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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第83曲 10年ぶりの再会

「き、岸川琴音!?」


 きらりさんが先に正解を口にした。


 間違いなかった。


「琴音ちゃん!? どうしてここに!?」


 海外にまでその名を轟かし、国内ではその名を知らない者などいないと言っていい国民的歌姫の岸川琴音。


 その大人気歌姫がこんなところにいるなんて誰が予想できるだろうか。ましてやこんな怪しい恰好で。


「そんなのゆきちゃんを待っていたに決まってるじゃない!」


 わたしに会いに!? 予想外の答えに固まっているとさらに続ける琴音ちゃん。


「Vtuber として活動してたときから知ってた。声ですぐわかったよ! ゆきちゃんが帰って来たって! どうして連絡くれなかったの?」


 そんなに前から……。


「ずっと会いたくて……。でも新しい家の場所は知らないし、いつまで待っても連絡くれないし。

 彩坂きらりさんとのコラボはいつもここのスタジオでやっているって聞いて、いてもたってもいられなくなって待ってたんだよ!」


 涙交じりに訴えかけてくる琴音ちゃん。そんなに会いたがってたなんて。だけどわたしは……。


「てっきり怒っているものだとばかり思ってたから……。琴音ちゃん怒ってないの?」


「怒るって何を?」


 きょとんとした顔を見るに本当に怒ってないようだけど……。


「だってわたし琴音ちゃんに何も言わずに芸能界辞めちゃって……。わたしがいなくなったせいで番組もなくなっちゃったし」


「番組がなくなった? どういうこと?」


 きらりさんが疑問を挟んできた。


 そうか、世間ではほとんど認知されてなかったんだっけ。


「わたしが子役の時に『ピーノちゃん』だったのは知ってるよね?その相方で一緒に踊ってた『ポロンちゃん』が琴音ちゃんなの」


「ええ! そうなの!?」


『ピーノちゃん』の陰に隠れてしまい全然人気のなかった『ポロンちゃん』


 番組終了後、琴音ちゃんは芸能界に残らず歌のレッスンに励み、わたしがVtuberデビューする2年前に満を持して再デビューしたので、琴音ちゃんが『ポロンちゃん』だったという事実は関係者を除いてほとんど認知されていなかったのだ。


 そしてあっという間に歌姫と呼ばれる地位にまで上り詰めた琴音ちゃん。歌姫が売れない子役だったなんて宣伝するわけもなく、余計に知る人は少ない。


 なのできらりさんの驚きももっともなこと。まさか国民的歌姫とわたしにそんな縁があるなんて思ってもいなかっただろう。


「あの頃いろんな大人に囲まれてゆきちゃんが苦しんでたことくらい知ってたよ。だから突然引退したことで怒ったりなんかしない。むしろ感謝してるんだよ?」


「感謝?」


 恨まれるならまだしも、感謝されるようなことをしたなんて全く心当たりがない。


「あのころ、ゆきちゃんがわたしの歌をほめてくれたでしょ?

 とってもかわいくて売れっ子で、あんな小さいのに歌がすごく上手だったゆきちゃんに褒められたことがどんなに嬉しかったか……。

 そのおかげでわたしは番組が終わったときに迷うことなく歌の世界に進むことができた。

 だからあの時突然引退したことも含めて、今のわたしがあるのは全部ゆきちゃんのおかげなんだよ?」


 そんな風に思っていてくれたんだ……。


 わたしにとっては本当に上手いなと思ったから無邪気に褒めただけの事なのに。


 琴音ちゃんにとっては人生を決定づけるほどのことだったなんて……。


「そんなの琴音ちゃんがたくさん頑張ったからで、わたしは何もしてないよ」


「そんなことない! 今のわたしを作ってくれたのは全部ゆきちゃんなんだから」


 そのままわたしの胸に顔を埋めてしまう琴音ちゃん。


 ずっとわたしのことを待っててくれたんだ……。


「あのー……。いつまで2人は転がったまま抱き合ってるつもりかな?」


 きらりさんのツッコミで我に返った。なんかツッコミに怒気が含まれてるような気もするけど、今はそれどころじゃない。


 ヤバいよ、国民的歌姫がこんなところで男と抱き合ってるなんて大スキャンダルじゃん!


 慌てて琴音ちゃんを引きはがし、立ち上がる。


「あーん、もう少しこうしてたかったのに……」


 いやいや、自分の立場考えて?


「歌姫がこんなとこで男と抱き合ってたらスキャンダルもいいとこでしょ!

 ほら、琴音ちゃんも早く立って! 目立ってるから!」


 夜も遅い時間なので人通りの少ないことが幸いだけど、何人かは何事かと見ている人もいる。


 琴音ちゃんに帽子をかぶせ、手を取って立ち上がらせると不思議そうな顔をしている。


「男と?どう見ても女の子同士がじゃれあってるようにしか見えないでしょ」


 クリティカルヒット!


 言われてみればそうでした……。


「女の子同士ならいいでしょー。ゆきちゃーん」


 そんな甘えた声出されても。


「それはそれで問題があるような気もするよ。とりあえず場所移動しよう」


「ゆきちゃんの泊まるホテルいこ!」


 被せ気味に食いついてきた琴音ちゃん。


 夜も遅いし、この怪しい恰好も逆に目立つからその方がいいか。



 そうしてやってきたわたしの宿泊する部屋。


 なぜかきらりさんもついてきたし。同じホテルだしまぁいいんだけど……。


 それにしてもよく考えたらすごいメンバーだ。


 Vtuberトップクラスの人気者に国民的歌姫。そしてありがたいことに唄う配信者としてはそれなりの人気を誇るわたし。


 各方面のトップに近い3人がこんな狭いホテルの一部屋に集まることなんて滅多にないことだろう。


 そしてそんな3人がわたしを中心にしてぴったりくっついてベッドに腰掛けている。


 なんだこの状況。


「あの、こんなにくっついてたら話しにくくない?」


 もともと一人部屋なので他に座るところがないから仕方ないとはいえ、いくらなんでも近すぎやしませんか。


 距離を取ろうにも右も左もふさがれていて逃げ道がない。


「10年ぶりに再会したのにそんなことを言うなんてひどいわ」


 確かにそうなんだけどさ……。


「あの、岸川さん。いつもテレビで拝見させてもらってます。それでこう言っては何なんですが、普段とずいぶん性格が違うような気がするんですけど……」


 きらりさんが至極もっともな質問をしている。琴音ちゃんはテレビではクールなキャラとして定着していて、今のデレデレのイメージとは似ても似つかない。


 昔の琴音ちゃんを知っているわたしには違和感がないのだけれど。


「彩坂さん、琴音でけっこうですよ。あと年も近いんですし、もっとフランクに接してください。普段のわたしと違って当然ですよ。ゆきちゃんはわたしにとっては特別な人ですから」


 特別な人……。


「それじゃ、お言葉に甘えて。わたしのこともきらりでいいからね、琴音さん。それでゆきさんが特別な人というのはどういう意味で?」


 わたしも気にはなってたけど、自分ではとても聞けないことをきらりさんが代弁してくれた。


「そのままの意味ですよ、きらりさん。ゆきちゃんはわたしの全て。何者にも替えが効かない特別な人です。ゆきちゃん、結婚しましょう!」


 は?


 ケッコン?


 聞きなれない単語が出てきて思考停止。ケッコン。コケ、コケ。


 結婚!?


「いやいやいやいや、琴音ちゃん? わたしまだ15歳なんだけど!?」


 琴音ちゃんは4つ上でもう19歳になってるから可能かもしれないけど、わたしはまだ法律的にも無理な話。


 わたしの歳知ってるよね?


「いやね、わかってるわよ。だから卒業したら結婚しよ!だから今はまだ婚約ってことで」


 婚約……。


 おでんに入ってるのが好きです。


 それはコンニャク。しょーもないこと考えて現実逃避してる場合じゃないだろ。


「ちょーっと琴音さん?聞き捨てなりませんねー。突然現れていきなり婚約だなんて。ゆきさんの気持ちを無視しすぎじゃない?」


 きらりさん、顔は笑顔だけどこめかみのあたりがぴくぴくしてるよ。


「もちろんゆきちゃんの気持ちが一番大切ですよ。だから強制はしないけど。でもゆきちゃんにはわたしの全部をあげるって決めてるから!」


 全部ですか。いまいちピンとこないけど。


「ゆきちゃんにはわたしの身も心も全て捧げるんだから。受け取ってくれるよね、ゆきちゃん?」


「ふぁ?」


 ダメだ、怒涛の展開に理解が追い付かない。間抜けな声しか出ない。


 いくら記憶力がよくってもこればっかりはどうしようもない。


 全てを捧げる……結婚……。


 はぁ!?


 ようやく頭の中で全ての言葉がつながった。


 琴音ちゃんはわたしの事を好きだっていう認識で合ってるよね? そしてわたしのお嫁さんになりたいってことで、身も心も捧げる……。


 思わずよからぬことを想像してしまい、赤面してしまう。


「ゆきさんは何を想像して赤くなってるのかな?」


 きらりさん怖い怖い。目が笑ってない。


 ひとまず煩悩は横に置いといて。


「突然そんなこと言われても心の準備ってものがね? わたしまだ恋愛もしたことないのにいきなり婚約とか何足飛びだよって話なんだけど」


「それじゃゆきちゃんの初恋の相手はわたしになるってことだね! 確かにいきなりだからまずは恋人から始めないとね」


 恋人と言われましても。それもかなり段階すっ飛ばしてる気がするんだけど。


「ちょーっと待ったー! ゆきさんの恋人ならわたしがなる!」


 きらりさんまで何言ってんの!?


 やばい、頭痛くなってきた。これからどうなっちゃうんだろう、わたし。

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