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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第95曲 和解!かなぁ?

 配信が終わってリビングに戻ってきた。


 姉妹たちもしっかりと配信を見ていたようで、呆れたような顔で琴音ちゃんを見ている。


「おかえり。琴音、ゆきの配信に出ちゃって本当によかったのか?」


 より姉が心配して声をかける。あれだけ敵対視していたのにこういう時は本気で心配してあげる。それもより姉だけじゃない。


「琴音ちゃん、事務所に連絡した方がいいんじゃないの?」


「そうですよ。騒ぎが大きくなってからより先に報告しておいた方が対策も立てやすいでしょう」


「報連相、大事」


 姉妹それぞれが本気で心配して気づかいの言葉をかける。さすがわたしの4人の天使様たち。


 困っている人を見過ごすことのできない気質は全員に共通する素敵なところ。自慢の家族だ。


 琴音ちゃんも今まであれだけ邪険にされていたにもかかわらず、投げかけられた優しい言葉の数々に面食らっている様子。


 でも人の心がわからないような琴音ちゃんではない。


「みなさん、ご心配をおかけしました。ちゃんと事務所には出演前に報告してあるので後は会社がなんとかしてくれるかと。でも温かい言葉の数々、とてもありがたいです」


 そう言って深々と頭を下げる琴音ちゃん。


 それに対してどこかバツの悪そうな顔をする姉妹たち。


 きらりさんとも実は気が合いそうだし、この人たちの間に漂う緊迫した空気も元をたどればわたしのせいなんだよね。


 だからもっと仲が悪くなっていがみ合うようになるんじゃないかとか、そんな心配はまるでしていない。


 わたしがいなくなった後にみんなきっと仲良くなれるだろうから。


「そんな慈愛に満ちた目でわたし達を見つめて何を考えてるのかな?」


 琴音ちゃんが顔を覗き込んできた。


「みんなが仲良くしてくれたらわたしも嬉しいのになーって」


 悪戯っぽい笑顔でそう伝えると、頭をかきながらペロッと舌を出す琴音ちゃん。


「別にいがみ合ってるわけじゃないよ。ただみんなゆきちゃんのことを大好きすぎるだけなんだよ」


 ありがとう。気持ちは十分に伝わってきてるよ。


 わたしにはもったいないくらい素敵な人たちに囲まれて、こんなに大切に思ってもらえて。


「わたしのことが大事なんだったらもっと仲良くしてほしいんだけどな」


 みんなのことを見回しながら、思ったことをそのまま伝えた。みんなが警戒する必要なんてないんだよ。わたしは誰の物にもならないから。


「違うよ、ゆきちゃん。みんなはね、いつだってゆきちゃんの一番になりたいんだよ」


 ひより……。みんなもわたしに愛されたいってことだよね。


 わたしにとっての一番か。


「……一番も二番もないよ。みんなわたしにとってかけがえのない家族であって友人なんだから。

 そこに順番なんてないし、代わりになれる人だっていないんだよ。

 わたしはみんなを愛してる。なんたってわたしは『雪の精霊』なんだから!」


 ただの詭弁かもしれない。結論を出すことから逃げているように聞こえるかもしれない。


 だけど誰の人生も背負うことのできないわたしにできることは、みんなに変わらない愛を注ぎ続けることだけ。


「わたしは? わたしのことも愛してるって言えるの?」


 そんな不安そうな顔しないでも大丈夫だよ、きらりさん。


「もちろんだよ! みんな大好きだからね!」


 とびっきりの笑顔でこれ以上ないほどあふれる愛情を表現してみせる。ちゃんと伝わって欲しい。本当にみんなのことが大切なんだよ。


「これはわたし達の負けですね」


 かの姉がそう言いながら手の平を上に向け、やれやれといったジェスチャー。昨日見た洋画の影響かな?


「ゆきちゃんの一番になりたいのに、ゆきちゃんに嫌われるようなことしてちゃダメだよね」


 ひよりがぴょんと跳ねてわたしの手を握ってくる。かわいっ。


 まぁわたしがそう簡単に人を嫌うことなんてないんだけどね。人間の事が大好きな精霊さんだもん。


「だからね。みんなひとりひとりがわたしにとって一番でオンリーワンなんだから、心配しなくてもいいんだよ。誰かのものになったりだとか、恋人になったりとかしないから。いつもまでもわたしは『みんなのゆきちゃん』のままだよ」


 使い古された言葉でもそう言う以外にない。みんなそれぞれオンリーワン。


 だからわたしの命が燃え尽きるその日までわたしはわたしの目の届くところにいる人を守って見せる。


 中学卒業前のあの事件の時、固く誓ったんだ。もう二度と、誰一人としてこのみちゃんみたいな目に遭わせないって。それがわたしの使命であり、存在意義なんだ。


「まるで真のアイドル、もしくは神様みたいな発言だね。昔から言ってたもんね。『わたしは雪の精霊の生まれ変わり』だって」


 そうだよ。3歳の時のあの雪の日、わたしは天国に行くはずだった。でも神様に遣わされた雪の精霊がわたしの命をつないでくれた。今でもわたしの体にはあの精霊さんが宿っているんだ。


「わーったよ。ゆきを悲しませることはあたしらもしたくねー。これからは極力仲良くできるようにどうにか努力してみるよう頑張ってみる」


 うわぁ、なにそのすごい遠回しな表現。本当に仲良くする気ある?


「わたしだってゆきちゃんのご家族に嫌われたいわけじゃありませんから、仲良くしてもらえると嬉しいですよ。ね、みなさん」


 姉妹たちを見渡して笑顔で告げる琴音ちゃん。するときらりさんも慌てて手を挙げる。


「わたしも! わたしもゆきさんの家族の皆さんとは仲良くしたいですよ!」


 どうやらみんなわたしの言わんとすることを理解してくれたみたいでよかった。


 これで我が家で緊迫感溢れる空気の中過ごすことがなくなるだろうか。頼みますよ、ほんとに。


「ただし! ひとつだけ条件がある!」


 より姉が人差し指を突き出しながら声高に提示する。その条件ってなんだろう?


「ゆきに対する身体的接触は控えること! 特に配信中に抱き着いたりキスしたりなんかは論外だ!」


 あー。


 それはわたしもそうしてもらえると助かる。みんなちょくちょく忘れがちだけど、わたしも立派な思春期の男子だからね。


 あんまり異性にくっついたりされるといろいろ穏やかではいられなかったりするわけで。精神衛生上もそうしてもらえると助かります。


「えっとその件に関しては鋭意努力する方向で善処します」


 琴音ちゃん……。政治家もびっくりするくらいにあいまいかつやる気の感じられない言葉だよ。


 そんな言葉でより姉が納得するわけもなく。


「やっぱり琴音は出入り禁止にするか」


 自分もさっき同じような表現してたのは棚に上げてるけどね。


「あーうそうそ! 冗談ですってば! ちゃんと努力しますから!」


「あくまで努力かよ。まぁ今はそれで仕方ないということにしといてやるよ。」


 ようやく話はまとまったか。


 って時計を見てみたらけっこう遅い時間になってるじゃん! お風呂まだ入ってないよ!


「みんなもう時間も遅いしお風呂! みんなまとめて入れるんだから早く行ってきて!」


 姉妹と琴音ちゃん、きらりさん含めて6人だと多少は手狭になるかもだけど入れないというわけじゃない。明日は日曜だとはいえ、あんまり夜更かしするのも健康に良くない。


「あたしらは後でゆっくり入るからゆきが先に入ってきたらいいよ。汗もかいてるだろ」


 確かにダンスを踊った分だけ一緒に出演した2人よりは汗をかいている。でもわたし長風呂になっちゃうから。


「今日はみんなで入ることになるし、裸の付き合いでじっくり語り合うんだよ。つべこべ言ってるとゆきも引きずっていくぞ」


 それだけは勘弁してください。


「わ、わかったってば。それじゃ、先にお風呂いただいてくるねー」


 いったん部屋まで着替えを取りに行き、そのままお風呂場へ直行するわたしをみんなが笑顔で見送ってくれた。

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