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雪の精霊 ~命のきらめき~【PV50000突破☆感謝!明日完結】  作者: あるて
第3章 拝啓、未来のわたし

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138/190

第138曲 お見通し

 翌週の配信日。


 告知通りに『ゆきちゃんオンステージ! 全部当たるまでエンドレス大会』を開催した。


「ゆきちゃんすごい! 同接300万軽く超えてる!」


 今日のサポート役を務めてくれるひよりが言う通り、過去最高水準のリスナーさんが集まってくれたんだけど。


「さっそく集計が上がってきてるね。今のところ1位は『Go ahead』か。わたしが選んだベストにも入ってるよ。みんなありがとー!」


 一発目からヒットするとは幸先がいい。これなら無茶な曲数を唄わなくても済むだろうか。


「ゆきちゃん、2曲目……」


 ひよりの言葉に促され、もう一度集計に目を落としてみると。


「なになに……『hi-ho!』……ってこれネタで作ったお遊び曲! 動画投稿もしてない一度唄ったきりの曲なのによく覚えてたな!」


 よく見たら3位以降にもマイナーな曲がずらり。

 ゆきちゃん選考の曲にかすりもしないまま10曲を超えてしまっている。


「すでに20曲確定してしまってるんですけど。マジか」


「あはは。ゆきちゃんがんばって!」


 これにはひよりも苦笑い。


「でも選ばれてる曲って全部、再生数があんまり伸びてない曲ばっかりなんだよね。それだけ今日来てくれてるリスナーさんはディープなところまで見てくれてるっていうことでしょ。そこは純粋に嬉しいから、頑張って唄いきろうって気持ちになる!」


 ひよりは最初心配そうな顔をしていたけど、わたしの言葉を聞いて笑顔になった。


「そうやって何でもポジティブに捉えられるゆきちゃんはすごいよね。頑張って欲しいけど、でも無理はしないで。これからも唄っていくんでしょ」


 感心し、励ましてくれながら心配もしてくれる。そんな可愛い妹の頭を笑顔で撫でつけ、モニターに向き直った。


「全ての曲を愛してくれるリスナーさんのためにも、今日は頑張って唄い続けるよ! みんなもどんどんリクエストしてね」


【さすがゆきちゃん】【いつもリスナーのことを想ってくれるよね】【限界だと思ったらすぐに言うんだよ】【彩坂きらり:応援してるよ】


 怒涛の勢いで流れていくコメントはどれも温かいものばかりで、わたしの想いをさらに強くしてくれる。きらりさんもありがとう。

 やっぱりわたしは人々の楽しそうな笑顔に支えられていると再認識した。


「これからも唄っていきたいから、喉を壊したりしないように気を付けて頑張るね!」


【体大事に】【よかった。突然のサービス企画だから引退するのかと焦った】【日向キリ:そう言われると卒業イベントみたいですね】


 突然打ち込まれた『引退』、『卒業』の文字に驚いてしまった。心のどこかで今までの活動の区切りという気分があったから、それを読み取られてしまったのだろうか。


 ほんと、リスナーさんはよく見てるなぁ。


「わたしももうすぐ卒業だからね。生徒会長も任期満了だし。だからこれを機に一度こういった企画でリスナーさんに恩返しができたらなと思ったんだ! 引退なんてしないから、これからも応援してね!」


 リスナーさんに向けての言葉だったけど、隣にいるひよりも安心してくれているみたいだ。


 みんな心配性なんだから。まぁ全部わたしが悪いんだけど……。


 すでに確定してる曲数から考えてもけっこうな長丁場になりそうだったので、早々に歌の準備にとりかかった。

 髪を後ろで結んでからヘッドセットを装着し、激しい動きで落ちてしまわないようにしっかりと固定する。


 最初に唄う曲はわたしがVtuberとして活動開始したときのデビュー曲だ。一発目にこれを選ぶなんてリスナーさんもやるなぁ。


「それじゃ、どこまで続くのかわかんないけど行けるとこまで行ってやる! わたしの歌声をたっぷり聴いてください!」



 3時間が経過した。唄った曲数はすでに35曲。


 世間ではカラオケでフリータイムを利用して100曲以上唄うような猛者もいるらしいけど、ダンスを踊りながらでは体力的にもけっこうキツイ。

 1,2曲では息を乱すこともないわたしが既に肩で息をしている。全身汗だくだ。


「ゆきちゃん大丈夫? すごい汗かいてるけど」


 ひよりがタオルとペットボトルの水を差しだしながら、心配そうに覗き込んできた。


「さすがにこれだけ踊れば汗くらいかくって。でも大丈夫! まだまだいける!」


「よかった。もう50曲まで埋まってるけど大丈夫そうだね」


「ごじゅ……」


 思わず絶句してしまった。あと15曲は決定事項か。


「ちなみにわたしが選んだ曲とマッチしたのは?」


「んーとね。4曲……」


 10曲選んだから、あと6曲かぁ。まだ半分も行ってなかったのね。


「こ、これは100超えコースかなぁ」


「途中でタオル投げた方がいい?」


 セコンドか。格闘技じゃないんだから。


【そろそろキツイ?】【無理しないで】【ダンスはなくてもいいんじゃない?】


 リスナーさんもそろそろ心配する声が多くなってきてる。さすがにこれだけ汗かいてたら疲れてるように見えるよね。


「みんなありがと。でもまだまだ大丈夫だよ! こうやって途中休憩も出来てるし、楽しいからいくらでも体が動いちゃう」


 正直なところ疲労がないかと言われれば嘘になってしまうけど、楽しいという気持ちは本当だ。

 感謝と喜び、その2つの想いがわたしを突き動かしている。


「それじゃ、第二部、いってみよーかー!」


 * * *


 本当にすごいなぁ、ゆきちゃん。


 わたしなんて1曲踊るだけでも汗いっぱいかくのに、50曲を超えてもそのパフォーマンスは衰えない。

 それどころか動きがさらに研ぎ澄まされていってるような気がする。それにすごく楽しんで唄っているのが伝わってくる明るい表情。


 歌も踊りも、本当に好きなんだろうなぁ。生き生きとした体から飛び散る汗もキラキラしていて、本当にキレイ。


 だけど動きが洗練されていくにつれ、不安な気持ちが頭をもたげてくる。

 高まる集中力と力強いパフォーマンスはどんどん鬼気迫るものになっていくようで、このまま燃え尽きてしまうんじゃないだろうかって。


 ちょうど60曲目が終わったところで小休止。

 汗を拭いて水分補給をしているけど、息が荒くとてもしんどそうだ。


「ねぇみんな、そろそろゆきちゃん終わらせてあげてほしいな。ゆきちゃんってあんなんだから、ほっといたらいくらでもリクエストに応えると思うんだ」


 進行はわたしに任せて今は体力回復に努めているから、ゆきちゃんに聞こえない今がチャンスだと思ってリスナーさんにお願いした。


【全然疲れてないように見える】【体力すごいよね】【日向キリ:何をとっても一流です】


 見た感じではそう思えるかもしれないけど。


「ううん、ゆきちゃんってそんなに体力あるほうじゃないんだよ。マラソン苦手だし。ただみんなの喜ぶ顔が見たい、それだけで体を動かしてると思うよ」


 いつだってそうだ。自分のことは後回し。

 誰かを守るため、喜んでもらうためなら無茶な事でもやり遂げようとしてしまう。辛いって弱音を吐くこともない、しんどそうな顔を見せることもない。


 あの強盗事件の時もそうだった。自分の限界を超えた力を出すと、全身が悲鳴を上げて動くのも辛い状態になってしまう。それでも平然とした表情でいるのがゆきちゃんなんだ。


「限界が来ても認めようとしないおバカさんなんだよね」


【あー】【彩坂きらり:あ】【ひよりちゃん後ろ】


 後ろ?


「誰がおバカさんだって?」


「ひょっ!」


 突然声をかけられて思わず跳ねた。い、いつの間に後ろに!?


「わたしが休憩してる間にリスナーさんと悪だくみ?」


「人聞き悪いなぁ。ゆきちゃんの体が心配だから相談してたんだよ」


 でないとあなた持ち歌を全曲唄っちゃうでしょ。


「心配してくれてありがとね。でもこれくらいは大丈夫だよ」


 ほらやっぱり。呆れ顔でリスナーさんに向き直った。


「ね? わたしの言ったとおりでしょ? これだけ疲れた顔をして何が大丈夫なんだか」


【うーん】【ひよりちゃんの言うとおり】【彩坂きらり:疲れ顔だね】【日向キリ:強がりだね】


 リスナーさんから見ても疲労困憊なのに。


「この頑固頭には大丈夫って言葉しかないみたいなんだよね。無理な事でも無理って弱音吐かないから、すぐに無茶しちゃう」


「頑固頭って。ひどいなひより~」


 うっさい。わたしたちの心配も考えない人は頑固頭で十分だよ。


【これはゆきちゃんの負けだな】【彩坂きらり:意地っ張り】【疲れたならちゃんと言うこと】


 リスナーさんからのコメントに、ゆきちゃんが目を丸くした。


「えぇぇ。みんなわたしの味方じゃないの? みんなに歌を聴いてもらえてとっても楽しいよ?」


【もちろんゆきちゃんの味方】【味方だから心配するんだよ】【それとこれとは話が別】【彩坂きらり:ゆきさんの体が一番大事】


「みんな……」


 さすがのゆきちゃんもリスナーさんにも心配されてはいつものように意地を張れないでしょ。


「で、でも。まだ全曲正解してないから、ちゃんと当たるまでは唄い続けるからね」


 まだ食いつくか。なんでこんなに負けず嫌いかなぁ。

 だけど、リスナーさんの方が一枚上手だった。


【ちょっと待ってね】【リクエストやり直すからね】【ゆきちゃんが選ぶのはこのあたりだろうね】


 みるみるうちに集計が書き直され、上位に表示される曲がゆきちゃんの選んだものと一致していく。

 やがて残っていた6曲分が全部表示されたところで、集計がぴたりと止まった。


「うそ……」


 ゆきちゃんは感極まったかのように両手で口を押さえている。

 わたしも正直驚いた。


 リスナーさんがゆきちゃんの選んだ曲を寸分たがわず当ててしまった。それってどんな確率なんだろう。


 だけどこれは決して偶然なんかじゃない。それだけゆきちゃんがリスナーさんに理解されているってことなんだと思う。


「……わたしってそんなに単純なのかな」


 そんなこと言っても照れ隠しだってバレてるよ。


「そうじゃないでしょ。ゆきちゃんがそれだけ愛されてるんだよ」


「……うん」


 ゆきちゃんが鼻をすすった。

 そりゃ嬉しいよね。よかったね、ゆきちゃん。

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