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雪の精霊 ~命のきらめき~【PV50000突破☆感謝!明日完結】  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第131曲 策士、依子

「門外不出のゆきの写真だぞ! 1枚100円な!」


 本当に売りつけやがった。なんて姉だ。


「わたし買います」


「買う」


「わたしもー!」


 こらこら、口車に乗らないの。かの姉はその1万円札をしまいなさい。


「そんなの買わなくていいよ。データはこのDVDに焼いてもらったから」


「あ! てめーゆき! 商売の邪魔すんな!」


 身内相手に商売すんな。


「社会人が学生からお金を巻き上げるのは黙って見てられません。そんなにピーマン食べたいの?」


「ごめんなさい、そろそろ許してください」


 たった1日で音を上げるなんて、どれだけ嫌いなんだか。


「くっそー。せっかく小銭稼ぎができると思ったのに」


 かの姉が出してたのは小銭なんかじゃなかったけどね。


「だがしかーし! 誌面が出来上がったら買うよな!?」


「「「買うー!」」」


「さすが我が妹たち! 1冊3千円な!」


 高いわ! ハイブランドじゃあるまいし、高くても千円が相場でしょうが。

 だからかの姉は払おうとしない!


「はーい、それもダメでーす。雑誌は献本をもらってきてあげるからねー」


「ゆきー!」


「より姉はお弁当も緑色になるね」


「ふぐっ」


 黙った。こうなるって分かってただろうに。


 それにしてもなんで急にお金を欲しがるんだろう? 社会人になって給料ももらってるから、困ってるってわけでもないでしょ。

 食費として家にいくらかお金を入れてるみたいだけど、手元にはそれなりに残ってるはず。


「なにか欲しいものでもあるの?」


「うーんと、そういうわけでもねーんだけどな……。それよりゆきさん、未遂で済んだんだからお弁当にピーマンは勘弁してくれませんかね?」


 誤魔化した? なーんか怪しいな。何かを隠してる感じ。


「未遂だったから1日だけで勘弁してあげる」


「1回は緑色なのかよ! 容赦ねーな!」


「目的を教えてくれたらナシにしてもいーよ」


 さぁ吐け。


「うく……」


 たじろぐより姉。なんだか顔が赤いような?


「ゆ……と、……ト……たいから……」


 うん? ボソボソ言ってるから聞こえない。


「ごめん、聞こえなかった。なんて?」


「だから! ゆきとデートしようと思って!」


「デ……!」


 真っ赤な顔でそんなことを言われたら、こっちまで顔が熱くなってしまう。


「より姉、ゆきちゃんとデートするの!? いいなぁ、わたしも一緒に行きたーい」


「わたしも行きたいです」


「行く」


 あか姉は決定事項? まぁそりゃみんなそう言うよね。


「ばか! みんなで行ったらデートにならねーだろうが!」


 だね。これはより姉が正しいかも。


 それにしてもなんで急に?


「お前らはいいじゃねーか。一緒に学校も通えたし、ゆきと一緒にいる時間が長かっただろ? あたしだってゆきとの思い出が欲しいんだよ。もうすぐ学生じゃなくなっちまうし」


 あぁ、より姉だけ年が少し離れてるから。寂しい思いをしてたんだね。

 それにしても学生だと何かあるんだろうか?


「別にそんなに急がなくても。わたしが学生だからって何かあるの?」


「セーラー服」


 ? なんか聞きなれない言葉が出てきたような?


「ゆきにセーラー服を着せてデートがしたい!」


「アホか!」


 真剣に考えて損した。何が悲しくて女装で姉とデートせにゃならんのだ。


「あーわたしもゆきちゃんのセーラー服見たいー」


 ひよりまで。ほんと何なのこの姉妹。


「あたしが男装したらいいか?」


 そういう問題じゃない。


「その歳で女子高生連れてたら誤解されちゃうよ?」


「そんなおっさんにならねーよ!」


 うるさい、却下です。


「ゆきー頼むよー。もう衣装は用意してあるからよー」


「むー揺さぶるなー」


 もう用意してあるって、どんだけ用意周到なんだ。何がなんでも着せる気満々じゃないの。


「わたしにそんな恰好させて、どこに行くつもりなの?」


「んーフレンチのレストランとか」


 セーラー服でか!?


「その後は夜景のキレイな海辺の公園も行きたいな」


 だからセーラー服! 場違い!


「より姉、ドレスコードって知ってる?」


「知ってるぞ。正装じゃないといけないってやつだろ? セーラー服も正装じゃねーか。冠婚葬祭に着て行けるんだから」


 おいおい、大丈夫か? ファッションデザイナー。


「……あははは!」


 突如笑い出したのはなんとあか姉。


「ひひひひ……! アホだ! アホすぎる! あはははは!」


 だよねぇ……。あか姉をここまで笑わせるなんて相当だよ? より姉。


「何がおかしいんだよ~」


「だって! ドレスコードで、セーラー服って! あははは! 死ぬ!」


 よく見たらかの姉とひよりもお腹抱えてる。声にならないほど可笑しいのね。


「依子さん、セーラー服はドレスコードに引っかかりますよ?」


 すごく苦しそうなかの姉。涙目になってるよ?


「より姉の情報網はどうなってんの?」


 きついな、ひより。言いたいことはわかるけど。


「なんだよ、みんなして寄ってたかって~。ちょっと知らなかっただけじゃねーかよ~」


 あらら、より姉しょげちゃった。なんだか可哀想になってきた。

 もう、しょうがないなぁ。


「ほら、いじけないの。知らないことは恥じゃないよ、学べばいいんだから。知らないまま会社で笑われるよりは、ここで知ることができてよかったって思うでしょ?」


 より姉だって外で恥をかくより、家族に笑い飛ばしてもらった方が気も楽だろう。

 そう言って肩に手を置くと、捨て猫のような目で見上げてきた。ヤダ可愛い。キュンときちゃう。


「ゆき……」


 そんなに目をうるうるさせてたら、もっと可愛く見えるじゃない。


「なーに?」


 あまりにも愛らしくて、優しい声色になってしまう。


「セーラー服着てくれる?」


「ヤダ」


 まだ言ってんのか!


「なんでだよ! この流れは『仕方ないな~』って着てくれるパターンじゃねーのかよ!」


 それとこれとは話が違う。


「なんでわたしが恥をかかないといけないの。他のドレスなら着てあげるから、そっちで我慢してよ」


「……言ったな?」


 ん? なんだか様子が変わった?


「今みんな聞いたよな? 他のドレスなら着てくれるって」


 おんやぁ? おかしな流れになってきたぞ。


「聞きましたよ~」


「ゆきちゃん言ったね」


「聞いた」


 みんなも一緒になってなに? わたしなんか間違えた?


「ドレスもちゃんと用意してあるから! それ着てあたしとデートな!」


 な! 用意してあるだと? しまったこれはドア・イン・ザ・フェイス! 最初に大きな要求を突き付けて、断られた後に本命の小さな要求を提示する「返報性の原理」を利用する手法!


「説明乙。ともあれ言質は取ったからな! あたしの選んだドレスは着てもらう! そしてデートだ!」


 してやられた……。まさか今までのも全て演技だったというのか……。


「セーラー服がドレスコードに引っかかるのも知っていたの……?」


「それは知らんかった」


 知らんのかい!


「セーラー服は家の中でいいから着てくれよな?」


 ちゃんとそっちも用意してた!

 まったく、どこまでが本気なんだか。


「はいはい、わたしの負けです。セーラー服でも迷彩服でも着てあげますよ」


「迷彩服は今度用意する」


 すんな。


「その代わりお弁当にピーマン1週間ね」


「きたねーぞ! あたしの体が緑色になったらゆきのせーだかんな!」


 それくらいで緑色になるなら見てみたい。


「しかしゆきとデートかぁ。ふふふ、給料全部はたいても惜しくねーなぁ」


 どんな高級レストランに連れていくつもりなんだ? 政治家御用達みたいなとこに行くのか?

 もう、幸せそうな顔しちゃって。締まりのない顔。


「お金がしんどいならわたしも出すよ?」


 まだ学生だけど、経済力だけで言えばわたしが全部出してもおかしくない。男だし。


「ばか。それじゃ意味がねーだろ。エスコートするのはあたしなんだぞ? マドモアゼル」


 誰がマドモアゼルだ。


「何気取ってんの。ドレスコードも知らないくせに」


「それを言うんじゃねーよ。デートの日にはあたしの男前さにメス堕ちさせてやるからな」


 言い方。


「より姉、けっこう男前ムーブ得意だもんね。ゆきちゃんイチコロかも」


 わたしってそんなにチョロいと思われてるの?


「ゆきちゃんならそうでしょうね」


「陥落」


 思われてた。心外だ。


 そしてわたしとより姉がデートすることに、いつの間にかみんな納得してるのね。


「いいなぁ。わたしもゆきちゃんをエスコートしてみたい」


「社会人になったらわたしも申し込みます」


「あと4年」


 みんなの野望に火がついてるだけだった。

 4年後、か……。


「どうした、ゆき? 遠い目をして。もうあたしとのデートに意識が飛んでるのか」


「そんなわけないでしょ。より姉こそ、当日テンパってずっこけないでよ」


「足元には気を付けるから大丈夫だ」


 そういう意味じゃないんだけど……。

 分かってて言ってるのか。実は天然なのかな?


「ばか」


「分かってるよ」


 そんな優しい目をしちゃって。ほんと男前なんだから。

 より姉のエスコート、楽しみにしてるからね。

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セーラー・ドレス・コードいい感じ〜
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