ハーフ・ライフ・ラブ
女なら誰でも落とせるスキルでハーレムを築き上げた俺-ルカ・ハルフレイは、当然のように「死の呪い」をかけられた。
召喚された死神-ノノ・レーヴェは、銀髪でエメラルドの瞳をした泣き虫の落ちこぼれ。
彼女にできるのは「寿命を半分にする」ことだけ。
殺されるはずが、殺せない。
殺せないなら―俺が、残りの半分を全部使ってやる。
殺しに来た死神ノノと、最強魅了スキルのルカ。
寿命半分から始まる、ちょっと歪んだラブストーリー。
「ルカ・ハルフレイさん―寿命、半分にしますね……ごめんなさい」
薄暗い部屋に、銀色の髪がふわりと舞う。
召喚陣の中心に立っていたのは、明らかに場違いなほど小さな死神だった。
黒のローブはぶかぶかで、袖から覗く手は真っ白くて震えている。
握ってる鎌も、なんだかおもちゃみたいに小さい。
ルカは思わず声を上げた。
「……え、マジで? これで殺せるの?」
死神はびくっと肩を震わせて、涙目で俺を見上げた。
エメラルドグリーンの瞳が、うるうる光ってる。
「ご、ごめんなさい……私、これしかできないんです……!
上司に『ちゃんと殺してこい』って言われたのに……
私、いつも失敗しちゃって……っ」
泣きそうな顔で謝ってくる死神が、可愛すぎて死にそうだった。
―俺を殺しに来たはずなのに。
俺は思わず―ブチ切れた。
「は!?寿命半分???ふざけんな!!!返せ、今すぐ返せ!!!」
勢いよく立ち上がると、目の前のちっちゃい死神が「ひぃっ……!」と小さく悲鳴を上げて後ずさった。
鎌をがたがた震わせながら、涙目で俺を見上げる。
「ご、ごめんなさい……!返せないんです……!
一度発動しちゃったら、もう元に戻せなくて……!
ほんとにごめんなさい……っ!」
「返せない!?どういうことだよ!!
俺、聖女も魔王の娘も悪魔の公爵令嬢も全部落としてやっとハーレム完成させたのに!!
残り寿命半分とか、マジで最悪じゃんか!!!」
俺が一歩詰め寄ると、死神は尻もちついて泣き出した。
銀髪が床に広がり、エメラルドの瞳からぽろぽろ涙がこぼれる。
「うぅ……私だって、ちゃんと殺せる死神になりたかったのに……
同期はみんな『即死』とか『魂ごと消滅』とかカッコいい技持ってるのに……
私だけ『寿命半分』で……上司に怒られて……
だからせめて、ちゃんと殺してこいって言われて……!」
……は?
俺は急に冷静になった。
「待てよ。お前……俺を殺すために来たんだよな?」
死神はこくこくうなずく。
「でも殺せないんだよな?」
またこくこく。
「で、寿命半分にしただけで、もう手出しできない?」
「……はい。もう、私の仕事は終わりです……
あとは、あなたの残り半分の寿命を終えるのを待つだけ……ごめんなさい……」
俺はニヤリと笑った。
―チャンスじゃん。
「おい死神」
「は、はい……!?」
「お前、名前は?」
「え……ノノ、です……ノノ・レーヴェ……って言います……」
「よし、ノノ。これから俺の部下になれ」
「…………え?????」
俺は、驚いて固まっているノノに言った。
「どうせ、お前は死神としてこの先ロクな仕事はできない。
なら、俺の部下として使ってやる。
お前の才能を生かして、お前の仲間や上司を見返してやる方法をこれから考えてやる。ありがたく思え。」
ノノのエメラルドの瞳が、ぱちぱちと瞬いた。
涙が頬を伝って落ちる。
でも今度は、悲しみの涙じゃない。
「……ほ、本当に……?
私なんかが……役に立てる……?」
「当たり前だ。お前のスキル、俺が最強にしてみせる。
―残りの寿命半分、お前のために使い切ってやるよ」
ノノは小さく、でも確かに頷いた。
「……はい。
私……あなたについて行きます。
ごめんなさ……じゃなくて……ありがとう、ございます」
その瞬間、召喚陣の光が静かに消えていった。
俺を殺しに来たはずの死神は、
いつの間にか、俺の最初の―そして最強の―仲間になっていた。
第1話 完




