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雪の精霊 ~命のきらめき~【PV61000突破☆感謝!】  作者: あるて
第1章 充電期間

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第19曲 嬉し恥ずかし?

「あたしがついていく」


 ダメでした。


 テーブルを囲んだ姉妹たちに外泊許可をもらうつもりだったんだけど、一番寛容だったはずのより姉の額に青筋が見えた。


 めっちゃ怖い。


 打ち合わせに行くときは他の姉妹と違って理解を示してくれたのに。


「中学生の分際で外泊なんて十年早い!」


 とのこと。理屈はわかるけど、せめて成人したら許してね? でもこの歳になって保護者同伴はちょっと恥ずかしいな。


「子供が外泊なんて保護者同伴に決まってるだろーが」


 心を読まれた。でもより姉と外泊なんてことになったら他の三人が黙っているはずないよなぁ。


「より姉だけズルい! わたしもゆきちゃんとお泊りしてみたい!」

「わたしもついていく」

「ゆきちゃんとわたしはいつも一緒ですよね」


 まぁそうなるわな。でもこれは逆にいい案かも。


「だったらみんなで東京観光も兼ねて旅行する? 動画の収益が入ってるからそれくらいの費用は余裕で出せるよ」


 みんなで行けば保護者同伴じゃなくて家族旅行という名目も立つ。


「東京に行くならおしゃれな服をあか姉に見繕ってもらいたいし、みんなも何か買い物したいものとかあるんじゃない? より姉もただ監視のためだけについてくるよりもいいでしょ」


 ショッピングを餌にダメ押し。


「さすがゆきちゃん! 太っ腹~」


 ひよりは無邪気に大喜びしてるけど、より姉はなんだか渋い顔をしている。二人きりがよかったとか……? まさかね。


 みんな一緒の方が楽しいに決まってるし。と思っていたら違うところから反対意見が出た。


「そんな、ゆきちゃんにばっかり費用を負担させるわけにはいかないですよ。行くならわたしたちも自分の分くらい出すべきです」


「そうだな。おんぶにだっこじゃいくらなんでも甘えすぎだ」


 より姉とかの姉、上の姉二人からそんな意見が出てきたのでみんな黙ってしまった。今までお金のことで揉めたことなんてないのに……


「いくらなんでもそれは無茶だよ。収入があるのはわたしだけなんだから。

 それにわたしはみんながいるからお仕事を頑張れているんだし、いつもわたしを大切にしてくれているお礼だと思ってくれたら……」


「それでもダメだ。ただでさえ家の事もゆきに甘えてばっかりなのに、遊びに行くことまで甘えたらあたしらがダメ人間になっちまう。今回もあたしは自分の貯金で行くつもりだ」


 とりつくシマもない。

 わたしの用事についてくるんだから、わたしとしてはそんな余計なお金を使ってほしくない。

 アルバイトのできるより姉とかの姉ならまだしも、中学生のあか姉とひよりにそんなお金を出せるはずもないし。


 困り果てていると、それまで黙って姉弟のやり取りを見ていた両親が名案を出してくれた。


「再来週ならお父さんとお母さんの休みが取れるから、みんなで行けばいいんじゃないの? お金のことは心配しないでいいわよ。親なんだから家族旅行の費用を出しても問題ないでしょう?」


 基本的にわたし達がやることにあまり口を出さない両親から出た言葉にみんな面食らっていたけど、わたしだけは二人の考えが分かってしまった。


 ただ親から旅行に行こうと言われてしまっては、いくらより姉といえど反対する理由なんかない。かの姉もそれは同じ。


「まぁお母さんたちと行くなら何の問題もありませんね」


「あたしだって親の出すお金にどーこー言うつもりなんてねーよ」


 どうにか二人とも納得し、晴れて家族全員での旅行が決まった。


「え? どういうこと? みんなで東京旅行に行けるってことかな?」


 ひよりだけはよくわかってなかったので、そうだよと言ってあげると「やったー!」と無邪気にはしゃいでいた。


 あか姉も安堵した表情。


「貯金全部はたかなくてすんでよかった」


 何がなんでも来るつもりだったのね……。


「お父さんお母さん、ありがとう」


 わたしがお礼を言うと、お父さんは照れくさそうな顔をするだけで何も言わず、お母さんは「何が~? たまたま休みが合ったから家族旅行しようって言っただけよ」と言うだけ。


 仮にも子役の頃にお仕事というものを体験したことのあるわたしにはわかる。

 ただでさえ忙しくていつも残業ばかりなのに、簡単に休みを合わせることなんて出来るはずがない。いつもなら土曜日も休日出勤をするくらい多忙なのだから。


「お酒のつまみ、とびっきり美味しいのを用意しておくね」


 その言葉だけでわたしが察していることを理解したようで、お父さんは「そんなご褒美があるならいつもより仕事も頑張れるな」と言って照れていた。


「察しが良すぎるのも考えものよ。息子なんだから、余計な気を遣わず甘えてくれればいいの。コラボ? の方もがんばってね」


 お母さんはそんなことを言ってたしなめてきたけど、二人とも顔は嬉しそうだ。

 そんな二人に笑顔を向けて、東京でどこに行こうか盛り上がっている姉たちの会話へ参加した。


「息子の笑顔がかわいすぎるわね」「そうだな」「しばらく残業漬けよ、覚悟してね」「言われるまでもないよ」


 そんな両親のやりとりはわたし達には届いていなかった。



 そして二週間後はすぐに訪れた。

 それまでの間、予想通り両親の帰りはより遅く、ほぼ毎日終電間近。

 わたしは毎日それを待っていて、二人に温かいご飯とおつまみを準備。

 気を遣わなくていいから早く寝なさいと言われたけど、わたしの行動は止められない。


 おつまみに疲労回復効果のある食材を選んだり、美味しいもので仕事の疲れが吹き飛ぶように腕によりをかけた。

 ご飯の支度をするのは負い目なんかじゃなく、感謝の気持ちと愛情がこもっているのだから。


 それで少しでも幸せな気持ちになってくれたなら、それ以上の喜びはない。

 

 * * *


 前週の配信の時、両方のチャンネルで告知していたので準備はばっちり。

 大人気の企業勢Vtuberと人気急上昇中の個人Vtuberのコラボとしてネット上でも話題になっており、まとめサイトにも掲載されるほど注目を集めていた。


「いくらなんでも期待されすぎじゃないですかね? きらりさんの人気を考えたら分からないでもないんですけど、それにしても予想以上に盛り上がっているというか……」


 家族と別行動し、きらりさんと合流したわたしは事前の打ち合わせで現状の注目度を話題にしていた。


「相変わらず自己評価低いわね。わずか二か月で十万人も登録者増やした自分の実力をもっと信じなよ。わたしもそうだけど、みんなゆきさんの歌唱力に魅力を感じて応援してるんだから、あんまり自分を卑下しすぎるのも失礼だよ。人気者になるのは慣れてるでしょ」


「子役の頃は周りの大人に持ち上げられていったような感覚でしたからね。努力を欠かしてこなかったって言う自負はありますけど、いきなりのことなんでまだ信じられなくて……。でもそうですね、わたしを応援してくれている皆さんのためにも、胸を張ろうと思います。」


「その意気その意気。で、今日の収録なんだけどお互いの持ち歌を唄いあうっていう企画を考えてきたんだけど、どうかな?」


「それいいですね! 何曲くらいいきます? あとせっかくなのでデュエットはどうしますか? わたしの持ち歌にデュエットできそうなのあったかな」


「お、やる気満々だね。いい感じ~。せっかくだから三曲ずつくらいはいこうか。デュエットについては著作権のないボカロ曲を拾ってきたんだけど『純情恋歌』っていう曲分かる?」


「それなら大丈夫です。歌う順番とかタイミングはまだコラボに慣れていないんできらりさんにお任せしてもいいですか?」


「それは任せておいて。それ以外の内容だけど特に台本とかは用意してないから、コメントを見ながら適当に雑談するような感じでいいかな」


 フリートークということか。


 そのへんのアドリブは子役の頃に出演したバラエティ番組なんかでも鍛えられているし、二か月とはいえ自分のリスナーさんとの会話を盛り上げることができていたので大丈夫。


 コメントでネタ振りもあるし話題に困るということはないだろう。


「問題ないです。きらりさんといろいろお話したいですね」


「さすがそういうところには自信があっていいね。まぁ肩ひじ張らずにお互い楽しんでいこう。リスナーさんを楽しませるのが目的だけど、まずは自分たちが楽しまないといいコンテンツは出来上がらないからね」


 まずは自分が楽しむか。まさにその通りだと思う。せっかく憧れのきらりさんとコラボできる滅多とない機会なんだから、わたしも目いっぱい楽しもう。


 打ち合わせもそこそこに、スタジオに入るまでの残り時間、わたしはきらりさんと収録上では語れないような子役時代の話や私生活のことなんかについて楽しくおしゃべりをして過ごした。

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