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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第1章 充電期間

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第9曲 新星誕生

 昨日の夜、みんなから少し回りくどく、かつそれ以上に温かい励ましをもらったおかげで、配信当日の昼間は何も気負うことなく過ごすことができた。


 気合を入れて作った晩御飯も会心の出来で幸先も良好。万全の状態で配信時間を迎えることができた。


 モーションキャプチャーとヘッドセットを装着してカメラの前で待機、あと数分で生配信が始まる。


 子役もやっていたし、カメラの前に立つことには慣れているとはいえ、今回は素性を隠してのデビュー。


 星の数ほど生まれては注目されず消えていく人も多いVtuberという世界で、ダンスパフォーマンスメインとジャンルまで絞ってしまってハードルはさらに上がっている。


 努力を重ねてきたという自信はあるけど、結局音楽の世界は感性の世界。


 わたしの感性が今の日本の人々に好印象で受け止めてもらえるのか、不安がないといえば噓になる。


 だけどわたしは自分の大好きな歌とダンスを通して人々に元気と幸せを届けるという道を自分で選んだ。そのための努力は惜しんでいない。


 勉強に勉強を重ねて知識だけは誰にも負けないほど持っていると思うけど、その知識のかけらを組み立てて世間に認めてもらえるような楽曲を作るのはわたしのセンスだ。


 特に気合を入れて作りこんだデビュー曲はまだ姉妹たちにも聞かせたことはないけど、自分で納得がいくだけのものは作り上げることができた。あとは聞いてもらって評価をもらうだけ。


 いよいよ配信の時間がやってきた。軽く深呼吸して配信を開始する。



「みんなこんばんわ! 雪の精霊がみんなに歌声をお届けするよ! 二日ぶりのYUKIですが待っていてくれたかな? 今日デビュー曲を披露するってことでYUKIは少し緊張しております」


 声震えてないかな、大丈夫か。

【がんばって】【楽しみに待ってた】など多数の応援コメントが並ぶのを見て安心すると同時に、この期待を裏切りたくないと気が引き締まる。


「登録者千人超えてるのも多いなと思ったけど、同時接続も400人って多くない? 半分近くの人がリアルタイムで見てくれてるんだよね? でも初配信が千人記念にもなるなんて、みんなありがとね!」


 最初の配信からたくさんの人に聴いてもらえるのは素直に嬉しい。


【声もかわいいし期待値高い】といろんな人から期待されているのを見るとさらに気合が入るというものだ。


 そのうえ【キリさんがあちこちで宣伝してたよ】というコメントもちらほらあって感激してしまった。生みの親が一番応援してくれているというのはとてもありがたい。


「わぁ、キリママにはお世話になりっぱなしだぁ。感謝の言葉もないよ~」


 とコメントを返すと【日向キリ:好きでやってることだから気にしないで】と即座にレスが返ってきた。


「今日も来てくれてたんだね! キリママありがと!」


【日向キリ:YUKIちゃんの生配信見るためなら気合で仕事終わらせる】

 わたしの配信見るためにそこまで頑張ってくれるのね。いつか何かの形でお礼をしたいな。


【キリママガチ勢w】

 わたしのチャンネルでよくコメントしてくれるから他のリスナーからこうやっていじられることも増えてきた。


 とってもいい人だから、人柄の面でも人気が出てほしいって思うな。


 けっこうな勢いで流れていくコメントの中で気になるものを見つけた。

【YUKIちゃんの歌は期待できるってSNSでも評判よかったよ】ってなんで?


「え? わたし日本に帰ってきてから公の場で歌を披露したことないんだけど、どこ情報それ?」


【ソースは不明。でも前評判めちゃよかった】【めっちゃ期待してるよ!】【楽しみすぎて夜しか眠れませんでした!】と正体不明の前評判があって余計に期待値があがってるとのこと。


「いい感じでプレッシャーかけてくるねぇ。夜はぐっすり寝られたようで何より! 寝不足はお肌の大敵だよー! さて、なぜか私への期待値が勝手に高まっているようなので、早速歌の方に行ってみようかと思いまっす!」


【いよいよか~】【日向キリ:楽しんでね!】

 みんなわたしの歌声をしっかり聴いて、ダンスも良く見てね!


 しっかりと映るようパソコンを置いてあるデスクから離れて全体像が収まる位置まで下がる。


 神経を集中して歌のイメージを頭に思い浮かべ、感情を込めて歌えるように自分の世界に入り込む。


「じゃあYUKIのデビュー曲『SNOW FAIRY』聞いてください!」


 曲が始まるのに合わせて体が動き出す。


 前奏が終わって曲に入ると自然に声が出る。


 伝えたい。


 歌い、踊り、雪のような静けさで世界に幸せと元気を届け、吹雪のように荒々しく悲しみや憂鬱を吹き飛ばすわたしは雪の精霊。


 わたしの声を聴いてほしい。


 あなたの心にまでわたしの歌声が響きますように。


 アメリカで一度つまづいてから今までずっと努力をしてきた。社交ダンスからストリークミュージックなどのあらゆる種類のダンスはもちろん、日本舞踊まで踊りと名の付くものは目につく限り勉強した。


 体に力が入って声がブレるのを抑えるコツ。激しい動きでも力を入れずにスムーズに体を動かす一方でしっかりした発声も両立させられるよう、踊りのタイミングに合わせて声を出す腹式呼吸のやり方やブレスの入れ方の研究もしてきた。


 わたしが伝えたいことを声と体に乗せて全部表現するために、与えられた才能だけに頼らず何度も失敗を重ねて試行錯誤を繰り返し、汗をかいて磨き上げてきたわたしのパフォーマンス。


 積み重ねてきた努力と歌に込めた思いで一人でも多くの人の心を震わせることができたなら、今までの努力も報われる。


 わたしの持てる力をすべて込めて最後まで歌い切る。


 届けわたしの歌声!


 短いアウトロが終わってダンスも終わり、最後の決めポーズのまま数秒。姿勢を戻して深々とお辞儀して顔を上げる。やりきった感のあるいい笑顔になっていると思う。


 パソコンの前に戻ってきてコメントを確認してみると、賞賛の嵐でログがとんでもない勢いで流れていた。感動した、胸に響いた、聞いてたら涙が出てきた等々およそ絶賛といっていい文言ばかりが並んでいる。


 よかった、わたしの歌は通用する! 嬉しくて涙が出そうになったけどそこはグッとこらえてまずはリスナーさんたちにお礼を。


「みんな最後まで聞いてくれてありがとう!

 まだまだひよっ子のつたない歌だからこんなに褒められるとは思っていなかったので、今みんなのコメントを見て感激してます!

 本当は歌う前、なんだこんなもんかって言われるかもっていう不安もあったんだ。

 でもコメントのひとつひとつがすごく心に響いてなんだか泣いてしまいそう!

 これからもみんなの応援に応えられるように精いっぱい歌い続けるから、見放さないでずっと応援していて欲しいな!」


 熱心に応援して推してくれるコメントも目立った。

【最推し決定】【毎週の生配信が楽しみ】【日向キリ:やっぱりわたしの目に狂いはなかった。号泣中】

 キリママ本当に号泣してそう。


 次に目立ったのは歌唱力に関して。

【レベルが高すぎてそこらへんのプロより上手いと思ったし】【歌のテクニックもすごかったけど、何より心を込めて歌ってるのがすぐにわかったし、それを表現する声量にも圧倒されて鳥肌たった】

 昔に比べて自分でもレベルが上がった実感はあったけど、ここまで絶賛されるほど向上してたとは自分でも嬉しい驚きだ。


 それからこんなコメントも素直に嬉しかった。

【最初の曲からYUKIちゃんを応援できるのって幸せもんだわ!】

 このまま最後まで応援してくれたらもっと嬉しいです。


「みんなほんとにありがとね! ずっと歌とダンスの勉強してきて曲のストックはまだまだあるから、しばらくは毎週新曲をお届けできるのでぜひ聞きに来てください!」


【もちろん!】【さっそくアラームセットしたぜ】

 リスナーさんの土曜夜の予定も埋まったみたい。


「それとおとといの告知の時にも予告していたんだけど、歌の後にとても大切なお知らせがあるって言ってたの覚えてる?」


【そういえば言ってたな】【なに?】【じつは本当にプロだったとか?】

 何をいいだすのかとみんな興味を抱いてくれている。もし裏切られたと感じてしまったらごめんなさい。


「そんなんじゃなくてね。たぶん今日ここに来ている人はキリママ以外全員勘違いしてると思うんだけど、みんなわたしのこと女の子だと思ってるでしょ」


【え……】【そんなまさか】【その声で?】【日向キリ:実物見たわたしでも信じられない】

 前置きだけでみんなある程度は察したようでいろんな反応があるけど、共通してるのはまさかって思いがコメントにも表れてるところ。


「そのまさかでYUKIの中の人はれっきとした男の子なんです! 髪も伸ばしてるし、見た目でも女の子って思われるんだけどちゃんと生物学上のオスに分類される生き物です!」


 コメント欄にはしばらくえ~~~の文字だけが流れていった。声だけでもそんなに女の子っぽいのかな?


「もう中二だからね、そろそろ声変わりもしてるはずで子供の頃よりも低い声は出しやすくなった気がしてるけど、相変わらずハイトーンどころかホイッスルボイスまで出るし、喉仏が出てくる気配もないし、わたしの第二次性徴はどうなってるんでしょうねぇ」


【そんな他人事みたいに】

 もう長年付き合ってきた我が体だけど、男の子らしい変化は全くなくて諦めムードなわたしにとってはほんとに他人事みたいな感覚だから仕方ない。


「身長も全然伸びてくれないし、体型も男らしくないし半分諦めてるからなぁ。今から筋肉ムキムキマッチョとかどうやっても不可能だろうし」


【体型とな。ちなみにスリーサイズは聞いても?】

 女の子相手だったらセクハラ扱いだけど、わたしは男だからその心配はなくてよかったね。


「女の子じゃないから大丈夫! 身長は153cmで上から79、51、77だよ」


【ちっちゃ!】【いや女の子やん】【めちゃくちゃスレンダー】【わたしより細い……】

 言われなくてもわかってますよ、およそ男の子には思えない体型だってね……。


「ちっちゃいは禁句! 背が伸びなかったことは軽くコンプレックスなんだから。

 男の子的にはなんだか発育不良みたいで不満だからもうちょっと成長してほしいんだけどね。

 この1年で1cmしか伸びなかったし成長期はもう終わっちゃったのかなぁ。

 でも食べる量だけはしっかり男の子でけっこう食べるんだよ」


【それでそんなスタイルを維持してるなんてうらやましい】

 なんでかはわかんないけど太らないんだよね。新陳代謝の問題かな?


「女の子的にはそれがいいのかもしれないけど、男の子的にはもっと筋肉もついて身長とかも伸びて欲しかったよね」


【日向キリ:YUKIちゃんは今のままでいて。いつまでも変わらずいてほしい】

 なんか切実な響きがあるんですけど……。


【YUKIちゃんガチ勢のキリママにそこまで言わせるとはこれはいよいよ期待が高まってきますな!】

 キリママはわたしの素顔を知ってるからあまり強く否定できないけど、これだけはほんと期待値を上げないでほしい。


「中の人の話題でこれ以上盛り上がらないで~……。ちゃんとキリママとお話しして了承ももらってることなんだけど、わたしVtuberとして活動するのは中学卒業までって決めていて、それ以降は素顔をさらして普通の配信者としてやっていく予定なんだ。

 その時にがっかりされるのもイヤだし、過剰な期待をするのはお控えください~。

 いたって普通、普通の男の娘ですから!」


【日向キリ:YUKIちゃんは人類の至宝。わたしが受けた衝撃を2年後にみんなも味わうことになる】

 だから煽らないでってば!


「キリママやめて~」


 * * *


 リビングでは今日もちゃっかり姉妹たちが集結して、ライブ配信をテレビの大画面で鑑賞していた。


「まぁゆきの場合あれで普通ってのは相当無理があるわな」


「ゆきちゃんが普通ならこの世に美人なんていなくなるってもんだよね」


「万人が認める美貌」


「ゆきちゃんを眺めているだけでなんだか心が豊かになるような気がします。あの類稀なる容姿を今お見せしないのはもったいないなと思っちゃうくらいですね」


 ブラコン四姉妹のいつものゆきちゃん自慢。今日は久しぶりの歌と踊りを堪能したのだから礼賛は留まることを知らない。


「にしてもアメリカで一旦芸能活動を休止してやたらと歌と踊りの勉強ばっかしてたのは知ってたけど、さすがはゆきというか、わずか数年でここまでレベルアップしてるとはなぁ」


「歌声聞いてるだけで鳥肌やばかったもん!」


「心にしっかり響いてきた」


「元々感受性の豊かな子ですから、楽曲に感情を乗せる方法を覚えたら人の心を震わせるようになるのも納得ですね」


「トランス状態っていうの? だいぶ入り込んで歌ってたよね」


「あいつの才能は底なしなのかね。どこまでいくのか楽しみだ」


 お姉ちゃんたちが一様にうなずく。


「ところでさ、ひよりからみんなに提案なんだけど次からはこうやってリビングで見るんじゃなくて、それぞれの部屋で見た方がいいんじゃないかと思うんだけど」


「確かに。」


「そだな。その方が落ち着いて見られる」


「アリバイ工作もしなくて済みますしね」


 なんだかんだと理由付けをしてはいるけど、要するにみんなゆきちゃんの声を独り占めして自分の世界に浸りたいのはバレバレだよ。


 あと、感極まったときのリアクションを見られるのが恥ずかしいから平静を装って消化不良気味だというのもあるよね。


 特に何も発言はしなかったけど、ゆきちゃんの配信を見て内心一番はしゃいでいたのは実はかの姉だと思う。いつものようにニコニコしてはいるが相当なフラストレーション状態に違いない。


 より姉やあか姉より若干そわそわしてる。1人で見ていたら思い切り悶えていたんだろうな。かくいうわたしも何度叫びそうになったことか。


 結局それぞれが思うままにゆきちゃんの歌声に熱狂したいということで来週からは各部屋で鑑賞することに。


 ちなみにわたし達の部屋は、年頃の女の子はプライバシーも大事だとゆきちゃんが両親と施工業者さんに直談判したおかげで、さすが音楽に携わる人間と感心するほどのしっかりとした防音対策がされている。


 耐え切れなくなって少々大きな声を出したところで隣の部屋にすら響いたりしない。


 なにしろ自宅にスタジオを作ってしまうくらいだから音響に関しては並々ならぬこだわりがあるんだよね。

 そのへんの設備に関しては素材にまで口を出してたくらいだもん。


 そんなゆきちゃんが作ってくれた、誰にもはばかることのない自分だけの空間で心ゆくまでゆきちゃんの歌声を聴きたい。

「ぎゃわいいぃぃ~!!」と悶えたい気持ちを必死に我慢することなく発散したいんだよね。


 ゆきちゃんが素顔じゃなくVtuberの仮面を被っているからかろうじて抑えられていたようなものなので、テレビの大画面で眺めることより大事なのはスマホの小さい画面になろうと自分だけの世界にひたって思う存分デレるほう。


 次回からの方針も決まったところでより姉からさらなる要望。


「でもゆきの生歌も聴いてみたいよなぁ」


 だよね。こうやって歌を聴いちゃうともっとって気持ちになっちゃうのはよくわかる。


「それなら動画投稿の撮影の時なら見せてくれるんじゃない? ライブ配信を見られるのがイヤなんだから、収録くらいならみせてくれるでしょ」


「明日月曜だから動画投稿の日ですよね。もう収録してるのかしら」


「もう準備してるはず」


「じゃ、たぶん水曜投稿の分の収録を見せてもらえるかな」


「よし、ならお願い役はひよりな。あいつひよりに一番甘いからな」


「オッケーまかされました」


 そうこうしてるうちにゆきちゃんがリビングに姿を現した。


 証拠隠滅はとっくに完了。


 本当は歌の感想を言ってべた褒めしたいところだけど、見てることがバレたら絶対にへそを曲げちゃうからな。


 別にへそを曲げたゆきちゃんが怖いってわけじゃないんだけど、ずっと不機嫌状態なのはわたし達が耐えられない。


 ゆきちゃんの笑顔はわたし達にとっては酸素みたいなもんで、なくなっちゃうと窒息してしまう。


「ゆきちゃんお疲れ~! ひさびさのカメラの前でのダンスはどうだった? 楽しかった?」


 麦茶を注いだコップを渡しながら尋ねる。一時間近く歌って話してたんだから喉も乾いているだろう。

 ゆきちゃんのことならわたしも気が利くんだよね。


「ひさびさでちょっと緊張したけど楽しかったよ! ちょうど喉乾いてたんだ、ありがと。 これからはペットボトルの水くらい用意しとかないといけないな」


 麦茶を一気飲みして、ゆきちゃんはニコニコ上機嫌。よっぽど楽しかったんだろうな。


 こんなに生き生きとした姿を見てるとこっちまで嬉しくなってくる。機嫌もいいしおねだりするなら今が一番だな。


「ね、動画投稿は週何回やるの?」


 週3でやることは知ってるけど、それをわたしが知ってるのもおかしいのであえて尋ねる。


「月水金の3回だよ。水曜までの3回分はもう収録してあるから明日か明後日に金曜の分を収録しようかと思ってる」


 もう水曜の分まで収録してあるのか。さすがゆきちゃん仕事が早い。


「生配信はもう見たいって言わないからさ、その収録を見学させてくれない? ゆきちゃんの歌声わたしも聴きたいよ~! お願い!」


 ゆきちゃんにしがみつきながら、精いっぱいかわいくおねだり。


「いいけど、動画のときは歌とダンスは別撮りだよ。ヘッドマイクない方がしっかり踊れるから」


「全力で歌って踊るんじゃん! 余計に見たい! ね、みんなも見たいよね?」


 ちゃんと他のみんなにもパス。当然そこは全員一致で「聴きたいに決まってる」という返答が返ってくる。


「絶対聴く」

 あか姉にいたってはすでに決定事項みたい。ここまでみんなにお願いされて嫌がるゆきちゃんじゃないけどね。


「わかった、じゃあ明日晩御飯を食べた後に収録しようか。

 明日はリクエストの入ってたボカロ曲だからみんなも聴いたことあるかも。

 お風呂入る時間少し遅くなるけど大丈夫?」


「四人で一緒に入るから大丈夫! ゆきちゃんも一緒に入る?」


「入りません!」


「広さは十分にあるのに」


「広さの問題じゃなくってわたし男の子だから!」


「小さいころは一緒に入ってた」


「あか姉それ小学生のころ! もう中学二年生だよ、わたし」


「わたしは今でも全然かまいませんよ~」


「いや、そこはかまおうよ、かの姉……。ほんとにもう。

 今日はもうみんなお風呂済んでるよね? 少し汗もかいてるしわたしも今からお風呂に行ってくるね」


「おう、いってらー。しっかり温まれよ」


 部屋に着替えを取りに行ってそのままお風呂に行ってしまった。


「グッジョブ、ひより」


「エヘヘ、もっと褒めて」


「明日が楽しみです」


「帰ったら速攻宿題終わらせる」


「それにしても作詞作曲ってそんな簡単にできるもんでもないだろ? あいつの場合ダンスも自作だし。いくらリクエスト挟むっていってもそれで配信頻度大丈夫なのかね。」


「前にストックしてる曲どれくらいあるのって聞いたことあるけど、その時は30ないくらいって言ってたよ。

 今はもっと増えてるんだと思う。耳を疑ったけどすんなりできる時は2日もあればダンスまで出来上がるって言ってたし、ネタに困るってことはないんじゃないかな」


「マジか」


「本当に音楽の天才ですのね」


「天はゆきに二物どころか三物四物も与えた」


「その天才が今日世間にその歌声を響かせたわけだな。どんな反応があるか楽しみだな」


「しょっぱなからめちゃくちゃいい曲歌ってたし絶対バズるって! だってゆきちゃんだよ」


「ゆきならきっとみんなに愛される。伝説の始まり」


「伝説ですか。ゆきちゃんなら本当に伝説になりそうですね」


 そんな話をしているうちにゆきちゃんもお風呂から上がってきたけど、そのままこれからの活躍の話で盛り上がり、日付が変わるころ帰ってきた両親に早く寝るように促されるまでみんなでゆきちゃんの未来について話し続けていた。


 誰もこれからの成功を疑っていなかったので興奮気味に話していたから、未来の話をするとゆきちゃんが少しだけ寂しそうな顔をしていることには誰も気づかなかった。

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