器の代償
「〈癒しの光よ〉!」
「ァァァァッ!」
『魔力昇華』で強化した『ヒール』をヒューデット向けて放つ。
大剣を振りかざしたヒューデットは『ヒール』を受け、叫び声を上げ体勢を崩した。
「〈魔法のポケットよ〉」
魔力が神気解放で魔力量のステータスが上昇した分しか回復してなかったため、すぐに魔力切れとなる。
上級魔石を砕き、魔力を最大まで回復させ、『マジックポケット』から中にある中級ポーションと中級魔石を2つずつ取り出し、中級ポーションを1つヒューデット目掛けて投げつけ、残りを腰袋に入れる。
「アァ!」
流石に中級ポーションだと効果が薄かったのか、ポーションがかかるも、怯みすらせずに目の炎を揺らし、走って近づいてくる。
「アァァァァッ!」
「くっ、〈我は力を求む〉!」
ヒューデットは『フルスイング』を用意し、俺を上下に真っ二つにしようと大剣を横薙ぎに振るう。俺はこのままでは回避できないことを察し、デュアルアクションと『魔力昇華』、『パワーライズ』で両足を強化し、その場でジャンプして刃を回避し、蹴りを心臓にぶちかました。
「アアッ!?」
「魔法制御力が下がってるから中級魔法が使えないのが辛いな。〈癒しの光よ〉!」
蹴りで僅かに後ずさったヒューデットに再度『魔力昇華』で効果を上げた『ヒール』を放ち、中級魔石を砕きながら舌打ちする。
1度目の神気解放の反動でステータスが半分となっているため、今は魔法制御力の高い中級魔法を使うことが出来ない。『魔力昇華』で初級魔法に大量の魔力を注ぐことで何とか戦えているが、魔力量も思いっきり低下しているため、魔石を使わなければすぐに魔力が枯渇する。
その頼みの綱の魔石も中級魔石はあと1つ、上級魔石は2つ。リーフに魔力を与えるために上級魔石1つは残しておきたい。
「一撃にかけるしかないか!」
ダメージはかなり与えられている。そして腕も片方落とし、視覚も片方潰している。
なんとかして決定的な隙をつくり、急所の心臓目掛けて全力の魔法を当てればおそらく倒せるだろう。
「アァァァァッ!!」
ヒューデットは最初に戦った時と比べると、明らかに動きが鈍くなっている。しかし、相変わらず筋力は化け物並みでその筋力で振るう大剣に当たったら一発でお陀仏だ。
さっき大剣で突き刺され上級ポーションがあったお陰でまだ何とかなったが、その上級ポーションは手元にはあと1つしかなく、ステータスが低下している俺にとってはヒューデットに大ダメージを与えられるアイテムとして使うしかないため、実質俺はヒューデットの攻撃を一度でも受けたらダメということ。
「アァァァァッ!」
傷口から血を垂れ流しながらもヒューデットはドスンドスンと地を鳴らしながら近づいてくる。
「〈輝け光よ〉!」
『魔力昇華』で若干光量を上げる。月明かりで夜でもある程度は周りが見えるとはいえ、暗闇からいきなり光が湧き、ヒューデットは残った左目を大剣を持った腕で庇う。
「ヴ……ヴ……」
「なんだ?」
ヒューデットは急に左目を庇った腕をまるで力が抜けたかのようにだらんと垂らし、顔も下におろしてまるで電源の切れたロボットのような態勢になる。
「〈集いし魔力よ〉……」
念の為『マジックショット』の詠唱をし、右手にいつでも『マジックショット』が放てるよう準備をしてヒューデットに近づく。
「っ……心臓が動いてない?」
さっきまでドクンドクンと脈打っていた心臓が動きを停止している。
「……炎も消えてる。」
恐る恐る顔を掴んでみると、左目の中にあった炎が消えていて手を離すとバタリとヒューデットの体が倒れた。
「なんだか分からないが助かった……。いや、まだだ、リーフを助けないと!」
急いでリーフの元に駆け寄る。おそらく神気解放してから2分30秒以上は経っている。残り時間はあと2分ほど。しかも、リーフもさっきまでまだ生きていたが、今もどうか分からない。どうかまだ生きていることを願いながらリーフの元にたどり着いた。リーフは相変わらず気絶して意識を手放していてどこか苦しそうな表情を浮かべていた。
「待ってろよリーフ今助けてやる。……まだ心臓は動いてるけどさっきよりも鼓動が弱まってる……。」
リーフの胸に耳を当てると、意識して聞かないと分からないほどに心臓の鼓動は弱くなっていた。
「『マジックシェア』は、触れた相手に魔力を渡すことが出来るけど、手でもいいのか?」
リーフの手を握り、『マジックシェア』を発動する。
すると俺の中の魔力が手を伝い、リーフの手に流れる。一瞬ピクっとリーフの全身が跳ねるが、リーフはまだ意識を取り戻さない。
「魔力が無くなった……まだ送った方がいいよな。」
俺は腰袋の上級魔石を取り出し、魔力を吸収してさらにリーフに魔力を与え続ける。
1分30秒ほどずっと『マジックシェア』で魔力を与え、上級魔石で吸収した魔力が無くなったのが身体中を支配する倦怠感で察知し、リーフの状態を見る。
「とりあえず大丈夫……そうだな。」
鼓動はまだ若干弱いがさっきよりも強くなり、リーフの顔色も幾分か良くなった気がする。
「神気解放も終わりか。」
制限時間が経過し、神気解放時の装備が粒子となってもとの装備にもどり、粒子は3つの器の欠片となり、俺の胸に吸収されていく。
「ぐっ……が……はっ!?」
その瞬間まるで全身に雷が落ちたかのような激痛が走り、リーフの隣にバタリと崩れ落ちる。
「ガッ……ぐっ……なにが……起こって!?」
全身がビクビクと痙攣し、心臓がバクバクと音を立て全身に冷や汗をかき、どうやっても痛みが治まらない。次第に体から力が抜け始め次第に動きが取れなくなり――意識は闇へと落ちて行った。




