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雪の精霊 ~命のきらめき~【PV50000突破☆感謝!完結まであと2話】  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第135曲 ワインで乾杯

「……」


「どうしたんだ?」


 どうしたんだじゃねーよ。


「より姉、何の映画を観ようとしてるの?」


「ん? ホラー映画だが?」


 おい。ふざけんな。


「えっとー。わたしが怖いの苦手なことは知ってるよね? わざとかな? 天然さんかな? かなかな?」


「目から光が消えてるぞ。笑顔が怖いっての」


 当たり前だ! なーんでデートにホラーなんだよ! ムードもへったくれもないな!


「帰っていい?」


「ダメに決まってるだろ。もうチケット買ったしな」


 なん、だと?


 手渡してきたチケットには『死霊の臓物』と印刷されている。ガチもんやんけ!


「ちびるよ?」


「大丈夫だよ。今すっげー流行ってるし、そんなに怖くねーと思うぞ。たぶん。きっと」


 そこは言い切ってくれないかなぁ!


「アホだ。アホすぎる……。デートにホラーとか、頭沸いてるとしか思えない……」


「そこまで言うことねーだろ。怖かったらしがみついてくれていいからよ」


「膝の上に乗ってもいい?」


「そこまでか。さすがにそれはマズいんじゃね?」


 もうダメだ。おむつ履いたほうがいいかも。


「耐えられないほど怖かったらまたピーマン尽くしだからね」


「おほっ。勘弁してくれよー」


 勘弁してほしいのはこっちだっての。どうか恐怖度が低いものでありますように……。



 そんなわたしの祈りは届くことなく。


 冒頭から登場人物がドーングシャグシャ。ゆ、油断してた。全部見ちゃったよ。

 めっちゃスプラッター系やんけー!


「ひいぃぃぃ……」


 映画館で大きな叫び声をあげるわけにもいかず、より姉にしがみついて必死に恐怖と戦うしかない。


「く、苦し……」


 より姉が虫の息になっているような気もするけど、そんなことを気にしている余裕もない。自業自得だからなんとか耐えて。

 うぅ、もうスクリーンを見ることなんて出来てないけど、音を聞いてるだけでも十分に怖いよぉ。


「目をうるうるさせて。なんだこの可愛い生き物」


 より姉がなんか言ってるけど、まったく頭に入ってこないよ。さっき食べたパフェが全部出ちゃいそう……。


「よしよし、怖いんだね~。あたしが守ってやるからな~」


 より姉が頼もしい。

 耳をふさぎ、より姉の胸に顔を埋める。視覚はもちろん、聴覚も遮断してしまいたいんだけど、映画館の大音量では完全にシャットアウトすることもできない。


 目を瞑って音だけを聞いているといろいろ想像してしまって怖いんだけど、スクリーンを見たらもっと怖い思いをするから目を閉じてるしかないし……。

 唯一の救いは優しく背中を撫でてくれるより姉の手。ちょっと安心するし、なんだか頼りがいがあってドキドキするよ。


「よしよし、そんな訴えかけるような目で見ちゃって。……吊り橋効果グッジョブ」


 何をブツブツ言ってるの? もっと撫でてくれないとヤダよ。ぐりぐりぐり。


「はぁ、可愛い……。頭を擦り付けてくるのが猫みてー。この時間がいつまでも続いてほしー」


 まだ終わんないのかなぁ。暗いよ怖いよ切ないよ~。

 またグチャグチャ音がしてるよぉ。今晩眠れなくなっちゃうってばぁ。


 左腕にはめたプルミエールで時間を確認。まだ30分しか経ってないよぉ! 早く終わって~!



 ひ、ひどい目に遭った……。


 ようやく血みどろ血しぶきの世界から解放されて、ぐったりしてしまうわたし。


「はぁ、至福の時間だったぁ。もう終わっちまったのかぁ」


 何言ってんだコイツ!? あんな時間がこれ以上続いたら精神崩壊しちゃうよ!


「わたしにとっては地獄の時間だよ。なんでより姉はそんなに元気なのさ」


「怯えるゆきが可愛くてさ~。小動物みたいで愛らしかったぞ」


 そんな愛でられ方いらない。


「普段から可愛くするんで許してください……」


 もう見栄も外聞もないよ。こんな怖い思いするくらいならなんだってするよ。


「でもなぁ。目にいっぱい涙をたたえてぷるぷる震えてるゆきがなぁ。癖になりそうだ」


 やめてくれぇ!


「お弁当にピーマン入れるのやめるから許してぇ」


「弁当だけかよ! 晩御飯もやめてくれ」


「それは無理」


「なんでだ!?」


 冷静になって思い出したんだよ。誰がこの地獄の世界に連れてきたかをね。

 この恨み、晴らさでおくべきか。


「この後、ディナーを予約してるんだよね。ごめん、ちょっと時間をくれないと何も食べれない」


 スプラッター系を観てすぐに食事ができるほど、たくましく育ってないもので。


「大丈夫だ。こんなこともあろうかと思って予約は1時間後にしてあるからよ」


 計画的じゃねーか! わたしが怖がるの分かってて……。


「めちゃくちゃ可愛かったぞ。保護欲を刺激されるっていうか、守ってやりたくなった」


 あべこべだよ。


「男の子としての尊厳を叩きつぶしにきてるよね。わたしを乙女化させてそんなに楽しい?」


「楽しい」


 即答か。


「あのね、お忘れですか? あなた方も女性なんですよ? わたしを乙女化させてもそこに待っているのは百合ってことになるんですよ?」


「生やすか」


 何をだよ。


 下ネタヤメロ。生えねーから。


「なんでわたしに乙女を求めるの?」


「めっちゃ可愛いから。なまらめんこい。ちゅらかーぎー」


 全部同じ意味だね。


「どうせなら男らしいわたしに迫られたいとかないの?」


「それはゆきじゃない。そんなの求めてない」


 なんでだよ! もーとーめーろーよー!


「ま、どうでもいいや。そろそろレストランに向かうか」


 どうでもいいって言われちゃった。

 ひどいよ。こんな格好してても心は男の子なのに。


「そんな顔するんじゃねーよ。どんなことになってもあたしが一生愛してやるからよ」


 そう言って肩を抱き寄せるより姉。こんなことをスッとできる辺りはわたしよりも男前だよなぁ。


 上等だ。今日はこれから目いっぱい乙女ムーブをかましてやろうじゃないか。開き直ったゆきちゃんを見るがよい。

 肩に回った手にそっと手を重ね、頭を傾けてより姉に寄り添った。


「おおぅ。なんだ急に。可愛いじゃねーか」


「負けてらんないからね。もっとときめかせてね、王子様」


「どこに負けず嫌い発揮してんだよ。まぁいいけどな。ときめきすぎて乙女から戻ってこれなくしてやるよ」


 決して離さないとばかりに力を込めてくるより姉。

 その体は熱く、抱かれた胸から伝わる鼓動は高鳴っている。


「心臓速いよ。緊張してるの?」


「緊張なんてするかよ。デートが嬉しくてテンション上がってるだけだ」


 少し歩きにくいけど、より姉が離してくれないので肩を抱かれたままレストランへと向かう。

 周囲の人からチラチラと見られてるんだけど、仲のいいカップルに見えてるのかなぁ。



 より姉に連れてこられたのはイタリアンレストラン。


 イタリアンのコース料理なんて洒落てるじゃん。


「より姉やるね」


「だろー? まかせとけっての」


 めっちゃドヤ顔。自信満々だけど、マナーは大丈夫なのかな。


 テーブルにつき、少し待っていると料理が運ばれてきた。

 アミューズ(前菜)で出されたのは白身魚のカルパッチョ。これは鯛かな。

 より姉は白ワインを飲んでいる。魚料理には白が合うらしいね。


「うまい! 料理とワインがいい具合に合ってるな。ゆきも飲むか?」


「未成年にお酒を勧めたらダメでしょうが」


 もう酔ってるの?


 でも本当に美味しい。レモンの酸味が魚によく絡んでいて爽やかな味。簡単にできるし、家でも作ってみよう。オリーブオイルは体にもいいしね。


 次はメイン料理。普通はメインにプリモかセコンド、どちらかを選ぶのだけど、食べ盛りだしお腹も空いているので両方注文した。

 プリモで出されたのはカルボナーラ。より姉はボロネーゼ。ワインはミディアムボディの赤。


 フォークで数本を取り、一口サイズに巻き上げていく。うん、これも美味しい。


「ゆき~。どうやったらそんな上手に巻けるんだ?」


 より姉に呼びかけられて視線を向けた。


「んな! なんでそんなことになるのかなぁ」


 皿に乗っている半分くらいの量がフォークに巻き付き、バカでかい塊になっている。そんなの口に入らんでしょ。


「お皿の端を使うの。2,3本取り分けたらちょうど一口分くらいになるよ」


「こ、こうか? おぉ、できた! さすがゆきだな」


 普段どうやってパスタ食べてるんだろう。食事中に笑わせるのはやめて欲しい。


 セコンドに出てきたのは牛フィレ肉。さすがにナイフの使い方は教えなくてもいけるでしょ。フルボディの赤は渋味があるけど飲めるのかな。


「ワインの渋味がステーキによく合うな~」


 ステーキはイギリス料理なんだけどね。まぁお肉のグリルだから同じだけど。


「ちゃんと野菜も食べなよ」


 コントルノで添えられたサラダもオリーブオイルのドレッシングがかけられていて、フルーティーな甘みとオリーブの香りが溶け込んでいる。


「ゆき~。ピーマン食べて」


 器用に選り分けてポイポイとわたしのお皿に放り込んでいく。ピーマンじゃなくてパプリカなんだけどなぁ。甘くて美味しいのに。


 それにしてもグラスワイン3杯目、大丈夫なのかな。フルボディは度数高いよ。


「ふふふ。なんだか気持ちよくなってきた~」


 だよね。お酒なんて滅多に飲まないくせに。

 ほんのりと赤くなり、上機嫌なより姉。顔に締まりがなくなってるんですけど。


「大丈夫?」


「ん~? 酔ってね~ぞ~」


 酔っ払いはみんなそう言います。


 食事が終わり、デザートにジェラートを注文したときワインのおかわりを頼んでいた。本当に大丈夫かなぁ。


「お姉さんは大人だぞ~。これくらいいけるっての~」


 会話が間延びしてる時点で大丈夫じゃないでしょ。


「んふふ。相変わらず甘いもの好きだな~。美味しそうに食べてるの見てたらあたしも幸せな気分だ~。あたしのもやる!」


 スプーンに山盛り乗せて突き出してきた。頭痛くなるっての。


「あんだぁ。あたしのは食べられないのかよ~」


 あぁめんどくせー。


 酔っ払いに逆らっても仕方ないので、スプーンに乗ったジェラートの一部分だけを口に入れた。冷たくておいちぃ。


「おぉ。ゆきと間接ちゅ~」


 あっ。全部口に入れた。


「頭いたい~」


 出した。


「残り食え~」


 は? なんかスプーンの上にでろーんってなってるけど。それを食えと?


「お姉さまのアイスが食えないのか~」


 ジェラートだよ。アイスより低カロリーだよ。


「食え~」


 ほんとめんどくせー。

 はいはい、食べますよ。あむっ。……なんかぬるい。


「んふふ。あたしのよだれいっぱ~い。食べやがった~」


 吐き出していい? おめーが食えって言ったんだろーが。


「は~気持ちい~。ワインおかわりしよっかな~」


「おいヤメロ」

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