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雪の精霊 ~命のきらめき~【PV50000突破☆感謝!明日完結】  作者: あるて
第3章 拝啓、未来のわたし

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第139曲 最後の夏休み

 結局、エンドレス企画は66曲を唄った時点で終了。

 ひよりがわたしの疲労を訴えかけ、それを心配したリスナーさん達が正解をあっという間に選んだ時は心底驚いた。


 熱心にコメントをくれる人というのは同接で見てくれる人の中でも一握りだけど、わたしがVtuberの頃から応援してくれている方が多い。

 当然付き合いが長いわけで、わたしに対する理解度は高いだろう。だけど単純にファンだからというだけで済ますには足りない。


 わたしの想いを理解し、共有してくれるからこそ思考を読むことまでできるんだと思う。


 愛されてるって自信を持ってもいいのかな。ありがとう。



 そしてもうすぐ最後の夏休み。


「進学をしないゆきちゃんはこれで最後の夏休みですし、いろんな思い出を作らないといけませんね」


 7月に入ってすぐのある日、朝食の席でかの姉がそんなことを言い出した。


「思い出ってことはどこかに行くの?」


「そうですね~。夏と言えばやっぱり海でしょうが……」


 かの姉が言いよどむ。


「海に行ってもゆきがしりとりする羽目になるからなぁ」


 より姉の言うとおり。いっつも邪魔が入っちゃうんだよね。


「だったらまた旅行にでも行く? バイトで貯金もしてるから自分の分くらいは出せるよ!」


 ひよりも含めて学生組はアルバイトをしているし、より姉は社会人だからお金の面に関しては問題ないだろう。

 だけど旅行になったら懸念事項がひとつ。


「より姉はもう夏休みとかもないし、休みを取るのは難しいんじゃない?」


「あたしか? 確かにお盆時期は繁忙期になるから無理だけど、7月末から8月頭にかけて交代で1週間休めるぞ」


 なるほど。お盆休みを前倒しで取れるんだね。


「それでどこに行くの? 夏休みだから早めに予約とらないと」


「うーん、また避暑地に行く?」


 確かに涼しくて過ごしやすいから、のんびりするにはいいかも。


「ゆきちゃん最後の長期休暇なんですから、もっと派手なことをしたいですね~」


 派手って何? パーリーピーポー的な?


「遊園地」


「それだ!」


「おぉ、やるじゃねーか茜」


 みんなに褒められてドヤ顔のあか姉。うーん、かわいいな。


「遊園地って言ってもいろいろあるじゃない? どこに行くの?」


 わたしも久しぶりに遊園地へ行ってみたい。


「富〇急ハイランド!」


 ひよりが意気揚々と手を挙げた。あんまり聞いたことのない名前だな。


「てっきりディ〇ニーかと思ってたのに。そこには何があるの?」


「戦慄迷宮! 友達の間でも噂になってるから一度行ってみたいんだ!」


 迷宮ってことは脱出系のアトラクションかな? 戦慄ってつくくらいだから難易度は高そうだ。


「お、おい。本気かひより? あそこにゆきを連れてくのはちょっと……」


 ん? より姉は行ったことあるのかな?


「そこってそんなに有名なの? どんな迷路なんだろ」


「迷路じゃないよ! 世界最大、史上最恐クラスのお化け屋敷だよ!」


 ……は?


 なんだか聞いてはいけないパワーワードが出てこなかった?


「ごめんひより。もう一回言ってくれる? 聞き間違いだよね?」


「だからお化け屋敷だってば。本物の廃病院を使って作られた、1km近くある本格的なアトラクションだよ」


 ふざけるなああああ!!


「ひよりはわたしに何か恨みでもあるの!?」


「やだなぁ。恨みなんてあるわけないでしょ。ゆきちゃんが怖いの苦手なことは知ってるってば。だから世界最恐と言われる場所に行けばショック療法になるかなって」


 ショックで心臓麻痺になっちゃうってば。


「無理ですごめんなさいお断りします」


「泣くほどイヤなら仕方ないかぁ。行ってみたかったのになぁ」


 そんなに遠いわけじゃないんだからお友達と行ってください。わたしは無理です。いろいろ漏れちゃう。


「だったらどうします? ネズミの国に行きますか?」


「どうせならちょっと遠出したくねーか?」


 遠出。九州とか?


「あんまり遠すぎても移動が大変になりますよ。飛行機はひよりちゃんが怖がりますし」


「うん無理」


 お化け屋敷に連れて行こうとしたくせに。ひよりこそショック療法したほうがいいんじゃない?


「搭乗口で動かなくなるよ」


 散歩拒否の犬か。

 リードを引っ張られても必死に抵抗するひより。想像したらちょっと面白いかも。


「なら新幹線か。……そうだ! 大阪に有名なテーマパークがあるじゃねーか!」


「行きたい!」


 意外なことにあか姉が食いついた。

 そっか、映画配給会社が作ったテーマパークだから映像技術に力を入れてるもんね。そっち方面の専門学校に行ってるあか姉なら気になるか。


「大阪なら8月上旬に花火大会もあるね」


 ひよりはさっそくスマホで情報収集しているようだ。


「近くに水族館もあるし、飲食店も豊富だから食べ歩きも楽しいだろーな」


 天下の台所と言われたのは伊達じゃない。高級レストランから庶民の味まで、まさに食い道楽。


「いいですね。ゆきちゃんの好きなスイーツのお店もいっぱいありますよ」


「行く!」


 スイーツと聞いては黙っていられない。


「目が輝いてるぞ。相変わらず甘いもの好きだよなぁ。なんで太らないんだか」


 脳が糖分を欲するんだよ。気にしちゃうから言わないけど。


「だって好きなんだもん。まさに甘い誘惑だよ」


「見てるだけで胸焼けしそうだ」


「だったらひよりとあか姉連れて3人で行くよ?」


 より姉とかの姉は甘いものそんなに好きじゃないもんね。


「わたしは行きますよ。美味しそうにケーキを食べるゆきちゃんを眺めるのは至福の時間ですから」


 食べてるところをじっと見るのは勘弁してほしい。


「あ、あたしだって行くぞ! 美味いコーヒー飲みたいしな!」


「コーヒーないところもあるよ?」


「なんでそんな意地悪言うんだよ~」


 より姉拗ねちゃった。


「あはは、ごめんって。みんなで行こうね」


 なでなでしたら赤くなっちゃった。かわいいなぁ。


「それで、行先は決まったけどいつから何日行くのかが決まってないよ~!」


 そう言ってひよりが飛びついてきた。羨ましいのかな?


「2泊3日くらいでいいんじゃないの? アルバイトしてると言ってもそんなにお金があるわけじゃないでしょ」


 話しながらひよりをなでなで。

 目を細めて撫でられてる姿が猫みたい。かわいい。


「いや、4泊5日がいいな。遊園地で2日、水族館と花火で1日、食べ歩きで1日欲しいだろ」


 それはいくらなんでも無茶じゃない?


「わたしもそれがいい! せっかく大阪まで行くんだから、目いっぱい楽しまないと!」


 一番心配なひよりが賛成してるけども。


「お金大丈夫? 宿泊費だけでもけっこうかかるよ?」


「あ母さんからお小遣いもらえるおかげで、バイト代ほとんど使ってないから大丈夫だと思う!」


 学生時代はあげるってことでより姉以外はまだお小遣いをもらっている。バイトしてるのに、お母さんも甘いなぁ。


「もし足りなかったら言うんだよ。飲食代くらいは出してあげるから」


 4泊って言い出したのはより姉だし、それくらいは許してくれるだろう。


「うん! 足りないようだったらゆきちゃんに借りる! バイトしてちゃんと返すからね!」


 ひよりがそんなことを言い出して驚いた。返してもらうつもりなんてなかったのに。

 見れば他の姉妹も微笑んでいる。


 そっか。末っ子だからと思っていたけど、ひよりもちゃんと自立していってるんだね。

 少し寂しいような気もするけど、これからの事を考えたら喜ばしいことだ。……もう、大丈夫、だね。


「どうしたの?」


 ひよりが顔を覗き込んできた。


「ううん、なんでもない。急がなくていいから、無理しない程度に返してくれたらいいよ」


 もう一度ひよりの頭を撫でつける。


「調べたら花火は8月3日。8月1日に行くのが一番」


「近くのホテルで5名1室がありましたよ」


 ひよりを愛でている間にあか姉とかの姉があっという間に日程を決めてしまった。


「始発ののぞみで出発すれば開園時間に間に合いますね。荷物はホテルに宅配便で送っておきましょう。初日から目いっぱい遊べますよ!」


 手際よく段取りを進めていくかの姉。目をキラキラさせて、よっぽど楽しみにしてるんだろうな。かわいい。

 みんなすごくはしゃいでるなぁ。


「おまえの学生生活最後の夏休みだろ。そんな特別な時期に、思い出を共有できることが嬉しいんだよ」


 盛り上がる姉妹を眺めていたら、より姉がそんなことを言ってきた。


「久々の遊園地が楽しみなだけじゃなくて?」


「それもあるけど、一番はやっぱりゆきと同じ時間を過ごせることだ。みんなが社会人になったら時間を合わせることも難しくなってくるからな。5人で遊びに行くこともなかなかできなくなるだろ。姉妹揃ってゆきと一緒にいられることが嬉しいんだよ」


 ……そうなんだ。そうだね。


 もうすぐみんな自立して、それぞれの人生を歩き出す。それは祝福するべきことであって、悲しむことじゃない。

 こうやって仲良く旅行に行くのも今年が最後かもしれないんだよね。


「うん、いっぱい楽しまないと、だね」


「ゆき……」


 より姉は何か言いたげな顔をしていたけど、わたしの顔を見つめたまま言葉を発することはなかった。

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