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スキル【致命眼】の初級魔術〈ファイアボルト〉は最強  作者: 酒とゾンビ/蒸留ロメロ


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 マサオの家を出た俺たちは、冒険者の義務のようにギルドへ向かった。


「やけに女神に突っかかってましたね、ロードリーさん」

「エリンギン王国は私の出身地だ」

「え、そうだったんですか?」

「生まれがそうだというだけだ、思い入れはない。記憶もないしな。だが女神信仰については知っている、それだけは私としても誇らしい文化だった。だがあのような者が女神とは……この国は変わってしまった。民があれを認めているというのだから笑えてくる」

「全くです!」とパールさん。

「なにか訳があるのだとそう思いたい」


 そうこうしているうちにギルドへ到着した。


 スバラの冒険者ギルドは白い神殿のような落ち着いた建物だった。

 中は広々としていて天井が高い。

 今までに見た事のない様式だが、冒険者の多さや不潔さは変わらない。


 一つ違うのは、王都よりも人間が多いことだ。

 むしろ人間しかいない。

 王都やケイデンスのギルドは人間以外の種族の姿が多数あった。


「人間ばっかりですね」

「エリンギン王国は反他種族主義国家だ、つまりセロリンとは真逆だな。人間のための国であると王自らが宣言している」

「なるほど」

「知りませんでした」とパールさん。


 受付に行って依頼の冊子を借りた。

 テーブルを囲み、3人で眺める。


「おすすめの依頼にしよう。馬車を借りこともそうだが、長旅で結構な額を使った」


 といってもそれはロードリーさんやパールさんに限定される。

 パールさんは元々赤狼戦で功績をあげなかったから報酬が少なかった。

 ロードリーさんは多い方だったが、ギルドでのパーティーで酒や飯に金を使い過ぎた。


 俺の場合【暴飲箱】の中にはまだ5000万Gある。

 まだ手を付けていない。

 家でも買わないと使い切れないくらいの金額だ。

 それ以外に財布の金がまだあるし、当分は手を付けることはないだろう。


「ん、妙なものを見つけたぞ」


 ロードリーさんが紙面を指さした。

 要項の欄には「重要人物の護衛と原因の調査・解明」とあった。

 ここ最近エリンギン全域で原因不明の病が流行っているらしい。重要人物を護衛しつつ、病の元を調査せよと書かれていた。


「マサオの助手がそのような話をしていたな、確か呪いだったか?」

「ここには病って書いてありまし、それとはまた違うんじゃないですか? それより、重要人物って誰のことですかね?」

「依頼の全容がよく分からん。だが推察するに、この病に関係のある人物じゃないか?」

「気になりますねー……」

「これにしましょうか」

「そうだな、これでいいだろう」

「お二人に任せます」


 俺たちは依頼を決めた。


 受付で申請すると、「重要人物が来られますので、それまで部屋でお待ちください」と特別室へと案内された。


「もう一組の方々は先にお待ちになっています」

「はい?」


 受付嬢の言っている意味が分からなかった。

 説明を求めると、どうもこれは合同依頼らしい。

 依頼書にもちゃんと書いてあったらしい。見てなかった。

 もう一組パーティーが加わるそうだ。俺たちと同じ3人組だという。


 案内された部屋の扉が開かれると、中には態度の悪そうな冒険者が三人いた。

 どうもソファーの座り方を知らないらしく、目つき最悪な若い男は背もたれの頂上にケツを乗せ、土足をソファーの上に置いていた。


 パールさんは「うわー、最悪ですぅ」と声を漏らした。


 もう一人は女だ。ソファーの上に土足を上げて寝転がっている。

 二人はペアルックのような金色の髪をしていた。


 そして最後は、不釣り合いな老人。

 受付嬢は一組と言っていた。ならばこの老人もこいつらのパーティーメンバーだろう。

 木の椅子に腰かけ大人しくしている。

 腰が曲がっているせいもあってか小さく見える。

 一瞬、俺の姿をばちっと見開いた片目で見ていたような気がしたが、気のせいだった。老人は目を瞑っていた。


「なんだよ、冒険者かよ」機嫌悪そうに男は言った。

 ロードリーさんが応戦する。「冒険者で悪かったな」


 男は鼻で笑い。


「俺はクレイ。そんでこいつはマドカ」

「マドカよ。よろしくー」


 二人はソファーを下り肩を組みあって仲良し感を見せつけてきた。

 意味がわからん。

 俺には「俺の女だから手ぇ出すなよ」的な意味を含んでいるのであろう若干の睨みをきかせた。

 意味がわからん。

 誰かそんな素行の悪そうな女を相手にするか。


 俺はわざわざ一歩前に出た。


「俺はシンクだ。こっちはロードリーさん、そしてパールさん」

「……あっそ」と男はガムをくちゃくちゃと噛む。

「あんたたちランクは? うちらは二人とも【B】だけど」


 俺たちは「【B】!?」と口をそろえて同時に驚いた。

 こんないかにも弱そうな連中が【B】なんてありえないだろう。

 それで思い出した。

 ランクはほぼ任意で不正に上げられるんだった。エルキンスさんが試験の時にそう言っていた。

 つまり簡単な話が、測定器が低ランクを示そうとと望めば試験を受けた数だけランクは必ず一つ上がる。

 もっと言えば試験官によっては権限内であれば自由にランクは上げることができる。

 もちろんランクに応じてノルマが伴うが。


「どうせこいつらはその類だろ」


 ロードリーさんが耳元で囁いた。


「でしょね」

「だと思います。弱そうですもん」


 俺たちはアイコンタクトで意思疎通した。


「私は【D+】だ。そしてこっちの二人は【F+】」


 それを聞いて案の定、絵に描いたように笑い始める二人。


「【F+】ってなんだ、新米じゃねえか! おいおい、この依頼のランク分かってんのか? 【A】だぞ?」

「大丈夫ぶぅー? 死んじゃうんじゃいの?」


 王都でせんど称えられた俺やロードリーさんは、正直称えられ慣れてしまった。

 パールさんはどうか知らんが。

 だからか、久しぶりに見下されて新鮮だった。それも下級の者に。

 こいつらと赤狼の女王とどっちが上かなんて問題にすらならないだろう。

 俺は前に出てにこっと笑った。


「いやーそうなんですよー、ホントすみませんねー。お二人のようなお強い冒険者さんと依頼を受けられるなんて幸せ者ですよ。もう大船に乗ったつもりで参加させてもらいます」

「何かあったときはお願いします」

 ロードリーさんの堂々としたお辞儀を見て、慌ててパールさんも「お、お願いします」とお辞儀する。


「まあ気にすんなって、俺たちがいりゃ依頼なんて楽勝だから。そっちの老人は喋んねえから話しかけても無駄だぞ。ギルドで一人寂しそうにしてたから連れてきた」

「ご老人のお名前は?」とロードリーさん。

「知る訳ねえだろ、喋んねえんだから」

「なるほど」


 俺たちは老人の前まで行き、「よろしくお願いします」とお辞儀した。

 老人は片目を空け、また閉じる。

 そして頭だけ下げた。眠っている訳ではないらしい。

 一瞬見えた目だが、妙に背筋の凍るような目つきだった。


「おーまたー!」


 と、そこで部屋の扉が開くなり、スキップしながらピエロ姿の男が入ってきた。

 肥満体形なピエロで、スキップのたびにはみ出た腹がぼよんぼよん揺れている。

 傍には白い服を着た女性が立っていた。見た顔だ。


「ん……シンク、あの女は確かマサオの」

「ユリちゃんですね」

「ってことは……」と頬が引き攣るパールさん。


 ピエロは俺たちに気付くと豪快を指を差し「あー、お前ら―!」と無駄にデカい声を出す。


 気が付くと冒険者の二人が共に「女神様!」と発しながら土下座していた。

 俺たちが突っ立っているのを見るなり「おい、なにやってんだ」と口をぱくぱくしている。


「そういうことや、お前らも俺に土下座せいっ」

「どういうことですか」


 俺は気真面目に聞いてやった。

 老人は静かに椅子に座ったままだ。


「てかその変な恰好は何ですか?」

「女神モードや。素顔晒す訳にいかへんなからなー」

「なるほど」

「土下座とは急に偉くなったものだな変態。私たちは貴様を女神だとは認めていない」

「そんなんどうでもええねん。おいそこの二人、いつまで土下座しとんねん」


 クレイとマドカは「はひっ!」と言って立ち上がった。

 老人がぴょんと椅子から下りる。


ミー(・・)の力を見ればユー(・・)たちも認めざるをえへん。ミー(・・)が紛れもない女神やっちゅうことになー」


「喋り方がキモイな」

「女神モードですよ」

「あ、なるほど」


 マサオはスキップを再開し、「それじゃあ依頼に行っくよぉー!」と口角をにっと上げ、女神をいうよりピエロを演じた。


「そこの3人、俺がこの格好で外に出るっちゅうことは女神が外に出るっちゅうことやからな、そのらへん頼むぞ? 不敬なことすんなよ?――ほいじゃあ行っくよぉー!」


 またキモイ笑顔を作り、マサオは助手と共に部屋を出て行く。


「お前ら、女神様とどういう関係だ?」

「マジで私、殺されるかと思ったんだから」


 どう答えようか迷っていると、老人が俺たちの間を歩いて部屋を出て行った。

 二人を無視し、俺たち3人も老人に続いた。

 背後で「ちょ、置いてくなよー」「無視すんなー!」と二人の声が聞こえた。

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