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雪の精霊~命のきらめき~【PV45000突破☆感謝!完結保証】  作者: あるて
第3章 拝啓、未来のわたし

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第143曲 メープル、バナナ、チョコ、いちご

「うわぁ、人がいっぱいだねー」


 開園時間は少しだけ過ぎたけど、何の問題もなく到着。


 まずは入口のところにある地球のオブジェクトの前で記念撮影。

 チケット売り場で2DAYパスを購入し、園内に入るとそこに広がっていたのは日常とは大きくかけ離れた空間だった。


「ゆきちゃーん! 最初に何から回る?」


 目をキラキラさせてはしゃぐひより。うんうん、気持ちは分かるぞ。でもね。


「お腹空いた。ドーナツバーガー食べたい」


 みんなのおやつを分けてもらうだけじゃ足りなかったんだよ。


「まずは食い気ですか。ドーナツバーガーは一番奥の方ですね」


 かの姉がマップを見て位置情報を確認してくれたようだ。さすが名参謀。


「いざ! 敵陣深くへ!」


 わたしの号令に従ってパークの奥へと移動する一行。


 黄色いバナナの化け物が徘徊するエリアに到着し、お目当てのフードを発見。早速購入してかぶりついた。

 うーん、美味しい! さすがいいお値段するだけのことはある。


「うまいな! でもたっけー」


「テーマパークのフードなんてそんなもんでしょ。持ち込み禁止だし、他に食べるものもないからね」


 パーク内にはコンビニもないから、何かを食べようと思えば売店かレストランしかない。そうなると当然お高い。


「足元見てる」


 身もふたもない言い方だね。まぁあか姉の言う通りなんだろうけど。


「非日常な空間を提供してもらって、その中で食べられると考えたら妥当なところじゃない?」


「確かに」


 お弁当の持ち込みなんかを認めたらそこかしこでレジャーシートを広げる光景になり、非日常感を損ねてしまうだろう。


「もう、せっかく遊びに来てるのに現金な話はやめなってば。純粋に楽しまないとだよ!」


「ごめんごめん。ひよりの言うとおりだね。俗物的な考えは捨てて、脳死状態で楽しもう!」


「だから言い方!」


 ひよりに怒られてしまった。でも、そんなことを言い合いながらも笑いが絶えることはない。

 なんだかんだでみんな気分が高揚しているんだろう。


 腹ごしらえを済ませたら、いよいよアトラクションを見て回る番だ。

 せっかく一番奥まで来たんだからと、すぐ近くにあったバナナ世界のアトラクションを選んだ。


「ゆき、こっち」


 あか姉に手を引かれ、ビークルに乗り込む。他の姉妹が文句を言わないところを見ると、どうやら早い者勝ちのようだ。


 巨大ドームスクリーンに映し出された映像は迫力満点で、隣であか姉も目を輝かせている。

 ハチャメチャといううたい文句の通り繰り広げられるドタバタ劇に、みんな子供に戻ったかのようにはしゃぎ、笑い転げた。


 隣にあるアトラクションでも、氷の上をすべる乗り物に乗ってあっちへツルツル、こっちへツルツルと大騒ぎ。


「あー楽しかった。次はどこ行こっか。ってもうこんな時間? お昼だし、何か食べようか」


「さっき食べたばっかじゃねーか。まだそんなにお腹空いてねーぞ」


 確かにまだ2時間程度しか経ってないから、より姉の言うことももっともだ。


「でも、いっぱい笑ったから小腹空かない?」


「よく食べますね。だったら軽いものでも買って食べましょうか」


「チュリトス!」


「ターキーレッグ」


 かの姉の提案にすぐさま食いつくひよりとあか姉。


「わたし両方」


「マジか。よく太んねーよなぁ」


 うっさい、ほっとけ。育ち盛りの男子高校生にこれくらいは普通でしょ。

 チュリトスはいろんなところで売っていて、それぞれ味が違うようなのでどこで買うか迷ってしまう。


「みんなで別々に買ってシェアしようよ!」


 ナイスアイデア。ひよりの案に従って移動しながらチュリトスを購入し、全員に行き渡ったところでかぶりつく。途中でターキーレッグもしっかりゲット。

 あれこれ見ているうちに入口近くまで戻ってきていた。


「ゆきちゃん! これめっちゃおいしいよ!」


 ひよりが選んだのはイチゴヨーグルト味。リボン型のトッピングが可愛く、味もさっぱりしていて美味しい。


「これも美味しい」


 あか姉はチョコレートチュリトス・レモン。


「ゆきちゃん、これも」


 かの姉はチョコバナナ。


「これも食え」


 より姉はシンプルにメープル。


「ってそんなにいっぺんに差し出されても食べられないってば!」


 四方からチュリトスを差し出されてる姿は、スキャンダルを起こした政治家がマイクを向けられてるみたいだ。


「記者会見じゃないんだから。順番に食べるってば」


「でも一番おいしそうなのはゆきの選んだやつだよな」


 わたしが選んだのはドルチェチュリトス ・アップルパイフレーバー。クリスマス時期ならティラミスフレーバーもあるらしい。食べてみたい。


「なんかゴージャスだよね。一口ちょーだい」


 もとよりシェアするつもりだったので、快く差し出す。


「あーむ。うん、めっちゃ美味しいね!」


 けっこう大口でいったね。4分の1くらいなくなったよ。


「あたしにもくれ」


「わたしもいただきますね」


「食べる」


 次々と大口で食べていき、残ったのは小指の先程度。ひどい。


「うぅぅ。楽しみにしてたのに~」


 笑い転げる姉妹たち。笑い事じゃないよぉ。


「あははは。そんな悲しそうな顔するなって。すぐそこだから新しいの買ってきてやるよ。持っててくれ」


 自分のを手渡してくるより姉。新しいの買ってくれるならまぁいいか。


「わたしも買う!」


「わたしも買ってきますね」


「買う」


 いや、そんなに食えねーよ。

 みんなで手を挙げてくれるのは嬉しいけど、それだけ買って来たらもはや嫌がらせだよ。


「一本で十分だから。気持ちだけ受け取っておくね」


 より姉が買ってくるまでの間、ターキーレッグにかぶりつく。スモーキーな香りに、程よく塩気のきいたジューシーなお肉が病みつきになりそう。


「うまうまぁ! 肉汁じゅわぁでたまんない!」


「あ、ちょっと欲しい!」


「待て待て。ひよりも同じの買ってたでしょうが」


 そう何度も同じ手をくらってたまるか。ひよりとあか姉も買ってたの知ってるんだからね。


「ゆきちゃんの持ってるやつが美味しそうなんだもん」


 なんだその理屈は。同じ商品だよ。


「味は変わらないから。自分のを食べなさいって」


「一口あげるから齧らせて」


 あか姉が横から自分のターキーを差し出してきた。


「え、それって意味あるの?」


「いいから。んっ」


 なんだかよく分からないけど、プラマイゼロだよね。まぁいいか。ぱくっ。


「うん。美味しい。でもわたしのと同じだよ?」


「なるほど、その手があったか! ゆきちゃん、わたしのも食べて!」


 ひよりも差し出してきたので、よく分からないけど黙って食べた。


「これでいいの? じゃ、わたしのも一口どーぞ」


 自分の分も食べてもらおうと差し出したんだけど、2人とも首を横に振る。意味がわからない。


「これじゃわたしがつまみ食いしただけでしょ?」


「えへへ。それがいいんじゃない。ゆきちゃんの齧ったターキーレッグ。それだけでプライスレスだよ」


「な!? 目的はそっちだったか!」


 チュリトスはぽろぽろ崩れるからまだマシだけど、お肉はがっつり噛り付く。途端に恥ずかしくなったので取り上げようとしたけど、すでにひよりは噛り付いていた。しかもわたしの食べたところを狙って。


「楓乃子。半分こ」


 やめて、わたしの齧ったところをシェアしないで!

 かの姉と分け合って食べるあか姉。仲良いよな、この姉妹。


「買ってきたぞ~。って何やってんだ? ゆき真っ赤になってるじゃねーか」


 より姉が帰ってきたので、黙ってターキーレッグを差し出した。


「おぉ? なんだなんだ?」


「いいから食べて」


「お、おぉ。ん、美味いな」


 遠慮がちに食べるより姉。これでみんながかぶりついたから少しはマシになるかと思ったんだけど……。余計に恥ずかしくなっただけだった。


「何やってんだおまえらは。でもほんと美味いなコレ。もう一口食べていいか?」


 こくこく。


「なんで黙ってんだ。まぁいいや。いただきます」


 髪を耳にかけ、お肉へかぶりつくより姉。なんだか色っぽく見えてしまうのは気のせいだろうか。

 ついつい口元を注視してしまう。もぐもぐと咀嚼している。ドキッとしたので慌てて目を逸らし、手に持ったターキーに視線を移した。

 ここに、より姉の口が触れたんだよね……。ドキドキするよぉ。


「もう! あか姉たちのせいだかんね!」


 やけになったわたしは勢いよくかぶりついた。


「おぉ? なんだ急に。よく分かんねーがゆっくり食べろよ」


 やけ食いに近い状態で一気に食べきったので、味がよく分かんなかったよ。


 明日は誰にもあげないでゆっくり食べよっと。

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