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移動手段の確保


「勢いで冒険者ギルド出てきたけど、大丈夫でしょうか?」


「別に悪いことしてないし構わないだろ。それよりリーフ大丈夫なのか?あんなにお金を渡してしまって。もう……えーと、その……」


「両親がいないから、ですか?」


 言いずらそうにした俺に微笑みながらリーフは俺の意を汲み取った。


「まぁ……そうだな。」


「気にしなくてもいいですよ。家に置いていた貯金は持ってきましたし、別にこれからも王都でも冒険者としてやっていくつもりなので大丈夫です。それにユウキさんも渡してたじゃないですか。ユウキさんこそ大丈夫なんですか?」


「あぁ、大丈夫だ。ギルドでも言ったが、大金をいきなり貰っても使い道がな……。」


 この世界に来る前はバイトをしていたが、一人暮らしで家賃や生活でほとんどが消えていった。残ったお金も小説を買ったりゲームを買うくらいで、そこまでお金も使用しなかった。


「ですよね、私もいきなりあんな大金貰っても本当にどう使えばいいか咄嗟に思い浮かばなかったですよ。あっ、そういえばギルドカード無くしたから新しく発行してもらわないといけなかったのに忘れてました。」


「今冒険者ギルドに戻るのもな……。」


「また次に冒険者ギルドに行く時に発行します。」


「了解。んで、今はどこに向かっているんだ?」


 リーフと話しながら街中を歩いていたがそういえばどこに向かっているかギルドを出てから聞いていなかったから聞いてみる。


「馬車の予約をしようかと。おそらく馬車でここから王都に行くと、10日ほど……そして王都についてハーパン学園の試験まであと15日ほどでユウキさんのステータスの復帰を考えると――」


「明後日くらいにはここを出た方がいいってことか?王都に着いた時には試験まで3日。ギリギリだな。」


 本来ならヒューデットの騒ぎがなければもうここを出発していたが、ミラン村での件で以前リーフが予約していた馬車はもう出発している。


「はい、なので明後日ここを出る馬車を探そうと思うのですが、大丈夫ですか?」


「もちろんだ。なら馬車の予約の後は道中の食料とかも準備した方がいいな。それに装備品とかポーションもあらかた使い果たしているし、また道具屋のおっちゃんのところに行かないとだな。」


 俺の言葉にリーフは頷き、足を止め目の前の建物を見た。

 リーフの視線を辿るとその建物は丸太をいくつも重ねたもので中に入ると、正面にカウンターがあり、左の方を見ると少し奥まで続いており馬が柵に入れられ、草をもしゃもしゃと食べていた。


「いらっしゃいませー」


 馬の餌箱に草を入れていた店主が俺達を見てあいさつをして作業に戻っていく。


「ここは?」


「徒歩で行けない遠いところに行く場合は大抵馬を使うので、ここで馬を借りることが出来るんです。ほら、馬の名前の横にこの馬はこの街まで何分、って書いてあるでしょう?」


 リーフが言うように馬の名前が書いてある木の板の横にその馬がどこまで行けるか、どのくらい時間がかかるか、どのくらいの料金なのかが書かれていた。さらに馬だけ借りるのか、それとも荷車を追加で借りるかを選ぶこともできるようだ。


「本当だな。んで王都行きの馬はこれかって馬いないんだけど。もしかして王都行きの馬はもう居ないってことか?」


「さぁ……?」

 

「お客さん達王都に行きたいのか?」


 俺達の話を聞いていたのか運良く店主が俺達に声をかけてきた。


「あぁ、明後日にここを出発したいんだが……。」


「明後日か。王都行きの馬は……運がいいなお客さん方。明日に一頭王都行きの馬が帰ってくる。」


「良かった……じゃあ荷車を借りて二人で交代しながら馬に乗るとするか?」


 出来れば二頭借りたかったが、荷車を追加で借りて一人が馬の手網を、一人が荷車の中で休憩すれば大丈夫だろう。

 リーフも俺の提案に反対意見は内容でこくりと頷いた。


「明後日に馬と荷車を借りるってことでいいか?行き先が王都なら馬で5万ギル、荷車で2万ギルの合計7万ギルだ。」


「ここは俺が払うよ。」 


「い、いえっ、私も一緒に行くのでユウキさんに甘えるわけにはいきません。ミラン村ではユウキさんに助けられっぱなしだったので私が出しますよ!」


 俺がそう言ってお金を出そうとするが、慌てたようにそれを止めて自分のお金で支払いを済ませようとする。


「いやいやここは俺が……」


「いえっ、私が!」


「人の店でイチャつかないでくれるか?」


 二人で言い合っていると呆れた顔で店主は言う。


「あ、あぁすまない。」


「そこですっ!」


「ちょっ!?」


 俺が店主に謝った隙をついてリーフは店主にお金を押し付けた。


「ふふふ、これは譲れませんよユウキさんっ!」


 勢いよく振り返りピシッと俺に指を指し、変なテンションでリーフは笑みを浮かべながら声高々にそう言った。


「そこまで言うならここはリーフに任せるよ。ところでここから王都までの道のりだが魔物とかやっぱり出るよな。」


 リーフに代金の支払いを譲ったあと、店主に聞いてみる。すると店主は当たり前だと言いながら頷き、一枚の地図と一冊の冊子を見せてきた。


「これはここから王都までの地図だ。そしてこっちが道中で発見される魔物達だな。」

 

 地図はよく見るようなもので本の方はめくると多くの魔物の名前とランク、そして見た目や攻撃方法などが詳しく書いていた。


「EランクとかDランクとか結構いるんだな。」


 冊子を眺めているとGやFランクの魔物はほとんど書かれておらず、EランクからDランクの魔物が多く書かれていた。


「お客さんらは冒険者か?」


「あぁそうだけど。」


「ほー、でもここの冒険者ってことはランクはFとかか?なら冒険者ギルドで護衛の依頼を出した方がいいぞ。」


「ランクは……」


 ランクのことを聞かれリーフと顔を見合わせる。元々二人揃ってランクはFをゆうに越えていたが、二人ともこの前の騒動でステータスが低下してしまった。


「どうした?」


「いえ、なんでもないです。私はFランクですけどユウキさんはDランクですよ。」


「ほーあんちゃん結構強いのな。なら依頼を出さなくても大丈夫かもしれないな。Eランク以上の魔物が多いから依頼を出すならDランク以上の冒険者が好ましい。だが、そもそもこのビギシティはDランク以上の冒険者はほとんどいないし、そこそこ長期間の依頼になるから報酬もかなり多くしないと受けてくれないからな。」


「もし依頼するとしたらどのくらいの金額が妥当なんだ?」


 リーフはFランク。もちろん俺が守るつもりだが、囲まれたりすれば恐ろしいことになるだろう。俺は依頼を出すことを前向きに考え、店主に聞いてみる。


「30~40万ギルは少なくともいるだろうな。」


「うっわ、高いな。」


「この街のDランク以上の冒険者は希少だからな。冒険者ギルドがあまり遠くに行かせたがらないのもあるし、期間が少々長いってのも護衛の報酬は高くなる原因だ。ほかの街ならもうちょい安いだろうがこの街だとそのくらいはかかる。だからこの街を出て旅行する奴らは、金持ちか頑張って金を貯めた奴か、それかシンプルに強い奴だな。」


「そりゃDランク以上のランクなら魔物達も大丈夫だろうからな。うーん……40万ギルか。」


 前向きに検討していたがかなりのお金を使うと知り、俺は悩む。二人でお金を出し合えば冒険者は雇えるが流石に額が額だ。


「ユウキさん私は大丈夫ですよ。」


「リーフ……でも危険だぞ?俺一人でリーフを守れる自身は――」


「私だって冒険者ですし、それにミラン村ではものすごい数のヒューデットを相手に戦いました。ランクはFになっちゃいましたけど、ランクでは測れない経験を私は積みました。今更E以下の魔物には遅れを取るつもりはありませんし、Dランクが相手でも負けるつもりはありませんよ。」


「そこまで言うなら……そうするか。」


「本当に大丈夫か?まぁお客さん方がそう言うならいいか。

 そんで、明後日の出発時間はどうする?」


「早めに出発するか?」


「そうですね、朝の10時とかにしましょうか。」


 こうして俺達は無事馬の予約を終えた。

 外に出るともうすぐ夕方というのもあり、空はオレンジ色になっていた。


「夕方だしご飯でも食べて帰りませんか?」


「そうだな、昼に少し食べただけでお腹も空いてきたしそうするか。どこか行きたい店はあるか?」


「いえ、宿屋でしか食べる機会がなかったのでビギシティの飲食店は使ったことがないんですよね。ユウキさんはどこか行ったことはありますか?」


 リーフは首を振り、俺に聞いてくる。そう言うが俺もビギシティでは俺達が泊まっていた宿屋でしかほとんど食べていない。


「俺も……いや1回食べたな。リーフと別れた日にアイオンと1回だけ外で食べたことがある飲食店があるんだが、そこにするか?」


 リーフと同じだと言おうとしたが、アイオンと一緒に食べに行った飲食店を思い出し、リーフをそこに誘ってみる。


「分かりました、なにかおすすめはありますか?」


「俺も1回しか行ったことないけど、この前食べたのはチキンバードの炭火焼きとかサラダだな。アイオンはチキンバードの甘酢漬けとブラックボアってやつのステーキとあとはパンもあったな。」


「なるほど、うーん悩みますね。」


 歩きながら顎に手を当てなにを食べようかリーフは悩み始めた。


「別にいま食べる物を悩まなくても店についてからゆっくりメニューを見ればいいだろ。」


 と、俺は言い終わると同時にぐぅ〜とどこかで聞いたことのある音が目の前の少女のお腹から聞こえた。


「……」

 

「……」


 リーフ、お腹すいてたのな。


「ア、アサ、ジツハショクヨクアマリナカッタノデアンマリタベテナクテ」


 すっごい小さな声でカタコトでそう言い、リーフは手で顔を覆った。 


「意外とリーフって食いしん坊なのか?」


 少し意地悪をしてみたくなりそう口にすると、リーフは覆っていた手をグーの形に握りしめた。


 あ、これやばいかも


 

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