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世界に愛を届ける雪の精霊は超絶美少女!でも現世では配信者(♂)  作者: あるて


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19/21

第19曲 嬉し恥ずかし?

「あたしがついていく」


 ダメでした。


 テーブルを囲んだ姉妹たちにことの顛末を説明して外泊許可をもらうつもりだったのだけど、一番寛容だったはずのより姉の額に青筋が見えた。


 めっちゃ怖い。


打ち合わせに行くときは他の姉妹と違って理解を示してくれたのに。


「外泊なんて10年早い!」


 とのこと。理屈はわかるけどせめて成人したら許してね?でもこの歳になって保護者同伴はちょっと恥ずかしいな。



「まだ中学生の分際で外泊なんて保護者同伴に決まってるだろーが」


 心を読まれた。でもより姉がわたしと外泊なんてことになったら他の姉妹が黙っているはずもなく。


「より姉だけズルい!わたしもゆきちゃんとお泊りしてみたい!」


「わたしもついていく」


「ゆきちゃんとわたしはいつも一緒ですよね」


 まぁそうなるわな。でもこれは逆にいい案かも。


「だったらみんなで東京観光も兼ねて旅行する?動画の収益が入ってるからそれくらいの費用は余裕で出せるよ」


 みんなで行けば保護者同伴じゃなくて家族旅行がてらという名目も立つから少しは恥ずかしさも誤魔化せる。


「東京に行くならおしゃれな服をあか姉に見繕ってもらいたいし、みんなも何か買い物したいものとかあるんじゃない?より姉もただ監視のためだけについてくるよりもいいでしょ」


 ショッピングを餌にダメ押し。


「さすがゆきちゃん!太っ腹~」


 ひよりは無邪気に大喜びしてるけど、より姉はなんだか渋い顔をしている。2人きりがよかったとか……?まさかね。


 みんな一緒の方が楽しいに決まってるし。と思っていたら反対意見が出た。


「そんな、ゆきちゃんにばっかり費用を負担させるわけにはいかないですよ。行くならわたしたちが自分の分くらい費用を負担するべきです」


「そうだな。全部おんぶにだっこじゃいくらなんでも甘えすぎだ」


 より姉とかの姉、上の姉2人からそんな意見が出てきたので驚いた。今までお金のことでそんな意見が出たことはなかったからだ。


「それは無茶だよ、収入があるのはわたしだけなんだし。それにわたしはみんながいるからお仕事を頑張れているんだからいつもわたしを大切にしてくれているお礼だと思ってくれたら……」


「それでもダメだ。ただでさえ家の事もゆきに甘えてばっかりなのに、遊びに行くことまで甘えたらあたしらがダメ人間になっちまう。今回もわたしは自分の貯金で行くつもりだ」


 とりつくシマもない。


 わたしの用事についてくるんだから、わたしとしてはそんな余計なお金を使ってほしくない。


 アルバイトのできるより姉とかの姉ならまだしも中学生のあか姉とひよりにそんなお金を出せるはずもないし。


 困り果てているとそれまで黙ってソファーで姉弟のやり取りを見ていた両親から声が上がった。


「再来週ならお父さんとお母さんも休みが取れるからみんなで行けばいいんじゃないの?お金のことは心配しないでいいわよ。親なんだから家族旅行の費用を出しても問題ないでしょう?」


 基本的に放任主義の両親からそんな提案が出たことでみんなビックリしていたけど、わたしだけは2人の意図がわかっていた。


 でも親から旅行に行こうと言われてしまってはいくらより姉といえど反対する理由なんかない。かの姉はいわずもがなだ。


「まぁお母さんたちと行くなら何の問題もありませんね」


「あたしだって親の出すお金にどーこー言うつもりなんてねーよ」


 今度は2人とも納得してくれて、これで晴れて家族全員での旅行が決まった。


「え?どういうこと?家族全員で東京旅行に行けるってことかな?」


 ひよりだけはよくわかってなかったので、そうだよと言ってあげると「やったー!」と無邪気にはしゃいでいた。


 あか姉も安堵した表情。「貯金全部はたかなくてすんでよかった」って何がなんでも来るつもりだったのね……。


「お父さんお母さんありがとう」


 わたしがお礼を言うとお父さんは照れくさそうな顔をするだけで何も言わず、お母さんは「何が~?たまには家族旅行しようって言っただけよ」ってとぼけてる。


 仮にも子役の頃にお仕事というものを体験したことのあるわたしにだけはわかる。


 ただでさえ普段から忙しくて残業ばかりなのに、1日時間を空けることの大変さが。いつもなら土曜日も休日出勤をするくらい忙しい両親なのだ。


「お酒のつまみ、とびっきり美味しいのを用意しておくね」


 その言葉だけで2人ともわたしが2人の意図を察していることを理解したようで、お父さんは「そんなご褒美があるならいつもより仕事も頑張れるな」と言って照れていた。


「察しが良すぎるのも考え者よ。あなたもわたし達の息子なんだから余計な気を遣わず旅行を楽しんでくればいいの。コラボだっけ?の方もがんばってね」


 お母さんはそんなことを言ってたしなめてきたけど、2人とも顔は嬉しそうだ。


 そんな2人にわたしも笑顔を向けて、東京でどこに行こうか盛り上がっている姉たちの会話へ混じることにしてテーブルに座りなおした。


「息子の笑顔がかわいすぎるわね」「そうだな」「しばらく残業漬けよ、覚悟してね」「言われるまでもないよ」


 そんな両親のやりとりはわたし達には届いていなかった。




 2週間はあっという間に過ぎて土曜日の朝。


 それまでの間、わたしの予想通り両親の帰りはいつもより遅く、ほぼ毎日終電間近。


 わたしは毎日それを待っていて2人に温かいご飯とおつまみを提供していた。気を遣わなくていいから早く寝なさいと言われたけど、そんなことを言われたくらいでわたしの行動は止められない。


 おつまみに疲労回復効果のある食材を選んで作ったり、美味しいものを食べて仕事の疲れが吹き飛ぶようにと御飯の支度をするのは負い目からなんかじゃなく、感謝の気持ちと2人への愛情がこもっているのだから。


 それで少しでも幸せな気持ちになってくれたらわたしにとってそれ以上の喜びはない。


 前週の配信の時にわたしときらりさん両方のチャンネルで告知していたので準備はばっちり。


 大人気の企業勢Vtuberと人気急上昇中の個人Vtuberのコラボとしてネット上でも話題になっており、まとめサイトにも掲載されるほど注目を集めていた。


「いくらなんでも期待されすぎじゃないですかね?きらりさんの人気を考えたら分からないでもないんですけど、それにしても予想以上に盛り上がっているというか……」


 家族と別行動し、きらりさんと合流したわたしは事前の打ち合わせで現状の異常さを口にしていた。


「相変わらず自己評価低いね。わずか2か月で10万人も登録者増やした自分の実力をもっと信じなよ。わたしもそうだけどみんなゆきさんの歌唱力に魅力を感じて応援してるんだから、あんまり自分を卑下しすぎるのも失礼だよ。人気者になるのは慣れてるでしょ」


「子役の頃は周りの大人に持ち上げられていったような感覚でしたからね。そこから必死に努力を欠かしてこなかったって言う自信はありますけど、いきなりこんなに認められていくのが信じられなくて……。でもそうですね、わたしを応援してくれている皆さんのためにももう少し自信を持とうと思います。」


「その意気その意気。で、今日の収録なんだけどお互いの持ち歌を唄いあうっていう企画を考えてきたんだけどどうかな?」


「それいいですね!何曲くらいいきます?あとせっかくなのでデュエットはどうします?わたしの持ち歌にデュエットできそうなのあったかな」


「お、やる気満々だね。いい感じ~。せっかくだから3曲ずつくらいはいこうか。デュエットについては著作権のないボカロ曲を拾ってきたんだけど『純情恋歌』っていう曲分かる?」


「それなら大丈夫です。歌う順番とかタイミングはまだコラボに慣れていないんできらりさんにお任せしてもいいですか?」


「それは任せておいて。それ以外の内容だけど特に台本とかは用意してないから、コメントを見ながら適当に雑談するような感じでいいかな」


 フリートークということか。


 そのへんのアドリブは子役の頃に出演したバラエティ番組なんかでも鍛えられているし、2か月とはいえ自分のリスナーさんとの会話を盛り上げることができていたので問題はないと思う。


 コメントでネタ振りもあるし話題に困るということはないだろう。


「問題ないです。きらりさんとはいろいろおしゃべりしたいこともありますし」


「さすがそういうところには自信があっていいね。まぁ肩ひじ張らずにお互い楽しんでいこう。リスナーを楽しませるのが目的だけど、まずは自分たちが楽しまないといいコンテンツは出来上がらないからね」


 まずは自分が楽しむか。まさにその通りだと思う。せっかく憧れのきらりさんとコラボできる滅多とない機会なんだからわたしも目いっぱい楽しもう。


 打ち合わせもそこそこに、スタジオに入るまでの残り時間わたしはきらりさんと収録上では語れないような子役時代の話や私生活のことなんかについて楽しくおしゃべりして過ごした。

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