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ビギシティへの帰還


 あれから道中でゴブリンやグレイウルフに遭遇したもののウェルメンが難なく撃退し、1日かけてビギシティの近くまで辿り着いた。

 途中で野宿もしたが、その際もウェルメンが魔物を撃退し、嬉しいことにさらにそれを手伝ったリーフのランクが上がっていた。本人曰くミラン村でグレイウルフを倒した時に上がっていたらしく、今はFランク上位程度のステータスだ。

 ちなみに俺も戦闘に参加したがステータスは一切伸びなかった。おそらく神気開放でステータスが下がったときにはステータスが上がりにくいかとかそんな効果があるかもしれない。 

 

「そろそろビギシティに着くか?」


 周りを見るとクエストで行き来した光景が拡がっていてビギシティの近くまで来たことが分かった。


「あぁ、あと10分せずに着くぞ。」


「数日ぶりのビギシティですが、以前来てからもう何年もたったように感じます。」


「リーフがビギシティを出てから起こったことを考えるとそりゃそうだよな。」


「ん……なんか門にいつも以上の門番がいるな。」


 リーフと話していると、ウェルメンが目を凝らしながら呟いた。


「大量のヒューデッドがいることはギルドマスターは知ってるはずだから、多分ヒューデッドの襲来に備えたんじゃないか?」


「なるほど、確かにガローならそうするかもしれんな。」


 そう言って門の近くにウェルメンは俺達を乗せて近づいて行く。


「ツキモトの坊ちゃんにミランの嬢ちゃんじゃねぇか!

 無事だったのか!?てかこの馬、血出てるじゃねぇか!」


 門の所まで行くと、初日にビギシティに来た時に出会ったあのおっさんが俺達を見て目を剥いて驚いていた。

 俺達はウェルメンからおっさんの目の前に飛び降りる。


「よっと……あぁなんとか無事だったよ。この馬の傷も治ってる。」


「そ、そうかそれならいいんだが……。あの日は俺は休みだったんだが、お前が地獄と化したミラン村に行ったって聞いて絶望したぞ俺は。」


「いや……なんか心配かけてごめん。」


「無事ならいいんだよ無事なら!ミランの嬢ちゃんも無事でよかったぜ!」


 俺の肩を叩いて笑い、俺の後ろにいたリーフにもそう言って笑いかける。


「おっと、ギルマスに報告とか多分あるんだろ?ここで立ち話なんてして遅れるのも悪いな。」


 ほかの門番達にも声を掛けて道を空けてくれた。


「ありがとう、リーフ、ウェルメン行こう。」


「おう、さてガローに報告することが大量だ。」


 面倒くさそうにはぁとウェルメンは溜息をつきながら俺の後ろをついてくる。


「確かにな、それに神の欠片をあの悪魔が持っていたことも報告しないと。」


「神の欠片?それって神の力が封じられた欠片のことか?」


 懐かしいビギシティの街並みを眺めながらそう言うと、ウェルメンが驚いた様子で俺を見た。

  

「ユウキさんもフロウアから聞いたんですか?神の欠片のこと。」


「あぁ、ってことはリーフもフロウアから神の欠片について何か聞いたのか?」


「はい……あの時ユウキさんが助けに来る前に聞きました。神の力を封じているから普通なら悪魔が使うことは出来ないけど、魔王が悪魔でも使えることができるようにしてそれでフロウアのEXスキルが強化されていると。」


「おいおい、悪魔共にそんなものが渡っちまってるとは……しかも魔王も神の欠片を悪魔に使えるようにできるとか何もんだよ。」


「何者もなにも魔王だろ。ウェルメンはいままで神の欠片を持った悪魔とかと戦ったことは無いのか?」


 以前ギルドマスター達と旅をしたらしいと言っていたため、そういった悪魔に遭遇したことは無いか聞いてみる。


「普通の悪魔なら何体も戦ったことはあるが、そんな神の欠片を持った悪魔なんて今まで戦ったことないぜ。だがあの悪魔の作ったヒューデットは別格で強かったな。あれは神の欠片の力でEXスキルが強化されたからあんな強いヒューデットが作れたんだろ?神の欠片が魔王の方に渡ってるのはまずいな。Sランクの俺ですら苦戦したんだ。」


 べシールからの依頼、神の欠片の収集。もしも俺が今持っているものとべシールが確保している神の欠片以外が全て魔王の手に渡っていたら……そう考えると背筋が凍りつく。


「ユウキさん、大丈夫ですか?」


「あぁ……大丈夫だ。」


 様子がおかしい俺に気づいたリーフが俺に声をかけるが、俺は無理やり口角を上げ、笑顔でリーフに返事し心の中で気持ちを入れ替える。


(今回はフロウアがこっちにビビってヒューデットだけに俺を任せたのと、ヒューデットが途中で自壊したから良かったけど……。神の欠片のこともっと調べないといけないな。)


 そういえばリーフとはビギシティを出た後は王都に行ってハーパン学園に入学し、魔法を習うという約束をしていた。

 でも今回こんなことがあったから、心変わりしているかもしれない。後で報告が終わった後にでもリーフに聞いてみるとしよう。


「もうすぐ冒険者ギルドに着くな。ってあれはアイオンとキャサリンじゃねえか!」


 冒険者ギルドが遠目に見える所まで歩くとウェルメンの言う通り、そのギルドの近くにアイオンとキャサリンが周りをキョロキョロしているのが見えた。目を凝らすと、アイオンとキャサリンの他にもドリバーやリーエン等、この前クエストを行ったメンバーが勢ぞろいしていた。


「あっ、いた!」

 

 魔法使いのリリィが俺に気づいたようで俺を見て声を上げた。それにほかの連中も俺に視線を向け駆け寄ってきた。


「うわっ、ウェルメンお前めちゃくちゃ出血してんじゃねえか!?こんなに体毛が血まみれになってるなんて……」


「まあな……かつてない強敵と出会って殺りあったんだが、なんとか生きて帰れたぞ。傷も治ってる。」


 アイオンはウェルメンの体毛についた大量の血を見て驚愕しているが、ウェルメンは笑いながらその理由を説明していた。


「兄ちゃん!無事でよかったよ!」


「本当ですよ!私達に何も言わないで……アイオンさんから危険な状態のミラン村に行ったって聞いてどれだけハラハラしたか……。」


「お、おぉすまない……?」


 俺がアイオン達を見ていると、ドリバーがほっとした表情で声をかけ、リリィに至っては涙ぐんで抱きついてきた。


「この子達はあの時の?随分親しくなっていますが、彼らと何かあったんですか?」


「リーフがビギシティに帰った後こっちのリーエンと一緒にクエストに行ったんだが、その時にアイオンとドリバー達と会ったんだ。んでビギシティに帰還する際にヒューデットと遭遇して一緒に戦ったらこんな感じに懐かれたって訳だ。」


 疑問を感じたリーフにそう説明すると、子ども達はいやいやと首を振った。


「確かに俺達も戦ったけどほとんどアイオンさんと兄ちゃんが相手したじゃんか!あの時の兄ちゃん凄いかっこよかったしちゃんと覚えてるんだからなっ!」


「そうですそうです!」


 ドリバーの言葉にリリィやほかの面々も首を勢いよく縦に振る。


「そ、そうなんですね……そちらのリーエンさんという方は?」


 子ども達の勢いに気圧されながら、リーフはリーエンの方を向く。


「私はクエストに同行してもらったんです。知っていますか?今はヒューデットが近くにうようよいるから私達のような低ランクの冒険者はDランク以上の冒険者が付き添わないとクエストを受けられないんです。そんな時にツキモトさんが一緒にクエストに同行してくれたんです。」


「へぇ……今はそんなことになっていたんですか……。そういえばミランから帰る時はヒューデット見なかったような?」


 リーエンから話を聞いたリーフは首を傾げ俺を見た。


「確かにここに帰ってくる時はヒューデットは見なかったな。」


 少し前の記憶を思い出すが、ゴブリンやグレイウルフ等元々この辺りに生息していた魔物とは遭遇したが、ヒューデットには出会わなかった。


「フロウアがここを去ったから……か?」


「フロウア?」


「フロウアってのはヒューデットを作り出せるSランクの悪魔のことですよ。この辺りにヒューデットがいたのはそのフロウアがヒューデットを作り出し襲わせていたからです。」


「Sランクの悪魔っ!?」


 誰?という表情をしたドリバーにリーフはフロウアについて教えると、驚愕の表情でドリバーは叫んだ。周りを見ると子ども達はみんな似たような反応でアイオンはやっぱりか、というような表情をしていた。


「やはりガローの予想通り悪魔がいたか。しかもSか。」


「あぁ、俺はその悪魔の手下……強化版のヒューデットと戦ったけど恐ろしく強かった。フロウア曰く、Aランクの冒険者を素体にしたヒューデットでAランク上位の力があるって言ってたな。しかも戦技も使ってきたし。」


「ウェルメンがいたとはいえよく無事だったな。」


「切り札を使ってようやく互角程度だったけどな。それよりキャサリンの姿が見当たらないけど?」


「ここですよ。」

 

 さっきまでいたキャサリンの姿がいつの間にか消えていて辺りを見回す。するとギルドの入り口からキャサリン、そしてギルドマスターが姿を見せた。


「ギルドマスターを呼びに行っていたのか。」


「よく無事だったなツキモト、クレイン。そしてウェルメンもご苦労だった。その血に染まった体毛を見るに、相当な激戦があったようだ。」


「あぁ……このウェルメンが相手してもやべぇ化け物の悪魔とヒューデットがいたぜ。ヒューデットの方はユウキが倒したらしいがな。」


「ふむ……2人も疲れているだろう。俺の部屋に来てくれ。そこで詳しい話を聞くとしよう。ウェルメンは馬小屋にいてくれ。」


「分かったぜ。」


 ギルドマスターの命令にウェルメンは了承し、馬小屋のところに戻って行った。俺達もギルドマスターに今回のことを報告するため、一旦皆と別れギルドマスターの部屋に行くことにした。





「さて……それでは今回ミラン村で起こったことを話してもらおう。」


 ギルドマスター直々に紅茶を入れ、ちょっとしたお菓子を机に置いた。

 ソファに座った俺達はミラン村でフロウアと遭遇し、今回の騒動の理由や神の欠片で魔王が悪魔達のEXスキルの強化をしていることなどを話していく。


「これは……ビギシティだけの問題じゃなさそうだな。」


 全てを聞き終わったギルドマスターはソファに腰を預け、天井を見ながらため息をついた。


「15年前の悲劇……それ以上の危機が迫ってきているとはな。」


「15年前の悲劇?」


 ポツリと呟いたギルドマスターの呟きに俺は反応する。

 

「そうだ、恐らくお前達はまだ赤ん坊だっただろうから覚えていないと思うが、15年前に魔王が現れた。そのせいで魔物や悪魔達は力と知恵を身につけ、人類を滅ぼそうとした。数々の村や街が滅ぼされ人間達は劣勢に立たされていたんだ。」


 語り出したギルドマスターの言葉を聞いて、以前べシールや道具屋のおっさんが言っていたことを思い出す。確か2人も魔王の復活で人類が魔物や悪魔に数多くやられたと言っていたはずだ。


「神の欠片……まさかとは思っていたがやはり魔王の手に渡って尚且つ、悪魔達の強化の糧にされていたとは。」 


「神の欠片について知っているのか?」


「ん、あぁ知ってるとも。なにせ15年前の魔王が復活した時、神殿にいて神から神託を授かることの出来る巫女が神から命令を受けたらしい。

 曰く神の欠片と呼ばれる物が人間界に散らばったからそれを集めること。そうすれば来たる厄災から逃れることが出来るであろう……ってな。この国では神の欠片を発見した際には王に献上しなければならないんだ。」


「私もそれを両親から聞いたことがあります。どこに神の欠片が散らばったか不明だから当時巫女様が探すよう人類の皆さんに伝えたとか。」


「ユウキは両親から聞いたことないのか?」


「俺の両親死んでるからなぁ」


 この世界に来たのが最近のため当たり前だがそんなことは知らないため咄嗟に誤魔化す。まぁ、両親がもういないのは事実だが。


「す、すまない」


「別に大丈夫だ。ところでその神の欠片って結局集めることが出来たのか?」


「いや……さっきも言ったが神の欠片を集める神託を受けた時と悪魔や魔物達が強くなった時期がほぼ同時期だったから神の欠片を集めるどころじゃなくほとんど集まらなかったようだ。

 そうだ……クレイン、お前はフロウアに重症をおわせたと先程の話の時言っていたがその際にフロウアから神の欠片を奪うことは出来たか?」


 ギルドマスターの話を聞き神の欠片がほとんど集まっていないということを知らされ表情には出さないが、心の中でため息をついた。べシールからの依頼を一気にこなせると思ったがそう簡単にはいかないようだ。


 そんなことを俺が思っていることは知らないであろうギルドマスターは俺の変化に気付かず、リーフに神の欠片について質問をした。


「いえ……あ、でも確か私が攻撃した時、1つ紫色の手のひらサイズの器みたいなのを手に持って魔王様から貰った力の一部を失ったって言ってました。あの時は魔力も体力も底を尽きてボロボロの瀕死状態だったからあまり覚えていないですけど……。」


「っ!?それは器の欠片だ!」


「きゃっ!」


 リーフが当時のことを思い出そうと頭を指先で押しながら話していると、突如人格が変わったかのように急に机を両拳で叩き、立ち上がってリーフに詰め寄った。

 急な出来事でリーフは悲鳴をあげ、俺も驚きで一瞬体がびくりと震えた。


「ぁ……すまない、驚かせてしまったな。」


「い、いえ……大丈夫です。」


 リーフはとても大丈夫とは思えないほど、小さな声で体を両手で抱きしめ、目線がギルドマスターから逸れていた。

 

「ギルドマスター、その器の欠片?が一体どうしたんだ?」


 見ていて可哀想に思い、何のことか分からないという表情をしながら俺はギルドマスターに尋ねた。まぁ、その器の欠片は俺が持っているのだが。


「さっきツキモトも言っただろう。その器の欠片で悪魔はEXスキルが強化されると。そして神の欠片を王に献上することが出来ればっ……!」


「出来れば?」


「大量の金を王から褒美として貰えるんだ。」


「……ああそう」


 なんであんなに人格が急変するほどのリアクションをしてリーフを驚かせたのか……それは金のためだったようだ。やはりギルドマスターも人の子でやはり金の誘惑には勝てないらしい。

 リーフを見ると、冷え切った目でギルドマスターを見ていた。多分俺もそんな目でギルドマスターを見ていたのであろう。

 ギルドマスターは俺達を交互に見てため息をついた。


「お前達……もしかして俺が金欲しいがためにあんなリアクションをしたと思っているのか?」


「いやー、別に?」


 適当にそんなことない、と言おうとしたがギルドマスターの表情が真面目なものになり口を噤む。


「いいか?このビギシティは周りの村と共存し、ここまで発展することが出来た。村からは食料や衣類などを買取り、ビギシティは対価に金、時には村の近くにいる魔物を狩るための冒険者の派遣などをしてきた。だが、ビギシティに必要な村がまるまる消えてしまった。これからは食料や衣類などがビギシティに入ってこなくなる。そしてビギシティは衰退していく。この街の周辺は新米冒険者が育つのに最適な環境だ。魔物は新米でも狩れる程度のランクだし、近くに村もあるからクエストで夜遅くに迷ったとしても近くの村に泊めてもらうことも出来る。この街が衰退すれば新米冒険者に払う報酬も少なくなり別の冒険者ギルドがある街に移動するだろう。だが、ここよりも他の冒険者ギルドがある街の周辺の魔物のランクは15年前の魔王出現に伴い、最低でもEランクだ。」


「Eランクか……。」


 この辺りでのEランクの魔物だとグレイウルフが該当するが、もしそのレベルの魔物と新米冒険者が戦ったら……おそらく新米冒険者側が敗北するだろう。

 もちろん複数人で囲んだりすれば勝機も生まれるだろうが、大怪我などもする可能性が高い。


「その顔だと分かってくれたようだな。俺が器の欠片を欲した理由が。それでどうなんだ、回収したのか?もしそれなら譲って欲しい。」


 ギルドマスターはふっと俺を見て笑うと、再び真剣な表情でリーフに向き、そう提案した。

 だけどその器の欠片は俺が持っている。


「ええと、ごめんなさい。私は持っていません。」


「そっ……そうか。一応聞いておくがツキモトが持っていたりは?」


「俺も持っていないな。」


「だよな。」


 リーフが持っていないことを聞いて肩をガックリと落とし、俺にも聞いてくるが持っていないと俺は答えた。

 さっき器の欠片を欲した理由を聞いたが、それでも渡すことはできない。なにせ神の依頼だからだ。この先ビギシティが衰退し、新米冒険者達がビギシティを去る可能性もあるが、この欠片は持っておかなければならない。


「なんとかして建て直さないといけないな。

 あぁ……金で思い出したが2人ともよく悪魔を追い払ってくれたな。感謝する。」


 頭を抱えていたギルドマスターが途中で動きを止め、俺達にそう言う。


「Sランクの悪魔。しかも神の欠片で強化された悪魔を追い払ってくれたのだからたんまりと報酬を出したいところだが、こんな状況だ。悪いが少し少なくなる……だが報酬は必ず払うとしよう。」


「俺は別に大丈夫だぞ?今回追い払えたのはリーフがヒューデットを全滅させてフロウアにダメージを与えてくれたおかげだからな。」


「それを言うならユウキさんが助けてくれなければ私はあそこで死んでいました。ユウキさんが受け取ってください。」


「いやいや、そこはリーフが……」


「はいはい、ちょっと落ち着けお前達。俺は2人に報酬を出すからな。ヒューデットな発生源、それを追い払ってくれたんだ。素晴らしい働きをしたお前達に報酬をやらないんじゃギルドマスターとして信用されなくなるからな。」


 言い合う俺達を見てギルドマスターは手を鳴らし、笑みを浮かべてそう言った。


「ギルドマスターが仰るなら……分かりました。」


「……俺も分かったよ。ありがたく頂くとしよう。」


「そう言ってくれて何よりだ。報酬を用意しておくから明日以降に受付で尋ねるといい。

 さて、これでとりあえずは終わるとしよう。2人とも今回は本当にご苦労だった。疲れているだろう?今夜はゆっくり休むといい。……いや最後にひとつ言うことがあるな、リーフ・クレイン」


「はい?」


 ギルドマスターがそう締めくくり、俺達は席を立って扉に向かおうとすると、少し低い声でギルドマスターがリーフの名前を呼んだ。


「ツキモトから聞いたとは思うが俺はヒューデットの発生源を突き止めるため、調査隊を派遣しそこでミラン村で窮地にたたされたお前達を発見し、それをツキモトに伝えることでツキモトはクレインを助けにミラン村へと向かった。」


「そうですね、私もユウキさんからそう聞きました。」


「そうか……では、この話は聞いたか?情報をツキモトに伝えた後、ツキモトは助けに行かないとクレインが死んでしまうと言い、ここを飛び出そうとしたが俺はツキモトがミラン村に行くことを止めたんだ。」


 ギルドマスターは一体何がしたいんだ?

 俺の頭の中には疑問が浮かび上がった。そんな自分にとって得にもならない……いやリーフの機嫌を悪くしそうな言葉を吐いて一体どうなると言うんだろう。リーフをチラリと見ると――リーフは軽く微笑んでいた。


「それはギルドマスターとして普通の反応ではないでしょうか?恐らく調査隊の皆さんが私を見つけた時は私は大量のヒューデットが蔓延る脱出がほぼ不可能な村の中にいました。そんな所にヒューデットと戦えるとはいえ、ユウキさんが行くと言ったのならば止めるのが普通だと思います。」


「あぁそうだ。俺はギルドマスターとして冒険者を死なせるわけにはいかない。死ぬ事がほぼ確定している村にユウキを突入させる訳にはいかず止めた。ギルドマスターとして当たり前の行動をとったと自分でも思っている。

 だが……1人の人間としてガロー・マークとしてそのことを謝罪したい。俺は死ぬ確率が高いと言ってクレインを見捨てたんだ。怖かっただろう……辛かっただろう……寂しかった……だろう。応援も期待できず、周りは多数の魔物だらけ。体力も魔力も尽き果て、目の前にあるのは絶望のみ。そんな状況だったんだろう?俺も冒険者元冒険者だ。とても気持ちが分かる。だからこそ、そんな状況にあったクレインを見捨てようとした俺は謝罪しなければならない。許してくれなんて言わない。ただこの言葉をクレインに聞いて欲しかっただけだ。」


 そう言って頭を下げるギルドマスターを見てリーフは10秒ほど沈黙し、口を開いた。


「……そうですね。とても怖かったです。もしもあの時ユウキさんが来てくれなければ私は確実に死んでいました。

 でも今はこうして生きています。さっきも言った通り、ギルドマスターもギルドマスターとしての責務を果たそうとしただけの事です。私はギルドマスターを憎んでなんていませんよ。なので頭を上げてください。」


 頭に下げたギルドマスターはリーフの言葉を聞き、頭を上げる。その顔には驚愕の表情を浮かべていた。


「俺は……間接的にお前を殺しかけたってのに……」

 

「まぁ、終わり良ければ全て良しってやつだな。この通りリーフも怒ってないみたいだしあんまり気に病む必要なんてないんじゃないか?」


「……そうだな、クレインの慈悲深い心に感謝しよう。話はそれだけだ。ではまた明日来てくれ。」


「分かりました、明日報酬を貰いに来ますね。行きましょうか、ユウキさん。」


「あぁ」


 こうして報告を終えた俺達はギルドマスターの部屋を出て皆の元に行くことにした。

 

 


 

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