ウェルメンの提案
リーフがウェルメンを追いかけて行った後、俺もゆっくりその後を着いて行った。
リーフとウェルメンは少し離れた場所で何かを話していた。
「で、ですから違うんです!ウェ、ウェルメンさんの見間違えです!」
「へぇー2人して顔を真っ赤に染めて抱きついてたけど、それって見間違えだったのかー。」
あぁ、うん。リーフがすっごい抗議してるけどウェルメンの一言で涙目で黙っちゃった。
「なんてな。うんうん分かるぞ、死ぬかもしれない戦いで異性に助けてもらった。惚れちまうのも仕方な……「〈集いし魔力の高まりよ・我が手より放たれよ〉!」ぐふぇ!?」
さらに茶化そうとしたウェルメンに黙っていられなくなったのか、顔面目掛けて『マジックショット』をリーフは放ち、まさか魔法を使うとは思っていなかったのかウェルメンはまともに食らってひっくり返った。
あ、でもなんか今ひっくり返った時わざと自分からひっくり返ってたような気がするな。リーフの魔法攻撃力は今Gでほとんど威力はないようなもんだから多分そうだろう。
「ウェルメン、リーフをあんまり茶化してやるな。」
「へへっ、わりぃわりぃ。リーフの嬢ちゃんもすまねぇな。許してくれ。」
「まったく……もう……分かりました。」
はぁと、ため息をつきながらもリーフはウェルメンを許したようだ。
「ところで走りっぱなしだったから腹が減って仕方ないんだが……なにか食べ物はないか?出来れば人参が食べたい。」
「人参は……確か収穫したてのがありましたね。ついてきてください。ユウキさんも来ますか?」
「あぁ、まだヒューデットがいないとは限らないからな。俺もついてくよ。戦力にはならないと思うが。」
そこら中にあるヒューデットの死体を見て俺はリーフにそう言った。おそらく昨日の時点……フロウアが撤退した時にはほとんど倒したとは思うが、念の為に警戒した方がいい。
「それなら大丈夫だ。俺が魔法でこの村にいる気配を探ったがユウキと嬢ちゃん以外の気配はなかった。おいおい嬢ちゃんよぉ、これでも俺はSランクの魔獣だ。間違いはないぜ。」
「リーフ、気持ちは分かるがウェルメンの言ってることは真実だと思うぞ。」
「じゃあ大丈夫ですね。」
「自分で言うのもなんだが、めちゃくちゃ信頼されてないな俺!」
さっきからかったせいで信用が下がっているからか、リーフはウェルメンの言葉に眉をひそめていたが、俺の言葉を聞いて信用することにしたようだ。
ウェルメンが悲しそうにしているが、自業自得だ。リーフに俺とウェルメンは着いていくことにした。
「ここです。」
歩いて数分後、大きな蔵前でリーフは立ち止まり、扉を開けた。
「おぉ……すごい量だな。でも土とかつきっぱなしなんだな。」
そこには人参やじゃがいも、さつまいもなど大量の野菜が保管してあった。中は薄暗く、野菜を保管するのにちょうどいい温度……20度前後でよく見ると野菜は土や泥がついた状態で保管されていた。
「はい、こうやって保存するには水で洗わずそのまま――」
「食っていいか!?食っていいよなっ!長時間走って戦って腹ぺこなんだよ!」
「…………」
リーフの言葉を遮り、ウェルメンは勢いよく人参のところに行き、土や泥がついたままの人参何本もまとめてボリボリと食べ始めた。
それを見たリーフは呆気にとられ、パチパチと目を瞬かせる。
「ウェ、ウェルメン……その人参土ついてるけど大丈夫なのか?」
「はっ!このSランク魔獣ウェルメン、この程度で腹壊すわけないだろ!うまっ!」
「お、おう……、良かったな……。」
地味に俺がウェルメンに引いていると、正気を取り戻したのかリーフがさつまいもがあるところに向かって行った。
「リーフどうしたんだ?」
「ここからビギシティに帰る時に途中で食べる用の野菜でも持って家で洗おうかと思いまして。」
土まみれのさつまいもをいくつか手に持ちリーフはそう言う。
「ああ……なるほど。」
「ところでユウキ、いつここを出発する?」
人参だけでなく他の野菜も食べながらウェルメンが聞いてきた。
「俺は切り札を使った反動でステータスがGランクになってる。だけど、3日経てばステータスは元に戻る……はずだ。」
「そうか……てことは3日後にここを出る、とユウキは考えているわけだな?」
「あぁ、帰りに魔物に会った時、このステータスじゃまともに戦えないからな。」
「ふむ、だがそれは危険だぞ?村の扉は壊され周りには死体がたくさん。この状況で長くこの場に留まったらどうなると思う?」
「……?」
ウェルメンの質問の意図が分からず俺は首を傾げる。
「血の匂いを嗅いだ魔物達がこの村に来る可能性が高い。」
「あっ……」
ウェルメンの言葉にハッとする。
「この村の今はまだユウキのステータスが戻るまでとは言ったが、恐らく3日後はこの村に大量の魔物が蔓延ることになると思うぞ。」
「じゃあ……どうすれば……」
「俺の傷見てみろ。ポーションかけてもらったおかげで傷はかなり癒えているぞ。恐らく夕方くらいには完治すると思う。」
ウェルメンの傷を見てみると、相変わらず血で赤く染っているが、傷は塞がりかけていている。
「ウェルメンの体ってどうなってんだ一体……。てことは今日中にはここを出ることができるってことか。」
「あぁ、それに暗くなってから移動した方が、魔物達に遭遇しにくいだろ。俺は暗闇でも視界は確保できるし、この辺りの魔物くらいなら余裕だ。」
「じゃあ早めに私も食料と水を準備しないとですね。」
蔵の中を周りながら話を聞いていたリーフがじゃがいもやさつまいもを『マジックポケット』の中に入れ、戻ってくる。
「嬢ちゃん俺の分はいいからな?俺の食べる量は多いから『マジックポケット』に入らないだろうし……だから今のうちに大量に食わせてもらうぜ。」
「分かりました。もうそれを食べる村人もいませんからね……。」
「リーフ……」
暗い表情で呟くリーフだったが、首を振って暗い感情を振り払ったのかリーフは笑顔になる。
「大丈夫です、さぁ家に戻るとしましょう。」
「そうだな、ウェルメン俺達はリーフの家に戻ってるからな。」
「おうわかったぜ!」
野菜を頬張るウェルメンにそう言って俺達はリーフの家に戻ることにした。




