ってこなかった。


 いや、誰も返せなかったのだろう。


よく見ればこの時間は会社で働いていそうなスーツ姿の人が通じない携帯にキレているのが見えるし、学生服姿の人も見えるし、某ファーストフードの制服の人、

すぐ近くにはあきらかに今工事現場から来ました的|(安全第一のヘルメット本当にあったんだ。)なおじさんまで多種多様な年代職種の人達が見える。

 深く考えることなく、誰もここがどこか分かっていないのが納得できた。そしてまだ自分で手一杯なのだろうとも。

 気絶していたからか寝ていたからかわからないが、回らない頭をなんとかフルで稼働させながらここがどこかを知るため辺りを見回してみるも、

「壁際まで人でぎっしりで何も見えないなぁ…」

僕の呟きは周りの喧騒にかき消され誰にも届くことなく消えた。


ここで初めて気づくあたり僕も間抜けだなと思うが、あたり一面どころか見渡す限り人だらけなのだ。

足の踏み場も無い程ではないがちょっと動けばすぐに近くの人に当たる位は人だらけなのだ。それが見渡す限り続いて…って見渡す限りぃ!!


慌てて見回してみて気付いた、先ほどと同じように人が多すぎてほとんど見えない壁、その逆側にも壁があるのだろうが…見えないのだ。反対側の壁が。その上横側の壁まで見えないときている。

「いや、さすがに広すぎってかここに一体何人いるんだ?」

ここで初めて気づくあたりまだまだ頭が回っていないんだなぁと納得しつつ、あたりの人の話から情報を得ようとするが、


「私…………中学生……好きです……ニーソ………どこなんです?……ハァハァ……山田君」


だめだ。まるで聞き取れない。さすがにこんな喧騒の中から会話を聞き取るなんて器用な真似できる気がしない。

それによく聞けば周りの人間は皆喧騒に負けない用に大きな声で喋っている。それでも結構近くにいるのに聞き取れないのだ。

これは周りから情報を集めるのはあきらめた方がよさそうだな。

と、ふと見ている光景に違和感があった。

「ん?何か前方がさわがしい…からか?」

なんだろうか前方が騒がしい?いや人の群れが蠢いている?いや誰かがこっちに来ている?

強引に割れたように見える人の群れから出てきた見覚えのある学生服の男が

「よぉ!ノブ!」

と、当たり一面の喧騒に負けないようなよく通る声を僕に届けた。




どうやら僕の親友もいたようだ。

「勇次!」

あたりの喧騒に負けないように大きな声で名前を呼んだが、届いたかは疑問だ。

咄嗟にもしかしたらこいつなら僕が気絶している間の事を何か知っているかも知れないと思い。


「ここはどこかわかるか?」

「ここはどこなんだ!?」


勇次《バカ》に聞いた僕が間違いだった。

「やっぱ、ノブも知らねぇか」

苦笑とともに勇次が言った。

「わかる訳ないだろ、さっき気付いたばかりなんだから。」

勇次がそんな事を知るはずも無いのに呆れ気味に僕は呟いていた。まるで勇次が悪いかの様な酷い言い方だがまぁいいだろう。


「そらそうか、俺が起きた時は皆寝てたしな。」


まったく一番最初に起きた人間が知らないのに最後の方になって起きた僕が知るわけな…え!?

「勇次、起きた時皆寝てたってどういう事?」


こいつから情報を引き出すのは大変だが何か情報を得られるかも知れない。僕は気づけばそう聞いていた。

その後質問の仕方を変えたり相手の答えと勇次の思考を推察|(長い付き合いだからできる)して苦労して導き出すという、

大声を出しながら会話するという作業よりも苦労した作業の末の内容はこうだった。

 起きたら周り一面仰向けで眠る人間が当たり一面大量にいたそうだ。

そんなある意味ブラクラな光景を眺めどうすればいいか悩み、とりあえずまずここはどこか聞くために人を探そうとしたらしい。

あたり一面人だらけなのに周りの寝ている人から聞こうとしない当たりがこいつらしい。

まぁ実際知らなかっただろうから正解だろう。頭は悪いがそういう勘がいい男だ。

で、話のわかる人や出口を探してさまよいながらうろついていると、

起きだす人が増えてきて歩き回っている彼なら何か知っているんじゃと話かけられ、「知らん」の一言で一蹴しながらも出口捜索をしていると|(目的が変わっているあたり彼らしい|(笑))

彼曰く「ノブの気配がする。」と突然俺の気配を感じてその方向に向かい無事俺を発見…ってなんでやねん!

と突っ込みたいが、「勘」と返されるのは目に見えているのでグッとこらえ、


「なぁこの部屋を見回ってて何か気付かなかったか?他にも怪しい人影を見たとか?」


と聞けば、

「怪しい人影の方は人が多すぎてわかんねぇな…そういや、ここを見て回って思ったんだけどよ、この部屋って柱が一つもねぇのな。」

え?柱がない?そんなどうでもいい事を…、いやそうでもないか。相変わらずどうでも良さそうで重要そうな事に気づくなぁ。

それにしても、柱がないのにどうしてこんな広い部屋を維持できているんだ?

新技術もしくは未知の技術か?そしてそんな技術を使えこんな事態を起こせるとするとこれは…

政府の陰謀?宇宙人の拉致?秘密結社?

さすがに漫画の読みすぎか。どの理由でもこんな大人数を拉致するメリットがなさそうだ。

だめだ思いつく可能性がどれも簡単に否定できる物ばかりだ。


「なんかわかったか?」

勇次が聞いてきた。

「さっぱり」

本当にさっぱりだ。

「なんで柱がないんだろうなぁ…?」

バカもバカなりに悩んでいるが答えが出る事はないだ…

「わかった!」

なんで?

「きっと魔法だよ!えっと…ほら…お前が朝言ってた…そうそう異世界召喚って奴だろ」

やはりバカだった。というかあの話覚えていたのか。

「なんで柱がない部屋で魔法→異世界召喚につながるんだよ」

それにテンプレじゃどっかの一室|(その割にでかいが)に召喚されたのならすぐに現れて召喚理由が告げられるだろうし。

「だってよ、ここに来る前」

『ふむ、皆目を覚ましたようだな。』

バカの言葉の途中、

突然朗々たる声があたりに響き渡る。

まともに声が伝わらない様な喧騒の中でも聞こえるその声が辺りにいる皆にも確かに聞こえたのだろう。

あれだけ騒がしかった周りが水を打ったかのように一気に静まり返る。



『よくぞ参った!一万人の勇者達よ!』



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