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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第111曲 みんなと過ごす夜

 いつまでも潮風に当たっていたせいで髪がベタベタになってしまった。


 お風呂に入りたくて民宿に戻ると、残された3人はご立腹。


「2人きりでデートですかー。いいですねー」


 かの姉思いっきり拗ねちゃってるし。


「いや、デートじゃなくて散歩してたらたまたま会ったから、少しお話してただけだよ」


 嘘は言ってない。別に待ち合わせとかしてないし。


 というかあんな暗い中、よくわたしを見つけることができたよね。


「ゆきちゃんがいなくなったと思ったら一緒により姉もいないし。ひよりはとっても寂しかったんだよ!」


 すぐに? さてはより姉ついてきてたな。


 より姉の方を向いたら目を逸らされた。やっぱり。


 まぁひよりからしたら勝手にいなくなったんだから、わたしも悪いよね。


「ごめんね、ひより。その分明日いっぱい遊んであげるから」


 かわいい妹のためだ。ご機嫌取りもしておかないと。


「やたー! 絶対だからね!」


 ほんと子供みたいに喜んじゃって。かわいすぎるだろ、こやつ。


 目を細めてひよりの事を見ていると、服の裾を引っ張る感覚が。あか姉?


「わたしは?」


 コテンと首を傾げて聞いてきた。なにそのあざとい仕草! くっそかわいい!


 そんなことしない人がやるとこんなに破壊力があるんだ……。


 最近みんなあの手この手を使ってアピールしてくるから、いろいろと心臓に悪い。その気持ち自体は嬉しいんだけどね……。


「もちろんあか姉も一緒に遊ぼうね!」


 喜んだ時にするちっちゃいガッツポーズも死ぬほどかわいいんだよなぁ。なんなんだうちの姉妹は。みんなかわいすぎだろ。


 とりあえずみんな機嫌も直ったみたいだし、お風呂に行ってこよっと。


「それじゃ、潮風でべたついてるからお風呂入ってくるね」


 着替えを用意するために、キャリーバッグを置いてある場所に行くと、なぜかかの姉がついてきた。


「どうしたの?」


 かの姉は口を尖らせて抗議の声を上げた。


「わたしは遊ぶ約束もしてもらってませんし、まだ機嫌直ってませんよ」


 機嫌が悪いからついて回るの? の割にはなんか自分の荷物漁ってるんだけど……。


「で、かの姉はどうやったら機嫌を直してくれるのかな?」


 そう聞くとかの姉はようやく満面の笑みになった。嫌な予感しかしない。


「それはもちろんゆきちゃんと一緒にお風呂に入れば……」


「ダメに決まってるでしょ」


「せめて最後まで言わせてくださいよー」


 それとこれとは話が違う。それにそんなこと言い出したら絶対他の姉妹も……。


「だったらあたしも入るぞ」


「わたしもー!」


「同じく」


 そうなるよねぇ。かの姉だってわかってただろうに。しかーし! 今回は以前のようにはいかないよ。なんたって。


「お風呂狭いのに、みんなでなんて入れるわけないでしょ。ほらみんなは大浴場に行っておいでー」


 部屋に備え付けの内風呂は狭くて、全員で入るなんてとんでもないってくらいの広さしかない。


 以前のようにみんなが突撃してきて、うやむやのうちに混浴することなど不可能なのだ!


 仏の顔も三度まで。いい加減ひとりでゆっくり温泉に浸かりたいわたしがこの民宿を選んだのは、お風呂が狭かったから。


 普通は広いお風呂の方が好まれると思うんだけど、うちの姉妹は油断も隙も無いからなぁ。



 みんなが大浴場に向かったのを見届けてから、わたしもお風呂に入ることに。


 狭いと言ってもひとりで入るには十分な広さがあって、手足を伸ばして入ることができる。

 正直、家のお風呂の方が広いんだけど、ちゃんと温泉の湯を引いているから、血行が良くなるし体も温まるのが早い。


 昼間海で遊んで疲れていた体にはとても気持ちがいい。


 しばらくお湯につかってのんびりしていると、部屋の方が騒がしくなったのでみんな帰ってきたんだろう。


 脱衣所、浴場と2重で内カギをかけてあるから安心だ。


 と思っていたら脱衣所の扉の開く音。うそ!?


「ゆきちゃーん! お湯加減どーお?」


 ひより! 今回はお前か!


「ちょっとどうやって入ってきたの!? 鍵かけてたのに!」


「あれ、ゆきちゃん知らないの? こういうところの鍵って緊急事態にすぐ対応するため簡単に開くように出来てるんだよ。10円玉で簡単に開くよ」


 そんな豆知識知らなくていいから!


「もう! なんで毎度毎度覗きに来るのさ! 普通男女逆でしょ、こうゆうのって!」


 男風呂を覗くとか聞いたことないぞ。


「やだなー覗いたりしないってば。ちょっとゆきちゃんに声かけたかっただけだよ」


 そんなこと言っても前科があるから信用できない。一応ドアノブを押さえて警戒中。


「だったらもう気は済んだでしょ? そろそろ上がるから出ていってくれるかなぁ」


「……」


 返事がない。なんだろう? 何か企んでるのか?


「ゆきちゃんのシルエット、すりガラス越しに見てもスタイルいいの分かるわぁ。なんかエロい……」


 ふにゃぁ!


 そういえばひよりのシルエットもくっきり浮かび上がってる!


 慌てて浴槽に戻り、首まで浸かってしまうわたし。これでドアを押さえるものがなくなったので、下手したらひよりが入ってきちゃう。


「ありゃ、見えなくなっちゃった。心配しなくてもこれ以上中に入ったりしないよー」


「……ホント?」


「本当だってば! それじゃあんまり長湯しすぎてのぼせないようにね! ……これ以上見てたら変な気分になりそうだし……」


 後半なにかボソボソ言っててよく聞こえなかったけど、どうやら退散してくれるようだ。


 今日はずいぶんとすんなり引いてくれたな。他の姉妹は誰も来てなかったみたいだし、珍しいこともあるもんだ。

 いや、そう考えてしまうわたしの方がおかしいのか。

 普通は弟や兄のお風呂なんて覗いたりしないもんだよね。


 いつまでも長湯してたら、またより姉あたりが突撃してきそうだからそろそろ上がろっと。


 * * *

 

 お風呂から上がって髪を乾かしているゆきちゃん。


 たしかこの人わたしのお兄ちゃんだったはずなんだけどな。どうしてこんなに色っぽいんだろ。


「どうしたの? みんなしてこっち見て」


 微笑みながら振り返るゆきちゃんがあまりにも艶っぽくて、心臓が口から出そうになった。


 16歳の男子高校生が出せる色気じゃないよ、それ……。


「ゆきがあんまりにもキレイだから見惚れてた」


 より姉、ストレートに言うんだね。たしかにわたしも見惚れてたんだけどさ。


 タオルの上からドライヤーをあてて、その後に梳かしてるんだけど、引っかかることもなくすんなりとブラシが通っていくのがうらやましい。

 このキューティクルお化けめ。その髪に触れたいなぁ……。


「ゆき、やらせて」


 スススと近づいていったあか姉が、ゆきちゃんからブラシを受け取って梳かしてあげている。いいなぁ……。

 古典的な言い方だけど、「カラスの濡れた羽根のような」っていう表現がしっくりくるくらいの艶髪。別に髪フェチとかじゃないんだけど、ゆきちゃんのみずみずしい髪は別格だよね。


 そんな美しい髪に整った美貌、抜群のスタイルときてるんだから、これぞ反則級の美しさってやつだよ。


 まぁゆきちゃんが髪を伸ばしだしたのは、わたしとより姉が絶対にその方が似合うって勧めたからなんだけどね。

 それからわたし達が喜ぶからって長い髪のまま。

 キレイな髪を維持するために、毎日時間をかけて一生懸命手入れしてくれてるんだもんね。


 あのキレイな髪がわたし達のために存在してるんだと思ったら、少し誇らしい気持ちになる。


 なんだろう、優越感?


 ゆきちゃんの美しさがわたし達のためにあるような。


 まだ成長期だから、これからもっとそのキレイさに磨きがかかっていくんだろうと思うと怖いくらい。


「ゆきちゃん、こっちに来てくださいな」


 かの姉がゆきちゃんを手招きしている。そして隣に座ったゆきちゃんの頭をそっと押し倒して膝枕。うぎゃぁ羨ましい!


 わたしも膝枕したかった! でもゆきちゃんに膝枕してほしい欲求もある!


 みんなグイグイとアピールしてるから、わたしはどうにも出遅れた気分。なんとか巻き返さないと。


「ゆきちゃ~ん!」


 横になっているゆきちゃんに飛びついて思いっきりギュー! うはぁ、ゆきちゃんやわらかーい! 特に胸のあたりが……。


 そのやわらかい胸に顔を埋めて甘えていると、頭にそっと触れる優しい感触。ゆきちゃんのナデナデ大好き~。


「そんなもぞもぞしたらくすぐったいよ、ひより」


 そんな優しい顔で言われてももっと甘えたくなるだけだよー。さらに顔を埋めてぐりぐりするわたし。


 お姉ちゃんたちがなんとも羨ましそうな顔をして見てるけど、こうやって堂々と甘えられるのは妹の特権だもんね!


 だけど……。


 いつまでもただの妹として見られるのもイヤなんだよね。


 だからわたしはさらにアピール。ゆきちゃんの首筋に顔を埋め、そのままカプリ。


「ひゃあ!」


 可愛らしい声で驚いてる。去年の文化祭であか姉が演じたカーミラ役、わたしもやりたいんだもん。


 でもどうやって吸い付いたらいいのか分からないから首にキスしたまま吸ったらちゅっちゅって音がした。なんか違うよね。


「あはははは! ひよりくすぐったいってば!」


 本気でくすぐったいみたいだ。やっぱり何か間違えてるみたい。今度正しいやり方をネットで検索しておこう。


 今日は仕方ないから目いっぱい甘えるだけで勘弁しておいてあげる。


 首筋に顔を埋めてゆきちゃんの髪の匂いを嗅ぐ。ただでさえいつも少し甘めのいい匂いをさせているのに、お風呂上がりだからさらにいい匂い。

 胸いっぱいにその香りを吸い込むだけで幸せな気分になれちゃう。


「どうしたの? いつもと環境が違うから甘えたくなっちゃった?」


 そう言ってナデナデしてくれるゆきちゃん。いつだって優しいよなぁ……。


 今はまだ妹を見る優しい目だけど、そのうちもっと愛情にあふれた眼を向けさせてやるんだからね。


 だってゆきちゃんを好きな気持ちは誰にも負けないんだから!

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