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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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93/119

第93曲 トップニュースになっちゃった

 より姉のストーカー騒動から数日後、わたし達は忙しいながらも平和な日々を送っていた。


 今日も夕飯を食べた後、みんなでのんびりとテレビを見ていた。


 わたしの要望を聞いてくれて画面には歌番組が映っている。うちではチャンネル争いというものは起こらない。


 誰かが見たいと言った番組をみんな文句も言わず一緒に楽しく見ることができるから。もし被ったときは録画をすればいいだけ。


 ほとんどの場合、ひよりが見たいものを主張してそれに決まることが多いのだけど歌番組だけはわたしの意見をみんなが尊重してくれる。仮にもプロだし、これでお金を稼いでいるわけだから常に新しい情報をインプットすることを忘れてはいけない、そのことをみんな理解してくれているから。


 今日の歌番組には先日10年ぶりに再会した岸川琴音ちゃんが出演している。


 あれからも何度か遊びに来ているのですっかりみんな見知った仲なのだけど、彼女に対してはみんな警戒心を隠そうともしていない。


 やっぱり婚約とかの話をしたからだろうけど……。


 琴音ちゃんには悪いけど、わたしは誰かと結婚するとかそういった考えは全くない。それどころか恋愛すらしようと思わないのだから。


 画面の中では持ち歌を唄い終わった琴音ちゃんが司会者と楽しそうにトークをしている。


『岸川さんはもうすっかり日本の歌姫として定着していますが、今後の目標などはあったりするんですか?』


 司会者の問いに対して笑顔を浮かべて答える琴音ちゃん。話している最中だというのになぜかカメラ目線で。


『もちろんあります。わたしの師匠ともいえる人を超えた歌唱力を身に着けることですね』


 へえ。わたしが引退してから琴音ちゃんにはそんな存在ができてたんだ。これだけの歌唱力を身に着けることができたんだからよっぽど優秀な師匠に教えてもらったんだろうな。司会者も興味をひかれたようでさらに質問を続けた。


『初耳ですね、岸川さんにそんな存在がいたなんて。有名な方なんですか?』


 たよね。わたしも初耳だ。いったいどんな人なんだろうな。


 他人事のように聞いていたので次に琴音ちゃんが発した言葉の意味を咄嗟に理解することができなかった。


『みなさんご存じ、かつて子役として一世を風靡した『ピーノちゃん』です。今は『雪の精霊YUKI』と名乗って配信者をしていますね』


 へえ。わたしと同じ配信者なんだね。でも雪の精霊YUKIってどこかで聞いたことあるような……。


 ……ってわたしやんけ!


 ちょっとこの人全国放送でなんてこと言ってくれちゃってるの!?


『ちょっと驚きの発言を聞いているような気が。ピーノちゃん流行りましたよね。でも岸川さんとどんな関係が?』


 さらに司会者がつっこんで質問を続ける。なんかそれ以上しゃべらせるとマズイような気がするんだけど。


『みなさんご存じありませんけど、『ピーノちゃん』の相方の『ポロンちゃん』が小さいころのわたしなんですよ。その頃からあの人はわたしの目標なんです』


 とうとう自分が売れない子役をやってたことまで暴露しちゃった。岸川琴音のブランドイメージに傷がつかなきゃいいけど。


 司会者もその事実を知らなかったようで驚いている。


『岸川さんにそんな過去があったなんて驚きです! 日本の歌姫に目標とされるとはいったいどんな人なんでしょうね』


 もうその話をそれ以上広げないでほしい。嫌な予感がどんどん膨らんでいく。


『昔から可愛かったから世間ではすっかり女の子だと思われているようですけど、立派な男の子なんですよ。

 でも男の子とは思えないくらい人智を超えた美しい容姿に並ぶ者のないダンスパフォーマンス。

 そして今の日本で間違いなくナンバーワンと言える歌唱力を誇っている大人気配信者ですよ。

 彼を知らないなんて情報収集が足りていませんね』


 まるで自分の事のように誇らしく語ってくれるのは嬉しいんだけど、あんまり大げさに言うのはやめてほしい。


 まだまだ彼女の礼賛は止まらない。


『一度聴いたら絶対に虜になってしまうあの歌唱力は今のわたしではまだまだ追いつけません。でもいつかあの歌声を超えてみせます。そして彼を超えたあかつきには……』


『あかつきには?』


 それ以上言ってはいけない気がする!


『わたしをお嫁さんに貰ってもらうんです!』


 ……。


 あぁ。言っちゃったよあの人。再会した時からずいぶん強引だったけど、昔からあんなに押しが強かったっけ……。


 でもまさか公開プロポーズまでしちゃうなんて。


 歌番組での発言とはいえ、日本の歌姫の爆弾発言だからトップニュースになるんじゃないの、コレ。


「何言ってんだこの女」


 ビクゥ!何この殺気……。


 恐る恐る隣を見てみるとより姉から尋常じゃない殺気を感じる。というか姉妹全員から怒りのオーラが立ち上ってる。


「あの、みんな? わたしは何も了承してないし、琴音ちゃんが勝手に言ってることだから、ね?」


 恐る恐る弁明をしてみた。なんでわたしが弁明しないといけないのか分からないけど。


「明日のニュースを見てもそんな他人事みたいに言ってられますかねぇ」


 いつも穏やかなかの姉の言葉が怖い……。


 確かに明日には芸能ニュースがものすごいことになってるだろうことは間違いないだろうけど。


 しかもよりによって明日は配信の日だ。きっと質問攻めにあうだろうことも容易に想像がつく。


 ほんと全国メディアでなんてこと宣言してくれちゃったのさ、琴音ちゃん……。



 翌日、新聞では号外が発行されるほどの騒ぎになり、お昼のワイドショーではどのチャンネルに変えても琴音ちゃんの衝撃発言の話題で持ちきりだった。


 挙句の果てには噂の相手ということで、チャンネルから切り取ったであろうわたしの画像まで公開される始末。


 肖像権の問題もあるから目線を入れていたけど。なんかの容疑者みたいだ。これはこれでイヤだな。


 どのチャンネルに変えてもこの話題ばっかりだから、みんなも機嫌悪いしさ……。


 どうしてわたしがこんな針のむしろ状態にならなければいけないのか。


 わたし何にもしていない!


 そんなピリピリとした空気を破るかのようにインターホンの音が鳴り響いた。


 まさか。嘘でしょ……。


 インターホンのカメラを確認してみると嫌な予感が的中。そこに映っているのは琴音ちゃんだった。


 台風がピンポイントで襲来したよ……。


「ゆきちゃーん! 会いたかったよー!」


 玄関を開けるなり飛びついてくる琴音ちゃん。これだけの騒ぎになってるのによくここまで無事にたどり着けたなと思って見てみると帽子にメガネをかけて変装をしている。


 えーそれでいけたの!?


 わたしの時はあっという間にバレたのに……。


「あんまりやり過ぎると逆に目立つからね。これくらいの変装してればバレないよ」


 あのヘボ探偵と同じこと言ってる。いや、実際に琴音ちゃんはこれで通用してるからそこまでヘボでもないのか。ごめんよ名探偵。


 それよりもうちの姉妹のことは琴音ちゃんも知ってるのに、よく昨日の今日でうちへ来る気になれたな。


 案の定リビングに琴音ちゃんを案内した途端に厳しい視線を向けられてる。本人は気にした様子もないのがすごい。心臓に毛でも生えてるのかな。


「なに和んでるんだよ。昨日の歌番組での発言、ありゃ何のつもりだ?」


 より姉が琴音ちゃんに詰め寄る。琴音ちゃんはニコニコしながらその勢いを受け流しているけど。ここらへんはさすが大物と言ったところか。


「何のつもりもなにも、以前からゆきちゃんにお嫁に貰ってほしいとお願いしてるのは依子お姉さんも知ってるじゃないですか」


 確かに前回来た時にそんなことも言ってたね。(第84曲参照)


 でもちゃんとお断りしたはずなんだけど。


「一度断られたくらいで諦めるわたしじゃないよ」


 そう言ってウィンクをしてくる琴音ちゃん。思考を読むのはやめて。でもさすが日本の歌姫。ウィンクがばっちりさまになっていて思わずドキリとしてしまった。


「そういう問題じゃねー! あんな全国放送の場で公開プロポーズみたいな事したらゆきに迷惑がかかるとか考えなかったのか!?」


 ご立腹のより姉。わたしの立場を思いやって怒ってくれてるんだ。こんな場面であれだけど、なんか嬉しい。


「もちろん、あの後の取材にまだ片思いでオッケーはもらっていないことはちゃんと伝えていますよ。どうしても心配だというなら記者会見を開くのもやぶさかではありません」


 堂々と言い切る琴音ちゃん。にらみ合う両者。


 どうしてわたしの周りってこんなに騒がしいことばかり起きるんだろう。


 諦観の心境で両者のことを見ているとわたしのスマホが鳴り出した。


 もしかして……。


 予感的中。着信画面に表示されているのは『彩坂きらり』という名前。きっとニュースを見てかけてきたんだろうなぁ。


『もしもし、ゆきさん? 大丈夫? 家に記者とか押し寄せてきたりしてない!?』


「ありがとう、きらりさん。住所を公開してるわけじゃないから何も来てないよ。ただ……」


 言い淀んでいるときらりさんも察したようだ。


『岸川琴音が来てるのね!? わかった! わたしも今から行くから!』


 えー! きらりさんも来るの!?


 わたしは一体どうなってしまうんだろうか……。

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