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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第120話 クリスマスイブに妹と

 つきっきりで勉強を教えた甲斐があったのか、ひよりはどうにか赤点回避。


 これで家族全員、心置きなく冬休みを迎えることができるというもの。本当によかったね、ひより。


 そのご褒美ってわけじゃないけど、冬休みが始まればすぐに訪れるクリスマスイブに行う生配信へゲスト出演してほしいとお願いした。


「またゆきちゃんと一緒にみんなの前で踊れるの? やったー!」


 今までわたしのダンス練習にほぼ参加して、一生懸命追いつこうと努力してきたひより。

 その努力は着実に成果をあげて、今では通しで踊れるレパートリーもかなり増えてきた。


 この調子でいけば本当にわたしのチャンネルを受け継いでもらえる日が来るかもしれない。兄バカが過ぎるかな。

 ひよりはひよりで独立して自分のチャンネルを創立してもいい。配信者という道を選ばなくても、独自の道をつかみ取ってくれればいい。


 ひよりがどんな未来を選択するのかを考えるとなんだか嬉しくなってくる。可愛い妹の未来が明るいものでありますように。



 クリスマスイブ特別生配信。


「メリークリスマス! 雪の精霊YUKIが今日もみんなに歌声と幸せをお届けするよ!」


 いつものキャッチフレーズと共に開始した配信はクリスマスということもあって同接も減るだろうなと見込んでいた。


 だけど蓋をあけてビックリ。


 つい先日チャンネル登録者数が500万人を突破したばかりだというのに、同時接続300万!?

 半分以上の人が見に来てくれているなんて、そんなことがあっていいんだろうか。


 クリスマスといえば家族で過ごす人も多いだろうけど、世間では「恋人の日」なんて呼ばれるくらいだから好きな人と過ごす割合も高いはず。

 わたしのチャンネルに登録してくれている人は比較的若い人が多いから、なおさら今日の視聴者は減るだろうと見込んでいたんだけど。


「たくさんの人が見に来てくれたおかげで同接が過去最高を更新したよ! ほんとありがとうね! みんな家族や恋人と過ごさなくて大丈夫?」


 つい心配になって聞いてしまった。余計なお世話だったかな?


【同接よりもリスナーの心配するゆきちゃん優しい】【リビングで家族と見てる】【彼氏と一緒に見てるよー!】【リア充うらやま】


 けっこう多かったのが恋人と一緒に見てるというコメント。次いで家族みんなでという声。


 わたしの配信を恋人同士や家族で仲良く見ている姿を想像するととても心が温まる。一部うらやむ声も混じっているけど。


 普段ならわたしもちょっと羨ましがっていたかもしれない。だけど今日はわたしにも心強いパートナーがいる!


「今日はわたしにも強力な相棒がいるんだよ! ほら、おいで!」


 画面の外に向かって手招きをするわたし。


【誰だ?】【きらりさん? それともまた岸川琴音だったりして】【またYUKIちゃんのアバター被った妹ちゃんかもよ】


 みんないろいろと想像してるみたいだけど、出てきたらびっくりするかな。

 おずおずとわたしのそばに来て、服の裾をチョンとつまむひより。あぁ……可愛い。


「今日は以前も出演したわたしの妹ひよりが、アバターを脱ぎ捨てて出てくれましたー!」


 誇らしげに紹介すると、コメ欄がにわかに騒然とした。


【おお! 生妹ちゃんカワユス!】【以前に一度見たけどやっぱり可愛い!】【不安げなのが小動物みたいでいい……】


 コメ欄に溢れる「可愛い」の賛辞。だよねだよね! やっぱりうちの妹は誰が見ても可愛い!


「えへへ~。わたしの妹可愛いでしょ!」


【なぜにゆきちゃんがドヤ顔w】【そんなゆきちゃんもまた可愛い】【姉バカ】


 姉ちゃうわ。でも今日は許しちゃう。ひよりが一緒で機嫌がいいからね!


「なんとでも言え~。わたしの自慢の妹だからね! 今日はこの後一緒にダンスも踊ってくれるからね!」


 鼻高々な紹介を追えて、ひよりに自己紹介を促した。素顔で出て来るのはあの時の事故を除けば初めてだしね。


「みなさんこんばんわ。妹のひよりです。今日は思い切ってアバターを被らずに出てきてみました。いつもうちの姉がお世話になってます」


 ひより、お前もか。何どさくさに紛れて姉とか言っちゃってんの!

 お兄ちゃんの性別忘れちゃったのかな?


【姉www】【姉って言っちゃったよ】【ゆきちゃんやっぱり女の子だったか】【うん、知ってた】


 ほらまたコメ欄が盛り上がっちゃったじゃないの。知ってたってなんだ。女の子じゃねーよ。


「誰が姉だ。お兄ちゃんのことをそんな風に言うなんてひどいなーもう」


【ひどいなと言いながら締まりのない顔】【デレデレ】【どれだけ妹好きなんだか】【家族思いのゆきちゃんらしい】


 うっさい。


「うそうそ。いつもゆきちゃんがお世話になってます! わたしにとっても自慢のお兄ちゃんです!」


 そう言ってぴょんと飛びついてくるひより。可愛すぎて倒れそう……。


 でもだんだん緊張もほぐれてきたようでよかった。


 そこからは姉妹……じゃない、兄妹トークで場を盛り上げながら楽しい時間が過ぎていき、すっかりひよりの緊張もほぐれた頃にはもう歌の時間になっていた。


 うん、リラックスできたようだしよかった。これならひよりも存分に実力を発揮できるだろう。


「じゃーそろそろ歌とダンスの時間だね。みんな、わたし達の息の合ったダンスを楽しんでね!」


【おー楽しみ!】【初めての共同作業だね】【結婚式かw】【姉妹の絆を見せておくれ】


 やめなさいって。ほら、結婚式って言葉に反応してひよりが赤くなっちゃったじゃないか。せっかく緊張をほぐしたってのに。


「ゆきちゃん! 初めての共同作業頑張ろうね!」


 ふんすという音が聞こえそうなほどに鼻息荒く迫ってくるひより。うん、心配いらないね。

 気合も入ったようだしなにより。



 ステージに立ち、曲が始まるのを待つわたし達。目を見合せ、お互いの呼吸を計るかのようにうなずき合う。いい笑顔だ。


 イントロが始まり、すっかり体が覚えている振り付けをリズムに合わせて丁寧に、かつ大胆に体を動かして披露していく。


 時折笑顔で視線を交わし、指先の動きまでをシンクロさせていくと心が通じ合ったような気分になってくる。楽しい。


 間に挟む別々の動きでも息はピッタリで、お互いをけん制し合うかのように手足を繰り出していくのは、まるでダンスで会話をしているみたい。


 時間差をつけて踊るカノンも完全にわたしの動きをコピーしていて、もう一人のわたしがそこにいるような感覚に襲われる。


 わずか4分程度の時間はあっという間に終了してしまう。もう終わりか。名残惜しいな。


 アウトロの最後に合わせて2人揃っての決めポーズ。全力を出していたのか、ひよりは汗だく。

 しばらく見つめ合い、示し合わせたかのようにハイタッチ。完璧だ。



 2人で手を取り合いモニターの前に戻ると、コメント欄には賞賛の声が並んでいた。


【さすが姉妹】【息が合うとかそんな次元じゃない】【通じ合ってるのがよく分かるダンス】


 感動を届けることができた成果を目の当たりにして、2人顔を見合わせて笑い合う。


「みんな、最後まで見てくれてありがとう! 妹とのダンスはとっても楽しくて、もっと踊っていたかったくらいだよ」


 興奮冷めやらぬままそう語ると、コメントにも賛同の声が流れてきた。


【本当に楽しそうだった】【2人の絆がとても感じられたよ】【まさにベストカップルって感じ】


 ベストカップルという言葉に反応したのか、ひよりが赤くなって俯いてしまった。やっぱり可愛い。


 でもわたしも賞賛の声を贈りたい。ひよりのダンスの才能は想像以上のものなのかもしれない。これから先がとっても楽しみ。


「ひより、また一緒に踊ろうね」


 微笑みながらそう言うと、顔を上げて弾けるような笑顔を見せてくれた。


「うん! こちらこそよろしく!」


 その笑顔はとても眩しく、生命力に溢れたその姿にわたしは目を細めた。

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