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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第97曲 共同戦線24時

 想像通りというか当然というか、翌日のニュースはまたしてもわたしと琴音ちゃんのことで持ちきりだった。


 なにせ現役のトップ歌手が芸能人でもないただの配信者のチャンネルで素顔をさらして堂々と出演したのだから。


 しかも相手はかつての子役時代の相方。


 昔の番組がテレビで取り上げられ、当時の映像が10年ぶりに視聴者の目に届くこととなった。


『ピーノちゃん』と『ポロンちゃん』、久しぶりに目にする姿は懐かしいと同時にどこか面映ゆい。


 琴音ちゃんの事務所としてはあくまでも幼馴染であるわたしのための友情出演ということで、なんら関与をしていないと表明。


 実際にギャラも発生していないし、幼馴染というのも間違いではないのでそう発表する以外になかったのだろう。


 かなり無理をした印象で、琴音ちゃんがごり押ししたのは明らかだ。


 ほんとに何やってんのさ、歌姫さん。


 もう年末だというのに特大の爆弾を落としていってくれたね。


 でもわたしは今回の案件はてっきり男女の仲としてスキャンダル視されるものだとばかり思っていた。だけど、どの報道を見ても10年来の美しい友情と言われていて、異性スキャンダルとして扱っているメディアはひとつもない。


 テレビで確かに婚約発言まで飛び出したのに、それについても友情を超えた親愛と表現されている。


 スキャンダルとして炎上しなかったのはいいことだし、うちにマスコミが殺到されても困るから好ましい状況ではあるんだけど、なんだか納得いかない面もある。


 どうにも異性同士と認識されていないような……。


 どこを見ても幼馴染、友情、親愛の文字しかなくて恋愛とか熱愛とか言った男女間の間柄を示す文言がないんだよねぇ。


 世間の人たちに問いたい。わたしを男と認識してる?



 そしてマスメディアでこれだけ騒がれるということは学校でももちろん話題になっているわけで。


「ゆきちゃんの家にあの岸川琴音が来てたってことだよね!?」


 文香さんのおっしゃる通りです、はい。


「なんで呼んでくれなかったのさ!」


 無茶言いなさんなよ、穂香さん。


 他のクラスメートからも「羨ましい」「今度会わせて」「サイン貰ってきて」など羨望の声をたくさん聴いていると今更ながらに大物歌手なんだなぁという実感がわいてくる。わたしの前ではけっこうアレなんだけどなぁ。


 コネを使って便宜を図るという行為が好きじゃないので、友達の要望にやんわりとお断りしていると文香がジト目でこちらを見ていることに気が付いた。


「ど、どうしたの文香。なんか顔が怖いよ。ほら笑ってー」


 それでもじっとわたしの事を見つめ続けたかと思ったら、おもむろに手を掴まれて群衆の中から引っ張り出された。


「ちょっと話があるからついてきて!」


 力強くずんずんと歩いていく文香に誰も何も言えず見送ることしかできないが、その中で穂香だけが「わたしもいく!」と言ってついてきた。


 連れてこられたのは廊下の端の扉を開けた先にある非常階段。


 なにこのヤンキーに呼び出されたかのような構図。今からリンチですか?


 そんなわけあるはずないんだけど、文香がふいに顔を近づけてきたのでビクッとしてしまった。


「ほんとーにただの幼馴染ってだけ!?」


 えっとさっきまでの会話からするに琴音ちゃんのことだよね。


「そうだよ。子役時代からのね。ポロンちゃんだってば」


 みんな同年代だからポロンちゃんだってすぐに気づくかと思ってた。わたしのことはすぐにピーノちゃんだって見破ったくせに。


「でもでも! テレビで婚約したとか言ってたし!」


 あーあれ見てたのね。わたしでも驚いたんだから、そりゃみんなも驚くわな。


「あれはわたしも驚いてるよ。まさかテレビでも言っちゃうなんて」


 穂香がピクリとした。どうした?


「テレビ()()? たしか婚約どうのこうのって話はゆきのチャンネルに出てくる前の話だったよね。それ以前に会ってて、しかもプロポーズはその時にされたってことかな?」


 うお! たった一言でそこまで見抜いてしまうとは、穂香名探偵! ってそんな呑気な事言ってる空気でもなさそう。


 2人でぐいぐい詰め寄ってくる。だから顔が近いんだってば、2人とも。


 ほんと女子って男子に比べたら距離感近いしボディタッチも平気な顔してするよね。


 そんなことを考えていたら文香に怒られた。


「ちょっとゆきちゃん、ちゃんと聞いてる!?」


 他の事考えてました。ごめんなさい。


「聞いてる聞いてる! 前にきらりさんとコラボしてた時にどこで知ったのか収録スタジオの前で待ち伏せされててね。それが10年ぶりの再会だったんだけど、その時に結婚しましょうって……。もちろんお断りしたよ? まだ結婚できる年齢でもないし」


「ゆきが男子でよかった。もうすぐ16歳だし、女子だったらそのまま強引に入籍されそうだ」


 いや、女子だったらそもそも婚姻関係が成り立たないのでは? 日本ではまだ同性結婚って認められてないよね?


 で、男子って再認識してもらえたならこの距離感をどうにかしてほしい。


「そっか、男子だから18歳までは結婚できないんだ。忘れてた」


 どっちを!? 男子は18歳からって方だよね!? わたしの性別じゃないよね?


「だから断ってるってば。まずはお友達からってことで、ね?」


「まずはってことはいずれ恋人関係に発展するってことか?」


 いちいち鋭いな、穂香。


「そういう意味じゃないってば。恋人作る気も全然ないし。きらりさんも聞いてたし嘘じゃないよ」


「きらりさんもその場に……」


 なにやら気が付いたような文香。きらりさんがいたことで何かあるのかな?


「そんな場面に出くわして、あのゆきちゃんラブなきらりさんが黙ってるとも思えないなぁ。ゆきちゃん、正直に全部白状した方が身のためだよ?」


 笑顔なのに笑顔じゃない! 何言ってるかわかんねーと思うが、笑顔の文香が怖いんだ!


 身の危険を感じるので洗いざらい話した方がよさそうだ。


「きらりさんも『それならわたしがお嫁さんになる』って言い出しちゃって……」


「「やっぱり」」


 2人とも予想してたのね。その通りです。


「でもちゃんと2人ともお断りしたんだからね? でもそのうちわたしの心を溶かしてみせるって2人とも息まいちゃって」


 ほんと、困ったもんだ。わたしは恋人も作る気なんてないのに。


 雪の精霊は人々を幸せにするために存在するのであって、不幸にするためじゃないんだよ。


「何を心配してるのか知らないけど、わたしは結婚はおろか誰とも恋人になる気すらないから。雪の精霊はみんなのための存在だからね」


 そう言ってぐいぐい来てた2人の体をそっと押し戻した。


 しばしジト目で見ていた2人だったけど、そのうちわたしのことを放置して密談を始めてしまった。おーい。



「あんなことを言ってるけど、これはピンチかもしれないな。どうせ文香もゆきのこと好きなんだろ?」


「わ、わたしは……うん、好き。()ってことは穂香ちゃんも?」


「わたしら付き合い長いからな。ずっとゆきを見続けてきたんだから好きになってもおかしくないでしょ?」


「その通りだね。てことはわたし達はライバルってことだ」


「でも敵は強大なのばっかりだからな、今はライバルというより同志かな」


「そうだね、国民的歌姫と人気Vtuber。おまけに姉妹たちもだもんね」


「やっぱり姉妹もそうだよなぁ。これはかなり手強いな。他にも公言してないだけで密かに想ってる女子はたくさんいそうだし、ここは手を組んでわたし達の方に目を向けさせないとだ」


「わかった。よろしくね、穂香ちゃん」


「こちらこそ」



 ようやく密談が終わったみたい。さっきまでの険しい表情とはうってかわって2人ともニコニコしながら戻ってきた。


 その豹変ぶりもなんだか怖いんだけど。


「決めたよ! これからいつ襲われるかもわからないゆきのために、一緒に下校することにした!」


 いきなりだな! 承諾なしに勝手に決めちゃう強引さは穂香らしいと言えばらしいけど。


「でもわたしと文香は生徒会でいつも遅くなっちゃうよ? 穂香って家のお手伝いをするために早く帰らないといけないんじゃなかったっけ」


 穂香の家は喫茶店をやっていて、お店の手伝いをするために部活にも入らずまっすぐ家に帰っていたのに。


「前から自分のやりたいことやれってうるさく言われてたんだ。これもいい機会だからわたしも生徒会の手伝いをする!」


 これまた唐突な宣言。生徒会長はわたしだから許可を与えるのもわたしなんだけど……。


「まさかダメなんて言わないよね?」


 人間って笑顔でここまで圧を加えられるもんなんだね。逆らえる雰囲気でもなさそう。


「はぁ。わかったよ。文香と同じ庶務ってことでいいかな」


「さすが生徒会長様! 話が早くて助かる!」


 なんかクラスメートを2人も入れたら職権乱用してるみたいで気が進まないんだけど、これだけやりたがってるんだから無碍にするのも可哀想だし。


 なにより実際に生徒会は慢性的な人手不足だったからここで穂香が入ってくれるのはありがたかったりもする。


 まぁ先輩方もわたしが気心の知れた人間を入れることに対して反対したりもしないだろう。

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― 新着の感想 ―
小説の年代がいつなのか不明ですが 2022年4月から男女供、結婚出来る最低年齢は18才だったはず。
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