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雪の精霊~命のきらめき~【PV45000突破☆感謝!完結保証】  作者: あるて
第3章 拝啓、未来のわたし

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第147曲 湯煙旅情、入浴事変

「何かあったのか?」


 琴音ちゃんと別れホテルへと向かう道すがら、より姉にそんなことを言われてしまった。

 しまった。先の事を考えて暗くなってしまったのかもしれない。


「はしゃぎすぎて少し疲れただけだよ」


「琴音に何か言われたのか? 戻ってくるまで少し時間がかかっていたよな」


 畳み掛けられてしまった。そんなにおかしかっただろうか?


「……プロデューサーさんに挨拶されちゃってね。コンサートをやらないかって勧誘されていただけだよ」


 琴音ちゃんの口から洩れれば誤魔化しきれるものでもないので、正直に言うことにした。隠すようなことでもないし。


「コンサート! すごいね、ゆきちゃん!」


 無邪気にはしゃぐひより。喜んでくれているのに申し訳ないなぁ。


「ごめん、断った。芸能事務所の人だったから。芸能界に戻るのはイヤだからね」


「そうなんだー、残念」


 ごめんね、がっかりさせて。


「どうして断ったんだ? 今日も楽しそうにしてたし、コンサートやってみたいんじゃねーのか?」


 どうしたんだろう。やけに食いついてくるな。

 そんなに(いぶか)しむようなことだろうか。


「芸能界につながるのはイヤだからだってば。それに今はそんなこと考える暇もないくらい忙しいしね」


「どうして先の事を話すといつも否定的なんだ?」


 背中に氷水をかけられたような気分になった。

 わたしとしたことが。


「そんなことないよ? わたしだって先のことは考えてるってば。そこまで刹那的に生きてるように見える?」


「……わかんないけどな。約束は忘れんなよ」


 約束ってどのことを言ってるんだろう。

 今年中に話すと言ったことだろうか。それとも……。


「分かってるよ。今まで約束を破ったことなんてないでしょ」


「そうだな。ゆきは嘘ついたりしねーもんな」


 ようやく笑顔を見せてくれるより姉。

 心がチクリと痛む。ごめんなさい。


「ちょっと小腹が空いちゃったな! 何か買ってからホテルに行こうよ!」


 誤魔化すように明るい声を出して話題を変えてみる。ちょっとわざとらしいかな。


「シティウォークに開いてる店があるみたい」


 すかさずスマホで調べて見せてくれるあか姉。気を遣ってくれたんだね、ありがと。


「あ、中華がある! わたし点心テイクアウト!」


 見てたら本当にお腹が空いてきた。現金な体だなぁ。


「晩御飯あれだけ食べたのにまだ食うのかよ。夜に食べたらいよいよ太るぞ」


 失礼な。ゆきちゃんは太ったりしませんよーだ。


「まだ九時にもなってないし。晩御飯はステージですっかり消化しちゃったから大丈夫だよ。お風呂の前に腹ごしらえ!」


「なんだ、まだそんな時間なんだな。だったらあたしも。よし、餃子とビール!」


「わたし天津飯!」


「麻婆豆腐がいいですね」


「回鍋肉」


 みんな食べるんじゃん。テーマパークってあっという間に人が減るから、夜遅くなったように感じてしまうよね。



 夜食を買い込み、ホテルへとチェックイン。荷物は既に部屋に運んでくれたらしい。

 美味しそうな匂いを振りまいてごめんなさい。


「ふえー疲れたー!」


 部屋に入るなりベッドへと倒れこむひより。行儀悪いですよ。

 テーブルではプシュッという音と共に、ゴクゴクとビールを飲むより姉。そんなに勢いよく飲んで大丈夫?


「ぷはぁ! こりゃたまらんな!」


 おっさんだ。おっさんがいる。


「わたしも相伴に預かりますね~」


 ガサガサと袋を漁り缶チューハイを取り出す、先月20歳になったばかりのかの姉。

 え、飲むんだ。

 2人も酔っ払いが発生して大丈夫なのかなぁ。


「わたしも飲みたい」


「あか姉は未成年だからダーメ」


 お酒ってそんなに飲みたくなるものなんだろうか。少しだけ興味があるかも。


「あははは! ゆき可愛いなー」


「ふふふ。本当ですね」


 おつまみはわたしの写真か。

 あれだけ中身のない会話でも楽しそうにしてるんだから、お酒って楽しいものなのかもしれない。


「ゆきも一緒に飲もうぜー!」


 だから未成年に勧めんなって前も言ったよね。興味があってもコンプライアンスは大事だからね。


「バカなこと言わないの。先にお風呂入ってくるから、飲みすぎないようにね」


「あたしも一緒に入るー」


 もう酔ってんのか。


「いいから大人しく飲んでなさい。くれぐれも覗いたりしないようにね」


「振りか?」


「違うわ」


 一抹の不安を抱えながらもお風呂へ向かう。お風呂は思ったより広くて、誰かと一緒に入るのも大丈夫そうだ。わたしは入らないけど。

 髪を洗い、体も綺麗にしてシャワーで泡を流す。ショーの時に水も被ったし、汗もかいていたから気持ちいい。


「おーけっこう広いな」


「ぎゃあぁぁぁ!」


 後ろからいきなり声が聞こえ、反射的に湯船に飛び込んでしまった。


「すげージャンプ力だな。でもかけ湯くらいしろよ」


「の! ののの、のー!」


「なんだNOって。かけ湯がそんなにイヤなのか」


 違う!


「そうじゃなくって! 覗くなって言ったでしょうが!」


「だから覗くんじゃなくて堂々と見に来てるんだが」


 屁理屈!


「洗面器投げるよ?」


「あたしの方が近いから無理だな」


「無理ですね」


 かの姉もいた!


「あか姉とひよりは?」


「テレビ見てる」


 止めろよ!

 なんなのこの姉妹……。


「もう気が済んだでしょ? そろそろ部屋に戻ってくれないと体洗えないんだけど」


「あ、お気になさらず」


 気にするっての。なんで平然としてんの。


「まぁまぁ。旅の恥はかき捨てって言うじゃねーか」


 意味が違う。

 恥ずかしいのはわたしだよ。


「あたしらも入るか。三人なら平気だろ」


「そうですね~。酔う前に入っておいた方がいいでしょうね」


 なんですと?

 呆気に取られていると、あっという間に服を脱いでしまう二人。何やってんの!?


「ちょちょちょ!」


「何の鳴き声だ?」


「鳴いてねーわ! なんで脱いでんのさ!」


 慌てて後ろを向いたけど、一瞬見えてしまった……。肌色が……。ヤバイ。

 わたしのことなど放置して、髪と身体を洗い始める。う、うそでしょぉ。


「あか姉とひよりが怒るよ」


「あいつらは明日入るからいいってよ」


 よくないよ! なんで明日の予定も決めちゃってんの!

 すっかりパニクっているわたしをよそに、鼻歌交じりでお風呂を満喫するより姉とかの姉。いったい何が起こっていると言うんだろう。


 やがて洗い終わったのか、近付いてくる気配。上がる心拍数。口から心臓飛び出そう……。


「お邪魔しますよーっと」


「失礼しますね~」


 ふわりとボディーソープの香りが漂い、続いて体を沈める水の音。ほ、本当に入ってきやがった……。


「大阪で、弟囲む、痴女二人」


「お、風流だな」


「いい短歌ですね」


 川柳だよ。

 そうじゃなくて。


「なんで平然としてるのかなぁ。皮肉も通じないし」


 ちらりと目線だけで伺うと、飛び込んでくるのは肌色一色。バスタオルすら巻いてないって……。

 ほんのりと赤くなっているように見えたのはお風呂で温まっているからだろうか。


「ゆきが恥ずかしがり過ぎなんじゃねーか?」


 絶対そんなことはない。これが普通の反応のはずだ。


「は、裸だよ? 普通恥ずかしいでしょ」


「好きな人の裸なら見たいと思うのは普通じゃないんですか?」


 そうかも知れないけど。

 でもそれって男女あべこべじゃない?


「痴女の考えはわかりません」


「失礼だな。欲望に素直だって言ってくれるか」


 素直すぎるだろ。ってか本当にそれでいいのか?


「それにしても。本当にキレイな肌してるよなぁ。羨ましいぞ」


「ひゃぁ!」


 言いながらわたしの腕に手を這わせてくるより姉。何やってんのー!?


「ちょ! おさわり禁止だってば!」


「お金は払うから」


 そういうお店じゃない! お金払ってもダメだってば!

 しかもこちらを向いて腕を伸ばしてくるもんだから、どうしても視界に体が入ってしまう。慌てて目を瞑り、情報をシャットアウト。


 諸行無常、色即是空、空即是色、煩悩退散。


「裸の美女二人に囲まれて、男子だったら夢のシチュエーションじゃありません?」


 自分で美女って言っちゃうんだ。


「刺激が強すぎて困惑中です」


 目を開けることも出来ず、首までお湯につかってなすがままのわたし。より姉にずっと腕を触られてるし。そろそろのぼせそう。


「ゆきがそんなに恥ずかしがるから、こっちは恥ずかしいって気持ちがどっか行っちまうんだよ。もっと堂々とガン見したらあたしらも恥ずかしがるかもよ」


 そ、そうなの?

 思わず目を開いてしまった。途端に視界に飛び込む肌色の世界。

 やっぱり無理!


「あらら。また目を閉じましたね。本当に初心なんですから。かわいいです」


 そう言ってぴとりと寄り添ってくるかの姉。肌と肌が触れ合い、心拍数がさらに跳ね上がる。け、血流が……。


「すげーな。鋼の意志だ」


 そんな高尚なもんじゃないです。

 いろいろと大変なことになりそうなのを崖っぷちで耐えてます。


「も、そろそろ、限界……」


「なんだ、だらしねーなー」


 だらしなくてもいいです。


「顔だけじゃなくて体も真っ赤になってますね。そろそろ解放してあげましょうか」


「しょうがねーなー。今日のとこは勘弁してやるか」


 今日だけにしてほしいんだけど。

 とにもかくにも気が済んだのか、ようやくお風呂から出ていく二人。た、助かった。マジでヤバかった。


 やがて浴室のドアを閉める音がしたので、湯船から上がり脱衣所へと向かう。


「体拭いてやるよ」


「服を着せてあげますね」


 回れ右ぃぃぃ!


「えぇぇ!? 出ていったんじゃなかったの!?」


「思い直した」


 直さなくていい!

 足を閉じ、体をくねらせて隠そうとするものの、全部を見えなくすることはできない。


「色っぽいな。キレイなお椀型だ」


「ミロのヴィーナスのようですね」


 感想はいらないから! 胸を見るな!


「もぉぉぉ! なんでわたしの裸を見たがるの!? 男の裸を見てそんなに嬉しい!?」


「興奮しますね」


「ムラムラするな」


 変態! おやじ!

 後ろ手でタオルを掴み、急いで拭いていく。せめて前だけでも。


「可愛いお尻。食べちゃいたいですね」


 やめてぇ!

 なんとか下着を履くまではできたけど、残りの服は着せられてしまった。もうヤダ。

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