出発
「昨日は楽しかったですね。村では友達もほとんど居なかったのでああいう歳の近い子達と食事したのは新鮮な体験でした。」
次の日、冒険者ギルドにこの街を出ることを伝えるのとリーフのギルドカードの発行のため、昼過ぎにリーフと共に冒険者ギルドに向かっていた。
昨日はあれから夜の8時過ぎくらいまで喋りながらご飯を食べていた。
「俺もそんなに友達いなかったからあんなに大人数でご飯を食べたのは久しぶりだったな。」
「ユウキさんお友達はいなかったんですか?」
「ごふっ……いや……まぁ、色々あってな。」
何気なくした質問だったのだろうが、それが俺の心にぶっ刺さり、思わずくぐもった声を出してしまう。
俺の学生時代を振り返ってみると、小学生の頃はそれなりに友達はいた気がするが、中学生の頃には両親がなくなりそれ以降友達というものを作らず生きてきた。
「と、とりあえず冒険者ギルドに行こうそうしよう。」
「露骨に話逸らしましたよね。よね?」
リーフの追求を掻い潜り、俺は冒険者ギルドまで走って行った。
「ん、ユウキにリーフじゃないか?あれからゆっくり休めたか?」
「あら、お二人共こんにちは。」
冒険者ギルドに入るとやはり昨日のこともあり、周りの冒険者達からちらちらと視線を向けられるが、気にしないようにする。カウンターの近くまで行くと冒険者ギルドにいたアイオンとキャサリンに声をかけられこっちも二人に挨拶をする。
「二人ともこんにちは。アイオンその制服……もしかして」
「あぁ……まだヒューデットの事件のあと片付けが残っているが、昨日から正式にこのギルドの職員として働くことになったんだ。」
アイオンはギルド職員の着る制服に身を包んでいた。子ども達とクエストを受けた際、冒険者ギルドに来ないかとガローに誘われたらしいがようやくギルド職員になれたようだ。
「アイオンさんはギルド職員になりたかったんですか?」
そういえばあの時リーフはいなかったからか、話についていけていないようだ。
「まあな、ガローに誘われてここで冒険者達を見守りたいと思ったのさ。」
「だが昨日ここに来たがアイオンの姿は見えなかったぞ?」
「昨日は裏の仕事を教わっていたんだ。だから表にいなかったってだけだ。それで今日はお前達は依頼を受けに来たのか?」
「いや、明日ビギシティを出るから冒険者ギルドに挨拶しておこうと思って。」
それを聞いたアイオンはマジか、と言って驚く。
「二人は強いからこの街に残ってくれると非常にありがたいんだがなぁ。」
「アイオン、そんなことを言ってはいけませんよ。二人には二人の人生があるのですからそれを私達が引き止めてはいけません。」
片手で頭を抱えるアイオンにキャサリンは昨日のリーエンのようなことを言って俺達を見てにこりと笑った。
「分かってるさキャサリン。残念だがしょうがない事だ。それでここを出たあとはどこに行くつもりなんだ?」
「王都に行くつもりだ。ハーパン学園で魔法について学ぼうと思ってな。」
「なるほど、ハーパン学園ですか……懐かしいですね。」
アイオンに尋ねられ答えると、キャサリンが懐かしそうな表情を浮かべる。
「懐かしい……ってことはキャサリンは昔ハーパン学園に行っていたのか?」
「えぇ、昔3年ほど通わせていただきましたよ。ペティオ王国にある魔法教育機関の中ではかなり本格的な方です。今よりもより深く魔法について学びを得たいのであればあそこに勝る学び舎はないでしょう。」
「ほぇー、俺達にアドバイスをくれたキャサリンがそう言うのなら余程スゴイところなんだな。」
少し前、冒険者ギルドでアイオンと練習試合をした際にキャサリンから魔法やスキルについてアドバイスをもらったことがあった。
そこまで時間が経っていないのにヒューデットの件でかなり昔に感じるが……とりあえず、的確なアドバイスをしてくれたキャサリンが通っていたハーパン学園に俺は期待に胸を膨らませる。
「ここから王都まではかなり時間がかかりますが移動手段は?」
「馬を借りました。もう少ししたらハーパン学園の入学試験があるんですが、予想では3日ほど前に着く予定です。」
「そうか、結構ギリギリなんだな。今回の入学を逃すとまた1年待たないといけないし遅れないようにしないとな。道中もここより強い魔物が出るだろうから十分注意しろよ。」
キャサリンとリーフの話を聞いたアイオンは俺達がビギシティを出ることに納得し、苦笑いを浮かべまるで親のように俺達にそう言った。
「あぁ分かってる。魔物もヒューデットと散々やり合ったんだ。今更ここら辺に出る魔物よりちょっと強い程度じゃやられないさ。もちろん油断はしないけどな。」
「あのヒューデットの大軍と悪魔とも戦いましたからね。」
「出会ってまだほんの少しだってのに、大分変わったな。ユウキも、リーフも。」
意気込む俺達を見てアイオンはしみじみと言い、その後軽く話をしてリーフのギルドカードを発行し、俺達は冒険者ギルドを後にした。
「これであとは出発の準備は完了……ですよね?」
あの後装備屋や、その他旅に役立つ物を求めいくつかの店を周り荷物を『マジックポケット』に入れて宿屋に帰ろうとしていた。
「あぁ、多分大丈夫なはずだ。ポーションも魔石も調達したし、防具も買い直してあとは食料となんか水が出てくる便利な水筒も買ったし……高かったけど。」
無限水筒と言う名前で売られていた水筒を手に取り俺は呟いた。
魔石がはめ込まれており、なんでもこの魔石に魔力を込めると水筒内が水で満たされるらしい。遠出の際にはありがたいが3万ギルとそこそこに高かった。
「遠出での水問題が3万ギルで解決するなら安い方じゃないですか?」
「まぁ確かにそうか。……お?」
リーフの言葉に納得していると、体中に力が湧き上がり手を開いて閉じるのを繰り返す。
「もしかしてステータス戻ったんですか?」
俺の反応を見てリーフは聞いてくる。
「そうみたいだな。一応ステータス見てみるか。」
ギルドカードを手に取り、自分の現在のステータスを見てみる。
ユウキ・ツキモト (17)
魔法使い 得意属性【無】
魔法攻撃力 D++
魔法防御力 D
魔法回復力 D-
魔法制御力 D++
魔力回復速度 D-
魔力量 C++
Dランク
スキル欄(4)
詠唱省略(小)
デュアルアクション
マルチターゲット
EXスキル
無の加護(真・無属性)
器の欠片(3)
器の加護
マジックシェア
魔力昇華
「結構ステータス伸びてるな。」
やはりステータスは戻っており、ミラン村でヒューデットやフロウアの作ったという強化型のヒューデットと戦ったからかほとんどのステータスが伸びていた。
「私も見てもいいですか?」
「あぁ、いいぞ。……そうそうリーフのステータスも見せてもらいたいんだがいいか?一緒に王都まで行くんだから今のリーフのステータスを把握しておこうと思って。」
「構いませんよ。」
リーフに聞くとすんなりとリーフは頷き、ギルドカードを俺に見せてくれた。
リーフ・クレイン(16)
魔法使い 得意属性【光属性】
魔法攻撃力 F-
魔法防御力 F--
魔法回復力 F-
魔法制御力 F
魔力回復速度 F-
魔力量 F+
Fランク
スキル欄(2)
回復魔法使い
詠唱省略(小)
デュアルアクション
EXスキル
光の魔法使い
詠唱省略(光Ⅱ)
■■の加護
以前■■の加護で全てのステータスがGランクになってしまったらしいが、ミラン村からビギシティに帰る際に魔物と遭遇することが何度があった。その時にリーフも戦い(ほとんどウェルメンが倒したが)全体的にバランスよくステータスが上がったようだ。
「そういえば前はEXスキルの詠唱省略(光I)だったはずだけど(光Ⅱ)になってるな。」
「はい、ミラン村でステータスが上がって強化されたみたいで光属性の中級魔法までは一節の詠唱で使用できますよ。……と言っても私の魔法制御力はFなのであんまりまともに使える中級魔法はないんですけどね。でも足でまといになるわけにはいかないので道中は初級魔法で頑張ります!」
「お、おう……まぁ無茶して大怪我することはないようにな。俺もステータスが戻ったから遠慮なく頼ってくれ。」
リーフの所持している光属性魔法を強化する光の魔法使いのEXスキルをもってしても現在リーフが使用できる中級魔法はないだろう。
それでもやる気十分なリーフに若干気圧されながらも俺も負けてられるかと笑みを浮かべリーフに言う。
「分かりました。EやDランクの魔物が出るみたいですが、特にDランクの魔物には気をつけましょうね。Dランクからスキルを使う個体も出てくるらしいので。」
「確か装備屋のおっちゃんが前そんなこと言ってたな。気をつけよう。」
そう言って最終点検をするため、俺達は宿に帰って行った。
そして次の日の朝馬を借りた俺達はビギシティの門の前で見送りに来てくれたアイオン、キャサリン、リーエン、そして子ども達と別れの挨拶をしていた。
「うぅ……やっぱり寂しいなぁ。」
「リリィちゃん、気持ちは分かるけど涙で顔がぐちゃぐちゃだよ!」
俺達との別れに涙を流すリリィにハンカチでリーエンは顔を拭いていた。
「全くリリィは……またいつか会えるよね兄ちゃん?」
「あぁ、またいつかここに戻ってくることもあるだろうし会う機会はいつでもあるさ。」
ハーパン学園に入学した後は、フロウアについての手掛かりや他の神の欠片の在処を探らなければないないため、王都から出ることもあるだろう。その際にまたここに来る可能性もあるため俺はそう言って若干不安げなドリバーの頭をごしごしと撫でる。
「道中気をつけろよ、この辺りの魔物より少し強めの奴らもいるからな。」
「はい、もちろん油断せずに警戒しながら行きますよ。それにこれもありますしね。」
「ほう、それがあるなら問題なさそうだな。それがあれば危険な魔物も回避できるだろうしな。」
アイオンからの忠告にリーフは馬屋の店主からもらった魔物の詳細が書かれている冊子を見せ、それを見たアイオンは満足気に頷いた。
「そろそろ時間ですね。名残惜しいですが王都でも頑張ってくださいね。ほら皆さん笑顔で送り出してあげましょう。」
まだまだ話し足りないようだったが、途中でキャサリンが大分時間が経っていることに気付いたようで子ども達にそう言って笑いかける。
「兄ちゃん、リーフの姉ちゃん気をつけてね!」
それを聞いた子ども達は頑張って笑顔を浮かべ、手を振ってくれる。
「あぁ、わざわざありがとな。」
「皆も体に気をつけてくださいね!」
俺もリーフも最後に一言残し、俺は馬に、リーフは荷車に乗りビギシティを後にした。




