第1話
小さい頃、自分が大人になった姿を漠然と夢描いたとき、きっとバリバリ仕事をして、彼氏もいて、いつか素敵な家庭を築く順風満帆な人生をきっと送ると思っていた。
そんなことを思い描いていた私、成瀬佳奈25歳は、いまだに実家に居座り続け、彼氏もおらず、今やニートに片足突っ込みかけているという幼いころ描いていた自分の姿とは全く違う人生を送っていた。
「ちょっと佳奈ー!いつまで寝ているの?!いい加減起きなさい!!」
母に小言を言われながら、カーテンを開けられ布団をひっぺ替えされて起こされる。
「まだいいじゃん、あと少しだけ!」
「何言っているの!いくら今仕事していないからってきちんとした生活リズムで生活しなさいよ!」
「もぉ~わかったよ~」
母に朝から耳が痛いことを言われ、なんとなく罪悪感を感じながら体をベッドから起こし、自分の部屋からリビングへ移動した。
「朝ご飯できてるから食べてね、お母さんこれから出かけるから」
出かける準備がまだできていないのかバタバタとしながら母が言ってきた。
「そうなの?朝からどこに行くの?」
「美容室よ、ていうか朝からってもう10時前よ?時計ぐらい見なさいよ!」
そうなんだとリビングのソファに座りまだ寝ぼけた頭でいると、母は続けて私に言ってきた。
「あんたねぇ、もう退職して半年は経つんだから、いい加減次の仕事探したら?バイトでもいいからさ」
「・・・分かってるよそんなこと。仕事は探してるよ」
「そうなの?でもあんたほとんど外にも出てないじゃない」
「そうだけど・・・それよりお母さんまだ出なくて大丈夫なの?」
佳奈に言われ時計を見た母は、まずいと叫びバタバタと準備をしながら佳奈に言った。
「とにかく!これからどうするか考えときなさいよ!じゃ、いってきます」
「いってらっしゃ~い・・・」
ドタバタとして出て行った母を見送り、佳奈は溜息をつく。
自分の現状が最低であり、さすがにこれ以上お母さんに心配かけるのはまずいよなと感じながら、佳奈はリビングへ戻り母の作った朝ご飯を食べた。
夕方、母が帰ってきて一緒に夜ご飯の準備をしていると、母が突然佳奈に言ってきた。
「佳奈、バイト見つけたから明日から行きなさい」
「・・・え?」
佳奈の思考が一瞬停止し、夕飯の肉じゃがで使う野菜を洗っている手が止まっている。
「だからバイト!明日11時かららしいからよろしくね!場所は後でスマホに送るから!」
母はそういうと佳奈は止まっていた思考を再び動かし、反発をした。
「ちょっとまってよ!!なんで勝手に決めてるの?!ていうか明日っていくら何でも急すぎるでしょ!!」
「別にいいじゃない、別に予定も無いしどうせ暇なんでしょ?」
予定も無くどうせ暇と言われ、ぐうの音も出ない佳奈は、どうにか反論したく精一杯思考を巡らせて答えた。
「・・確かに何にもないけど!でも勝手に決めることないじゃん!!」
「何言ってるのよ!毎日毎日テレビやスマホばっか見てごろごろして、ほぼ引きこもりのような生活をしていて、おまけに一向に仕事探してる気配を感じなかったから、こっちからお願いして頼んできたのよ!」
やばい、自分の現状を口に出して言われたら結構来るな。母に言われた言葉に打ちのめされかけている時、佳奈は母の言った言葉に疑問を思った。
「頼んだって誰に?ていうか何のバイトなの?」
母は私の疑問を聞くと、話に食いついたのが嬉しかったのか上機嫌に話し出した。
「ほらお母さん今日美容室行ったでしょ?そこ私が昔ら行っている店でね、いつも担当してもらっている薫さんって方がいるんだけど、その人にあんたのこと相談したらいいバイトがあるから紹介しようか?って言ってくれてね~!」
ちょっとお母さん!!何で人にぺらぺら私のこと話してんのよ!!佳奈は、自分の堕落した生活を会ったこともない人に知られ若干の羞恥心を感じた。
「で、そのバイトなんだけど!薫さんの息子さんがちょうどバイトを探しているらしくてね~主に雑用や家政婦のようなことをすればいいらしいのよ!あんた家事は一通りできるし、しかもバイト代もかなりいいらしいのよ!どう?!いいと思わない?」
母の話を聞き、確かに悪い話ではなさそうだと感じたが、自分は一度も会ったことがない人からの紹介だし、正直話を聞くだけでバイトするつもりは無かった佳奈は、適当にこの場を収めて無かったことにしようとした。
「う~ん・・確かに内容的にも良さそうだけど、全然あったことない人だし・・・やめとこうかな~・・」
「何言ってるのよ、再就職しようがバイトしようが初対面にはなるでしょうが」
そりゃそうだわ。もっとましなこと言えばよかった!その場しのぎで言ったことがあまりにも適当すぎて自分の馬鹿が垣間見えたのとまたも母に正論を言われダブルでダメージを受けて何も言い返せずにいると続けて母が言ってきた。
「とにかく!明日行くことは確定しているから!!遅刻しないようにね」
母はいつもの笑顔で言ってきたが、その目は笑っていなく佳奈は、あ、これはもう逃げられないやつだなと諦めるしかなかった。




