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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第94曲 大ニュース重ね盛り

 ほどなくして、本当にびっくりするくらいの速さでうちに到着したきらりさん。タクシーを捕まえてぶっ飛ばしてきたとか言ってるけど、どんな無茶を言って来たのやら……。タクシーの運転手さんが可哀想だ。


 そしてうちに着くなり琴音ちゃんに噛みついていった。


「ちょっと! ゆきさんのお嫁さんの座はわたしのもんなんだからね! 後から出てきて勝手なこと言わないでくれるかな?」


 威嚇しながら顔を近づけるきらりさんに対して琴音ちゃんは余裕の表情。てかきらりさんまでお嫁さん宣言しちゃったよ。


「後から出てきたのはそちらですよ。わたしはゆきちゃんがまだこんなに小さいころから大好きだったんですから」


 膝くらいのところに手をかざして主張する琴音ちゃん。いや、そんなに小さくねーよ。どこの小人だ。


 両者一歩も譲らずの状態でにらみ合っている中、姉妹たちは少し離れたところで秘密会談を行っていた。


「おい、なんか増えちまったぞ。どーするこいつら」


「塩でもまいて追い出しますか」


「賛成」


「ゆきちゃんの友達に乱暴なことしちゃダメだってば!」


 丸聞こえだよ、4人とも。


 だんだん収集がつかなくなってきたような気がする。このカオスな状況をどうしたらいいんだ……。


「あのーみんな好き勝手なこと言ってるけどさ。わたしは何も了承してないんだよ?」


「「ちょっと黙ってて!」」


 いやおかしい! それはおかしいよ2人とも! 本人不在で勝手に話を進めないで!?


 なんだこの理不尽な状況は。


「2人とも勝手なこと言ってると今すぐ帰ってもらうよー」


 最終手段。姉妹たちの手を煩わせるわけにもいかないし、わたしが追い出すしかないだろう。


「「イヤだ!」」


 息ピッタリじゃん。本当は仲いいんじゃないの?


「今日はゆきちゃんのおうちに泊まるつもりでお泊りセットも持ってきてるんだよ!」


 また勝手に決めて……。


「そう言うだろうと思ってわたしもお泊りセット持ってきましたー」


 きらりさんまで。そんな勝ち誇ったような顔されてもね。


 2人にはスタジオで仲良く眠ってもらおう。うちに客室はないし。布団もソファーもあるから仲良くしなよ。


 それよりもこの不毛なやりとりを収めないとね。


「とりあえず晩御飯作るから。2人とも食べていくでしょ?」


 こういう時は食べ物で釣るに限る。


「「食べるー!」」


 ほんと仲いいな。もうユニット組んじゃえよ。


 今日もきらりさんが料理を手伝ってくれたので、ひとまず喧騒は収まった。


 琴音ちゃんは料理の方はさっぱりとのこと。きらりさんはわたしの横でしっかりとドヤ顔をして勝ち誇ってたけど。


 不毛なマウント合戦やめなさい。


 姉妹たちもこれ以上争うのは無駄だと思ったのか放置することに決めたらしい。当の本人のわたしがあしらってるんだからみんなはそれでいいんだよ。


 やがて料理も出来上がってみんなで仲良く「いただきます」


 いつも通りわたしの料理は大好評で作ったこちらも大満足。


 美味しいものを食べてるときに争おうとする人なんていないもんね。


 食事が終わるといよいよ配信の時間が迫ってくる。


「きらりさんも折角来たんだし、コラボ配信やってく? 緊急案件だけど」


「もちろん! そう思ってタクシーの中でコラボの告知はしておいたよ」


 相変わらずそういう行動力はすごいな。またわたしだけギリギリ告知になっちゃったじゃん。


「あ! わたしも出たい!」


 何言ってんの。日本の歌姫が一配信者のチャンネルに出るとか聞いたことねーわ。


「琴音ちゃんは見学。今出てきたらまた大騒ぎになっちゃうでしょ」


 ぴしゃりと言い切ると不服そうに唇を尖らせてはいたけど、それ以上は文句を言ってくることはなかった。


 まぁ大物歌手なんだしさすがにそのへんの分別は(わきま)えてるだろう。



 スタジオに下りていくと琴音ちゃんが感嘆の声を上げた。


「すごーい。自宅にこんな設備つくっちゃうなんてさすがゆきちゃんだね。そっかーここでいつも配信してるんだね」


 物珍しそうにきょろきょろと辺りを見回している。なんかちょっと子供っぽくてかわいいな。


 にこやかに琴音ちゃんを眺めていると隣できらりさんがジト目をしていた。


「今ちょっと子供っぽくてかわいいなとか思ってたでしょ」


 なんでみんなナチュラルに人の思考を読んでくるかな。やめてくれない?


「思ってないよ! さ、きらりさんはキャプチャつけたり準備がいるんだから早く用意して」


 きらりさんが自分の準備をしている間にわたしも配信の準備をする。その作業を肩越しに眺めてくる琴音ちゃん。見るのはいいけど顎を肩に乗せるのはやめなさい。ほらまたきらりさんが睨んでるから。


 準備が整い、自分のチャンネルを確認してみると登録者が630万人に激増していた。さすが歌姫。影響力も半端ないな。


 もうこれくらいのことでは驚かなくなってしまった自分が怖い。今まで何かあるたびに100万人単位で増えたりとかしてきたからなぁ。それだけの人に支持されて嬉しいのは変わらないけどね。


 そして配信が始まると案の定、琴音ちゃんに関する質問が相次いでそれをきらりさんと一緒に面白おかしくネタにしながら誤解を解いていった。


【なんだそういうことか】【幼馴染って感じだね】【てっきりもう付き合ってるのかと思ったよ】


「ないない! わたしが誰かと恋愛するなんてまだまだ考えられないよー」


「そうだよ! ゆきさんはわたしのものー」


 そう言って腕を組んでくるきらりさん。ちょっと、琴音ちゃんも見てること忘れてない? それともわざとか。


【あれ、他に誰かいる?】【今ちらっと人影が】【確かに誰かいたよね】


 まさか! 慌てて琴音ちゃんの方を向くのと、琴音ちゃんがカメラの射角に入ってくるのがほぼ同時だった。


「みんなこんばんわー! ゆきちゃんの婚約者予定の岸川琴音です!」


 そう言ってかわいく横向きピースサイン、いわゆるミニモニポーズ。


 やられた……。


 やけに大人しく引き下がったと思ったらこの機会を狙っていたのか、それともきらりさんと楽しく配信をしているのが羨ましくて我慢できなくなったのか。たぶん両方だな。


 どちらにしてもあの日本の歌姫がただの配信者でしかないわたしのチャンネルに急遽登場してしまったのはもう覆しようがない。


 しかも婚約者疑惑がささやかれている現状、さっきまでの弁明でどうにか沈静化したと思った時点での登場だ。


 本当に狙ってやったとしか思えない。自分も無傷ではいられないのに、何考えてるのこの人。


 当然のごとくコメント欄は大荒れ。きらりさんはついていけなくて目を回してる。


 わたしはなんとか追えてはいるけど、さてこの状況をどう収めようか思案中。


 きらりさんとわたしが黙ってる間に琴音ちゃんは勝手にコミュニケーション取ってるし。テレビにも出てるんだし、この程度の配信なんてお手の物か。


「こーとーねーちゃーん」


 低い声を出して琴音ちゃんに呼びかけると少しビクッとした後、ゆっくりこちらを見た。


「ごめんね! どうしても我慢できなくなっちゃって。てへぺろ」


 それもう古いんじゃないの? でも琴音ちゃんがやると可愛いのがなんか腹立たしい。


 自分がやったことの意味をわかってるのかね、この子は。


「まったく。ただの配信者でしかないわたしと共演なんかして事務所の方とか大丈夫なの? 怒られない?」


 仕事がなくなったとか言われたら目も当てられない。琴音ちゃんのことだからある程度はちゃんと計算の内だとは思うんだけど。


「自分のことよりもわたしの事を心配してくれるゆきちゃん優しい! やっぱり大好きー!」


【本物の岸川琴音だよね?】【なんかキャラ違う】【もっとクールな人かと思ってた】【なんか普通の女の子って感じ】


 そうなんだよね。テレビで見る岸川琴音はどちらかというと感情をあまり出さないクール系。今の無邪気な琴音ちゃんとは全然違う。


「ゆきちゃんの前ではわたしもただの恋する乙女になっちゃうんだよー。それと事務所の方はさっき電話したから大丈夫!」


 いつの間に。ていうか電話一本でOK出るものか?


「許可をもらうっていうより、今からゆきちゃんのチャンネルに出ますーって報告しただけなんだけどね」


 やっぱりか。それはもう事後報告と変わらないよ。


 でももうこうなってしまっては腹を括るしかない。きらりさんはまだ呆気に取られてるけど。


 そろそろ帰ってこーい。


「はっ! ちょっと岸川さん!? なに勝手に乱入してきてんの!」


 帰ってきた。


「だって2人で楽しそうにしてるんだもん。仲間外れはやだよー」


「仲間外れとかそういう問題じゃ……!」


「まぁまぁきらりさん、もう出てしまったものは仕方ないし」


 とりあえずきらりさんをなだめて、ここからどうするかだな。仕方ない、琴音ちゃんには悪いけど事実を言うしかないか。


「えっとリスナーさん達ー! ちょっと落ち着いて聞いてね。確かに琴音ちゃんから結婚しようって言われたのは事実だけど、わたしはまだ全然結婚とか考えてないから! 恋愛もまだしたことないしねー」


 ここでもう一度わたしにそんな気がないことをハッキリさせておかないとね。


 でもそんなことでへこたれる琴音ちゃんではない。芸能界で揉まれてきただけのことはありやがる。


「そんなに結論を焦らなくても大丈夫だよ。ゆっくり2人の愛を育んでいこ?」


 諦めるという言葉はどうやら辞書にないらしい。


「ちょっと何勝手に決めてんのさ! ゆきさんと愛を育むのはわたし!」


 きらりさんも参戦しちゃったよ。


「だーかーらー! わたしは恋愛なんてできないんだってば!」


「ん? できないってどういうこと?」


 しまった。言い間違えた。琴音ちゃんも細かいことに気が付くなぁ。


「そうだね。する気がないって言ってたのに。できないって何かあるの?」


 きらりさんも。


 でも今はまだそのことを話すわけにはいかないんだよ。


「ただの言い間違い! でも本当にまだ恋愛する気なんてないから、2人ともこれからもいい友達でいてくれると嬉しいな」


 必殺上目遣いでの潤んだ瞳!


「くっ。そんな顔をされたら逆らえない……」


 よし、琴音ちゃんには効果が抜群だ。


「あーんかわいい! ゆきさんお持ち帰りしたいー」


 きらりさんは変なスイッチ入っちゃったかな?


「2人とも分かってくれたものとしとくね。それじゃ、そろそろ時間もなくなってきたし、歌の方に行きたいんだけどさすがに琴音ちゃんは唄うわけにはいかないよね?」


 いくら歌姫として特別扱いをされているとはいえ、これ以上スキャンダルネタを増やすわけにもいかないだろう。


「さすがに歌は遠慮しておくよ。2人で唄うの羨ましいけど今日のところは黙って見てるね」


 よかった。ここでごねられたらどうしようかと思ったよ。


 そしてわたしときらりさんはマイクを持って2人で唄い、波乱に満ちた今週の配信はなんとか終わらせることができた。


 はぁ。これからどうなっちゃうんだろ。

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